ノブメ

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2/15/2023, 2:37:18 PM

拝啓、屋上の君へ

ありがとう、勇気を出してくれて
ありがとう、そこから逃げてくれて
ありがとう、今日を続けてくれて
ありがとう、明日を生きてくれて

一緒に描いた未来はなかなか見つからないけど
なんだかんだで私は幸せです。

「−10年後の私から届いた手紙−」

2/14/2023, 3:05:44 PM

紅く染まった街
紅く染まる人々の間を
藍色の気分をした私が
誰も歩かない歩道の真ん中を歩く

乾燥した空気に触れて仄かに染まる頬
鮮やかなリップに彩られた唇の紅
イルミネーションを反射する鳶色の瞳

それは血の通ったナチュラル

コートのポケットに突っ込まれたまま冷えた手
ショーウィンドウに映る薄暗い表情
俯きがちに歩く視線の先でチラチラと揺れる
インディゴブルーなデニムパンツの裾

それは冷えたアンナチュラル

スローモーションな雪に気がついて
顔を上げると見えた空は
突き刺すような深い藍色で
幽霊みたいな私を見下ろしている

ただ息をしているだけでは
ナチュラルにはなれない夜に

紅く染まったショッピングモールを
彷徨う気まずいアンナチュラル

「−バレンタイン−」

2/13/2023, 4:08:30 PM

いつも私の側にいてくれる君
お母さんのお腹の中にいる時から
私をずっと見守っている

誰より私を知っている
私より私を知っている

私がそっちに行きかけた時
君は私を押し戻す
まだだ、まだだ
君は笑う

いい事をしたら永久の幸せ
悪い事をしたら永久の苦しみ
大人は私に言い聞かすけど
私は君を知ってるの

私が誰かと笑う時
君は独りで笑ってる
寂しく思わせて悪いけど
今は一つになれないね

私が正しく笑えるまで
私が正しく痛みを知るまで
私が正しく涙するまで
私が正しく疲れるまで

私が正しく眠れるまで

君を抱き締める準備が出来るまで

「−待ってて−」

2/12/2023, 3:15:10 PM

ソレは完璧なカタチ
この世界にある
アリトアラユル物事に優る

アリトアラユル音楽より優美で
アリトアラユル絵画より精巧であり
アリトアラユル書物よりも美しく
アリトアラユル構造を凌駕する

ソレは流動的なカタチ
触れたらすぐに壊れてしまいそうな
今にも崩れ落ちる塔のよう
今日の夕日を見送れば
明日の朝陽は見えるだろうか

ソレは見えないカタチ
だれにも見せてはいけない
だれも侵してはいけない
その価値を知っているのは
その価値を知っていいのは

ソレは愛しいカタチ
いつまでも慈しみ
尊き日々を愛でるだけ
もっとそうするべきだった
ずっとそうするべきだった

それだというのに私ときたら
囁く悪魔に唆されて
欲望と焦燥に身を任せ
うっかりソレに触れてしまった

私が壊してしまったソレは

元のカタチには戻せない

「−伝えたい−」

2/12/2023, 9:52:31 AM

この場所に落とされた時
ソレは己が運命を呪った

見渡すばかりの広大な岩砂漠
木々や動物は愚か
微生物(現在はそう名付けられている)すら住まわぬ死の大地
為す術もないソレは
ただ岩場の破れ目に身を置き
悠久の眠りにつくことにした

爆音が鳴り響き
天はまさに生物静脈から流れる
赤黒い血のような色に染まった
(ソレは体内に血を流さないが)
大地は灼熱に燃え上がり
粘っこい溶岩が岩場を舐める
ソレは震えながら岩場の破れ目で息を潜めていた

遠雷が聞こえた
ここではない何処かの大陸が
鉛色の積乱雲に覆われている
最初の雷鳴から程なくして
ソレの潜む岩場に嵐が招来した
永劫に続く落雷と降雨は岩場を砕き
天からの命の欠片を降らした

ソレは、何かに導かれるように芽吹き
天高くそびえる積乱雲に向かって
一心不乱に手を伸ばした
瞬く間に
(それは私達からすれば永遠にも近い年月だが)
生成された大樹は根を伸ばし
ソレが産み落とされた星に根の海を作った

***

親愛なる、私の子ども達へ
届くことのない、ちっぽけな追想録

−岩場の破れ目から

「−この場所で−」

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