私から溢れた雫は
足元をすり抜けて
天高くからただ私だけに降り注ぐ
黒い髪が
首筋の肌が
よそ行きの服が
水溜まりに浸る靴が
私の総てが藍色になって
おもさを増していって
全身を藍色に染めて
決壊した目は赤色になって
そして私は
化け物になったの
「−溢れる気持ち−」
拝啓、親愛なる君へ
今夜だけ
私で君を汚してしまうことを
お許しください
私より
「−Kiss−」
来年の事を言うと鬼が笑うというなら
好きなだけ笑わせてあげましょう
来年の事も
10年先の事も
100年先の事も
私が死んだその先の事も
いくらでも言ってあげる
笑われたなら、笑い返せばいい
かかってこいよ
「−1000年先も−」
誰かと誰かがぶつかり合って
終わらぬ夏がそこにある
誰かの怒りに火がついて
彼らの悲しみが燃えあがり
あの娘の憎悪が焼け爛れ
僕らの絶望が地に堕ちる
ぶつかり合って
混ざり合って
離れて
もう一度集まって
灼熱の季節を生きている
終わらぬ白夜を生きている
あまりに眩しい光の中で
火だるまになって生きている
夏の暑さに当てられて
僕らはきっと越えられない
あっというまに燃え尽きて
灰になって終わるでしょう
いつか季節が変わったら
あの雲がかかる峠の先で
冷たい風を受けながら
僕とあなたの二人だけ
永久に共にいたいのです
だからどうかそれまでは
僕らはどうかそれまでは
季節が変わるその時までは
季節の向こうで会うために
「−勿忘草(わすれなぐさ)−」
キィ…、キィ…
初めまして
今日はお父さんと一緒に来たのかな?
漕ぐのが凄く上手いね
でも、まだ立ち漕ぎはまだ早いと思うんだけど
あっ、あっ…
ゴメンゴメン、もうちょっと加減してあげればよかったね
怪我しちゃったし、今日はここまでにしようか
ほら、マンションのベランダから君のお母さんが呼んでるよ
こんにちは
おやおや、お友達がいっぱいいるね
学校は楽しいかい?
こらこら、そんなにいっぱいは乗せられないよ
順番だよ、順番
こんばんは
今日は寒いねぇ
久しぶりに君に会えて嬉しいけど
こんな所で油を売っていていいのかい?
受験生にはクリスマスも年末も無いと思うんだけど
ま、今夜ぐらいは多目に見てやるか…
こんにちは、今日は二人で来たんだな
最近はあのベンチばっかり座ってこっちには来てくれないね
いつも日が沈むまで長話しをしてるけど、親御さんが心配しないのか?
また、ガミガミ怒られても知らないぞ?
こんにちは
なんて冗談冗談
最近、全然君の姿を見ないな
何処かで元気にしてるといいけど…
こら、順番だぞ、順番だ
久しぶりだね
もう何年も会ってないけど、また僕を使ってくれるんだな、ありがとう…
だけど、どうして泣いたりするんだい?
申し訳無いが、僕は君にどうしてあげる事も出来ないんだ
うん
気が済むまで、心ゆくまで泣いていくのがいいさ
***
泣き止んだかい?
ほら、携帯を見るのをやめて
スーツについた泥も落として
きっと、君の家で美味しい夕飯が待ってるはずだ
やあ、こんにちは
元気にしてたかい?
今日もゆっくりしてっておくれ
まだ風が寒いけど、もう少し待てば桜が満開になってるはずだ
おや?目が赤いじゃないか
まったく…
君は本当に泣き虫だなぁ…
結局、君はもう何年も桜を見に来ないね…
今、どこで何をしてるんだい?
私はずっとここにいるよ
最近は子どもたちの姿もめっきり見なくなった
たまに私を修理しにくる青い服のオジサンだけが
今や私の友達さ
オジサン、いつもありがとうな
君が来なくて寂しいけど、君が寂しい思いをしてないといいな…
私は、いつだってここで…
ん?
キィ…
「−ブランコ−」