紅く染まった街
紅く染まる人々の間を
藍色の気分をした私が
誰も歩かない歩道の真ん中を歩く
乾燥した空気に触れて仄かに染まる頬
鮮やかなリップに彩られた唇の紅
イルミネーションを反射する鳶色の瞳
それは血の通ったナチュラル
コートのポケットに突っ込まれたまま冷えた手
ショーウィンドウに映る薄暗い表情
俯きがちに歩く視線の先でチラチラと揺れる
インディゴブルーなデニムパンツの裾
それは冷えたアンナチュラル
スローモーションな雪に気がついて
顔を上げると見えた空は
突き刺すような深い藍色で
幽霊みたいな私を見下ろしている
ただ息をしているだけでは
ナチュラルにはなれない夜に
紅く染まったショッピングモールを
彷徨う気まずいアンナチュラル
「−バレンタイン−」
2/14/2023, 3:05:44 PM