桜旧校舎の日常

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人は誰しも いずれ忘れ去る。

記憶の中に埋もれる日常や 鮮やかな夕焼け 

青春を駆けた学校 思い出の遊び場 読み終えた本 

もちろん 埋もれる日常も。





「ねぇ 何かあったの」

茜に焼けた桜を遠目に見ながら 感傷的な思考に

君の声がかかった。

「いつか 君を 忘れてしまいそうで。
   いつか 君が 忘れてしまいそうで。」

答えるつもりはなかった が うっかり口が滑った


お互い この場所以外には行けない けど

"離れ離れになるんじゃないかって

もう逢えない日が来るような気がして

ただ これが君の夢で 俺が空想で 

君の目が覚めてしまえば..."





「忘れないよ。絶対に。」




そういった君は 真っ直ぐな眼だった

彼女は出来ない約束事は言わない

だから いつもなら"絶対"なんて使わないんだ

君は俺の手を握って

「忘れても 君は覚えてくれるから。」

だから大丈夫。

って君は笑った。




その後は 指切りげんまんをした 馬鹿らしいけど。


例えこの本に結末が来ても 忘れないって。


彼女は俺に会う為に身を捨て

俺は彼女と伴に過ごす為に身を捧げた。

そんな関係だから多分忘れないだろう。

忘れたくても 忘れられない。

忘れらない、いつまでも。

5/9/2023, 1:50:54 PM