私達のあの丘の上で
色とりどりの野花を摘み取る
君に手渡した私の花束
君はそれをギュッと抱き締めた
君は毎日その花束を見つめ
慈しむように水を注ぐ
花瓶に満たされたぐらつく水の上で
花々はゆらゆらと揺れながら
君は花束に水を注がなくなった
水のやり過ぎは根を腐らせるから君は正しい
私は色褪せた一輪の花を見つけ
そっと花瓶から抜き取った
君は花束を眺めている
世界が終わったような顔をしている
萎びて痩せ細った花
また一枚の花弁が花瓶の側にはらりと舞う
君は花瓶が置いてある机に顔を寝かせ
ぱらぱらと落ちた萎びた花弁を見つめている
君の顔色は花弁の色と似ている
私は一枚の花弁を拾い上げ
口元に運んでそれを食む
味気のない花弁
口の中で粉々になる
そこに微かに残るあの丘の香り
君が去った世界で
君に送った花束を
私は今も噛み締めている
「−花束−」
2/9/2023, 10:25:53 PM