─風景─
私は画家だ。風景を描いている。綺麗な自然の絵を。
でもふと人が描きたくなった。
夢に出てきた人が。
彼は木々が生い茂っている神秘的な場所で1人立っていた。
筆を持つ。
確か彼は金色の髪をしていて綺麗な青い目で白い肌でそれよりも顔が整っていた。カメラを持ってこっちに向けていたはず。
私は覚えている限り筆を動かし続けた。
納得のいくまで何度も。
描き終えた。私の中でもいい出来だと思った。夢に出てきた彼と綺麗な背景がマッチしていてとても素晴らしかった。
「彼が本当にいたらいいのに、、こんな人いるわけないか」
考えても仕方がない。私は私の絵を描き続けよう。
人の気配がして後ろを見た。あの彼が立っている。夢に出てきた彼だ。
「綺麗、、」
現実でも綺麗だった。夢、、、?いや、夢じゃない。
本物だ。彼に近づき頬を触る。彼は笑った。懐かしいような笑顔で。
「私と仲良くしてくれませんか、、!」
彼は頷いた
そんな彼女を僕は見守っていた。
彼女が若くして記憶がなくなる病気だと医者に言われたが僕は信じられなかった。最初は軽かったもののどんどん僕という存在を忘れていく。
僕は彼女と結婚する約束をしていた。
彼女は笑顔が素敵だった。特に絵を描いている時の顔が最高に素敵だった。
彼女は僕や他のことを忘れたとしても絵だけは描き続けていた。そんな彼女の顔を見るために僕はここに来て彼女をいつも見守っていた。
そしてある日珍しく人の絵を描き始めた。誰だろうと思い遠くから覗いた。僕だった。涙が溢れた。彼女は僕を描いている。懐かしい。僕が好きな場所と一緒に僕だけが立っている絵だった。思い出してくれなくても嬉しかった。
彼女は笑みを浮かべていた。僕を忘れてから見た事がない綺麗な笑顔を。
僕はカメラを構えた。
彼女の笑顔の写真を撮る。彼女の素敵な笑顔と絵の具が散乱している風景が彼女らしく、マッチしていた。
その時彼女が近づいてきて僕の頬を撫でた。
僕は笑った。
彼女もつられるように笑った。
彼女の言葉に頷く
「また僕と新しい思い出をつくろう。」
僕はまた少し涙を流した。
─僕をわすれた画家の彼女と風景─
4/12/2025, 1:18:02 PM