ノブメ

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2/11/2023, 9:22:52 AM

運動会でゴールテープを切る瞬間
読書感想文と引き換えに貰える賞状
あの憧れの校門をくぐる権利
下駄箱に不慣れに突っ込まれる手紙
想い続けた人と並んで歩く休日
一番高い台の上で首にかけられるメダル
小さい頃になりたかった大人の自分

その総てが皆に平等に与えられるものではない
手にするのは選ばれし者だけだから

それは時に美しく
それは時に儚く
それは時に残酷

故に、我らは尊い

この世界で、生命を与えられた事でさえも

「−誰もがみんな−」

2/9/2023, 10:25:53 PM

私達のあの丘の上で
色とりどりの野花を摘み取る
君に手渡した私の花束
君はそれをギュッと抱き締めた

君は毎日その花束を見つめ
慈しむように水を注ぐ
花瓶に満たされたぐらつく水の上で
花々はゆらゆらと揺れながら

君は花束に水を注がなくなった
水のやり過ぎは根を腐らせるから君は正しい
私は色褪せた一輪の花を見つけ
そっと花瓶から抜き取った

君は花束を眺めている
世界が終わったような顔をしている
萎びて痩せ細った花
また一枚の花弁が花瓶の側にはらりと舞う

君は花瓶が置いてある机に顔を寝かせ
ぱらぱらと落ちた萎びた花弁を見つめている
君の顔色は花弁の色と似ている
私は一枚の花弁を拾い上げ
口元に運んでそれを食む

味気のない花弁
口の中で粉々になる
そこに微かに残るあの丘の香り

君が去った世界で
君に送った花束を
私は今も噛み締めている

「−花束−」

2/8/2023, 3:23:17 PM

精巧に出来た私の仮面

どうでもいい人に
どうでもいい私のそれを
タダ同然で売り飛ばす

だけど、君が見つけてくれた
私に価値をつけてくれた
私に対価を与えくれた

君だけに手渡せる
仮面じゃない本当の私

今ここで手渡す時
君に届けるだけの話

だけど

いざいざ君に手渡す時に
厚く重なった涙の化粧

仕方ないの、これが私
どうか、どうか、受け取って

「−スマイル−」

2/7/2023, 3:44:17 PM

私の胸の奥の奥にこっそり仕舞っておいた秘事
どこにも書かない筈だったのに

気がついた頃には既に手遅れ

私の心の表側に
刻み込まれて消えてくれないその一文は

嗚呼、なんということでしょう

私の胸の奥の奥に
いつのまにか仕掛けた爆弾

だからどうか、愛しい君よ
私を覗かないでください

「−どこにも書けないこと−」

2/7/2023, 9:30:21 AM

私は明日が大好き
ママもパパも、お友達も、先生も
チョウチョもお花も大好き
明日が来るのが待ち遠しくて
今日もせっせと時計の針を回す

チクタク、チクタク

***

私は明日が好き
でも、明後日はもっと好き
早く今日が終わらないかな
今日は授業で退屈
黒板になんて目線が合わないから
あぁ、今日は時計の針が進むのが遅いなぁ

チクタク、チクタク

***

私は、明日が少しだけ…
ずっと今日を噛み締めたい
時計の針はテッペンを回ってしまったけど
私が目を閉じなければ
いつまでもいつまでも今日のままなの
夜にぐずる私を横目に
時計の針は鳴り止まない

チクタク、チクタク

***

私は今日が嫌い
明日はもっと嫌い、大嫌い
明後日も、明明後日も、来週も
私の楽しい明日はどこ?
あぁ、あの子達は明日が楽しみなんて言ってら

時計の針をちょっと止めてみたけど
私の指は振り払われてしまった

チクタク、チクタク

***

嫌い、嫌い、嫌い
こんな日々は嘘
戻って、戻ってよ
私にあの日を返して

時計の針は、どうしたって戻らない

チクタク、チクタク

ガチャン!

***

駄目、もう駄目なの
どうしたって止まらないの
私の頭の中に流れてるの
壊したはずなのに!
もう動かないはずなのに!

嫌だ!嫌だ!嫌だ!

止まって!止まって!止まって!

進めないで!私を進めないで!

行かないで!行かないで!

時計の針は、止まらない

チクタク!チクタク!チクタク!

時計の針は、止まらない!

「−時計の針−」

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