─物語の始まり─
物語の始まりと言ったら、その物語の主人公がなにかトラブルなどをおこさないと始まらない。
例えば、道の角でイケメンとぶつかって恋が始まったり、誰も抜けないという伝説の剣を抜いたりして物語が始まったりする。
でも私はそんな主人公にはなれない。
そんなトラブルを起こして主人公になれたらなー、と日々思っている。
私は主人公というよりその人の物語の引き立て役。
主人公を引き立てる役。
「私も主人公になりたいなー」と小さく独り言で呟いたら、前の席に座っていたギャルの子が言った。
「主人公?」私はバカにされるな、と思いながら頷いた。
彼女はギャルだが強くてキラキラしてて物語の中心で。The物語の主人公って感じの人だ。彼女は多分生まれ変わっても主人公だろうな、と私は思っている。
彼女はスマホを見ながら
「もう生まれた時から主人公でしょ。」という意見に対し「私は主人公じゃなくて引き立て役だと思う。というか主人公って1人じゃん」と言い返した。でも彼女は
「引き立て役だとしても主人公って引き立て役がいないと成立しないじゃん。まぁ例えば、アンパンマンみたいな?ヒーローって悪役いないとただの一般人なんよね。だから引き立て役は裏の主人公!!って私は思ってるよ。てか主人公1人って誰が決めた?ドラえもんとか主人公っぽいやつ2人いんじゃん。てかドラえもんの映画見るとみんな主人公っぽくね?」
「あ、じゃあ主人公なるために私と海に遊びに行かない?」
笑いながら言われた。
私は頷く。彼女は放課後、私の手を引っ張って走って教室を出て海に向かった。
そこで彼女とずっと友達。という子供じみた約束を交わした。
遅めの物語の始まりだったけど、彼女と一緒にこれからも物語の主人公兼彼女を引き立てる裏の主人公として生きていきたいと思った。
─遠くの声─
朝登校していると気になる人がずっと遠く、前にいる。私は足を少し早める。
「おはよう」って言ったら貴方は振り向くかな。
遠くからでも気づいてくれるかな?
神様。どうか大好きな彼が気づいてくれますように。
─春恋─
桜が舞う春の季節。
俺は隣の席のあいつが好きだ。
好きと気づいたのは1ヶ月前。でももっと前から恋してたのかもしれない。俺が予測するには入学式の時から。
あいつと会う度にドキドキするし近くにいると目でついつい追ってしまう。話すとか本当に無理。冷静に話せるけど、心の中ではバックバク。
こんなに好きなのに、3年生になるまで振られるのが怖くて告白しなくて、
でももうすぐ卒業だから卒業する前には振られてもいいから気持ちを伝える。
でも勇気が出ない。あいつには好きな人がいるから。
そして卒業式の日になってしまった。卒業式では3年生のほとんどが泣いていた。そしてあいつも。
卒業式が終わり放課後。俺とあいつのふたりきり。
「ねぇ」と話しかける。あいつが振り返る。
風で桜が舞い、開いている窓から桜の花びらが入ってくる。
「入学式の時から一目惚れして、ずっと好きでした。付き合ってください。」
沈黙が流れる俺はドキドキしながら彼女の返事を待つ。
「はい」
まさかの"Yes"
思ってもいなかった。風でなびくカーテンで彼女の顔が見えない。多分泣いている。
「私も好きだったから」
彼女の好きな人は俺だったんだ。一安心した。振られなくて良かった、ってのもあるけどなにより自分が最後ビビらずに告白できたことに安心した。
そして、俺と彼女は風でなびくカーテン越しに笑いあった。
多分これからも一生彼女とどんな季節がこようが笑い合うだろう。
─最後の春の恋─
─未来図─
4月14日 日記
未来図ってなんだろう。
当たり前のようにあなたと過ごせると思っていた私は去年の冬あなたに振られてあなたと作ろうとしていた未来図が、バラバラと崩れていってもう何も考えられなくなったよ。
「なんで?」って理由聞いたけど、曖昧に答えてさ、「やらなきゃいけないことができたから」って。貴方は私の事好きじゃなかったの?やらなきゃいけないことってなに?詳しく教えてほしかったな。
でもその後に「終わったら迎えに行くね」って。なんだよそれ、って思ったけど好きだったから「待ってるね」って答えちゃったね。
でも本当はさ、別れるって決めたなら"迎えに行くね"とか言わないでハッキリ言って別れようよ。あなたの未練があるままずっと待っていたくないよ。だからと言って他の人のところには行きたくなくて、この"迎えに行くね"は本当の意味だったの?それとも優しい嘘?
貴方は優しかったもんね。
でもある日貴方のご両親からあなたが亡くなったっていう連絡がきてびっくりしたよ。病気だったんだ、知らなかったよ。言って欲しかったな。
貴方は優しいから迷惑かけたくなかったんでしょ?
貴方が死んだら私に知らせてほしいって言ったらしいじゃん。
病気が治ったら迎えにきてくれようとしてたんだ。急いで貴方のご両親が教えてくれた病院に行って貴方の白い姿を見て泣き崩れちゃった。そこで貴方のご両親にもらった手紙読んだよ。
文字震えてたね。震えながら書いてくれてたんだ。
嬉しいよ。最後の手紙の"大好きだよ"って言葉も本当に嬉しかったよ。
私も大好きだよ。ありがとう。今度は私が迎えに行くから未来についてでも考えて待っててね。
愛してるよ。
─未来図日記─
─風景─
私は画家だ。風景を描いている。綺麗な自然の絵を。
でもふと人が描きたくなった。
夢に出てきた人が。
彼は木々が生い茂っている神秘的な場所で1人立っていた。
筆を持つ。
確か彼は金色の髪をしていて綺麗な青い目で白い肌でそれよりも顔が整っていた。カメラを持ってこっちに向けていたはず。
私は覚えている限り筆を動かし続けた。
納得のいくまで何度も。
描き終えた。私の中でもいい出来だと思った。夢に出てきた彼と綺麗な背景がマッチしていてとても素晴らしかった。
「彼が本当にいたらいいのに、、こんな人いるわけないか」
考えても仕方がない。私は私の絵を描き続けよう。
人の気配がして後ろを見た。あの彼が立っている。夢に出てきた彼だ。
「綺麗、、」
現実でも綺麗だった。夢、、、?いや、夢じゃない。
本物だ。彼に近づき頬を触る。彼は笑った。懐かしいような笑顔で。
「私と仲良くしてくれませんか、、!」
彼は頷いた
そんな彼女を僕は見守っていた。
彼女が若くして記憶がなくなる病気だと医者に言われたが僕は信じられなかった。最初は軽かったもののどんどん僕という存在を忘れていく。
僕は彼女と結婚する約束をしていた。
彼女は笑顔が素敵だった。特に絵を描いている時の顔が最高に素敵だった。
彼女は僕や他のことを忘れたとしても絵だけは描き続けていた。そんな彼女の顔を見るために僕はここに来て彼女をいつも見守っていた。
そしてある日珍しく人の絵を描き始めた。誰だろうと思い遠くから覗いた。僕だった。涙が溢れた。彼女は僕を描いている。懐かしい。僕が好きな場所と一緒に僕だけが立っている絵だった。思い出してくれなくても嬉しかった。
彼女は笑みを浮かべていた。僕を忘れてから見た事がない綺麗な笑顔を。
僕はカメラを構えた。
彼女の笑顔の写真を撮る。彼女の素敵な笑顔と絵の具が散乱している風景が彼女らしく、マッチしていた。
その時彼女が近づいてきて僕の頬を撫でた。
僕は笑った。
彼女もつられるように笑った。
彼女の言葉に頷く
「また僕と新しい思い出をつくろう。」
僕はまた少し涙を流した。
─僕をわすれた画家の彼女と風景─