この場所に落とされた時
ソレは己が運命を呪った
見渡すばかりの広大な岩砂漠
木々や動物は愚か
微生物(現在はそう名付けられている)すら住まわぬ死の大地
為す術もないソレは
ただ岩場の破れ目に身を置き
悠久の眠りにつくことにした
爆音が鳴り響き
天はまさに生物静脈から流れる
赤黒い血のような色に染まった
(ソレは体内に血を流さないが)
大地は灼熱に燃え上がり
粘っこい溶岩が岩場を舐める
ソレは震えながら岩場の破れ目で息を潜めていた
遠雷が聞こえた
ここではない何処かの大陸が
鉛色の積乱雲に覆われている
最初の雷鳴から程なくして
ソレの潜む岩場に嵐が招来した
永劫に続く落雷と降雨は岩場を砕き
天からの命の欠片を降らした
ソレは、何かに導かれるように芽吹き
天高くそびえる積乱雲に向かって
一心不乱に手を伸ばした
瞬く間に
(それは私達からすれば永遠にも近い年月だが)
生成された大樹は根を伸ばし
ソレが産み落とされた星に根の海を作った
***
親愛なる、私の子ども達へ
届くことのない、ちっぽけな追想録
−岩場の破れ目から
「−この場所で−」
2/12/2023, 9:52:31 AM