名前の無い音

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5/23/2022, 5:52:31 AM

今日も幸せでした
明日も幸せな1日でありますように


君の笑顔と
君の無邪気な声が
明日も 受け取れますように


普通の1日が
実は普通じゃなくて
毎日が特別で

しかもどっちかっていうと
特別快速で

あっという間に過ぎていって

気づいたら 二人で
おじいちゃん おばあちゃんになってて

そうなっても
きっと 僕は君の事を
ずっと ずっと
「かわいい」
って言える自信があるよ


今日も幸せでした
明日も幸せな1日でありますように

ありがとう
また あした

5/21/2022, 3:27:09 PM

『恋心』


いいように使われてるなんて
そんなの わかってるよ

っていうか
『いいように 使って』
そんなふうにさえ 思っていたよ

あなたに会っている時は
何も思わないのに

どうしてかな
ひとりになると
どうしてかな

苦しいよ
切ないよ
バカだよ
止めたいよ

でもさ
あぁ
そうなんだよ
そうなんだよ

好きなんだ

こんな 屑みたいな恋心
さっさと丸めて
ゴミ箱に棄ててしまいたいよ


ドロドロの
濁りきった水から
泥やゴミを取り除いたら
透明になるように

私の恋心だって
腐りきった邪念みたいな気持ちを
取り除いたら
きっと きっと……

ねぇ
あなたは 今日は どんな恋をしてるの?

わたしはね
今日も あなたに恋をしています

バカみたいな 屑みたいな 恋を
わたしは 今日も しているのです

5/20/2022, 9:54:18 PM

『横顔』


「写真は魂を吸い取られる」

祖母がよく言っていたからなのか
昔から写真に写るのが苦手だ

だから 幼い頃の写真も 卒業アルバムも
好んで見返す事はなかった

いつも なんだか
写真に写っている自分を見るのが
恥ずかしかった

※ ※ ※

好きになった人の職業が
『カメラマン』でも
やっぱり 写るのは嫌だった

「撮ってあげるよ?」
「……断る!」

何度言われても 断っていた


彼は
結婚式や七五三 幸せな瞬間を
形にする仕事をしている

写るのはごめんだけれど
彼の撮った写真や映像を見るのが
私は大好きだ

些細な瞬間を 切り取る
『センス』と言ってしまえば簡単だが
なんだろう そんな『好きな感じ』が
似ているんだと思った


休日
のんびりとした時間を過ごしていると
彼が 自分で撮ってきた写真を
タブレットで 見始めた
確認したいことがあるという

隣で なんとなく 手元を覗き込む

可愛い女の子 入学式かな
ランドセルが大きくて でも嬉しそう

結婚式
幸せな二人の時間 二人とも笑顔
素敵だなぁ

「素敵な写真だね
見てるだけで 幸せな気持ちになるよ」

と……

「え?」

1枚の写真で 彼の手が止まった

「これ 良くない?」

笑いながら こっちを向く
それは 私の写真だった

ベランダの鉢植えに 水をかけている
私の横顔の写真

「……やめて いつ撮った? 消して!」
「いやだ」
「消して!」

恥ずかしい
写真になってる自分が恥ずかしい

「まってまって ちょっと よく見なよ」

恥ずかしさに 目を瞑っていたが
そっとあけてみる

「これ 可愛いよ 僕は好きな顔」
「可愛いくない!」
「かわいい 横顔も ……正面も」

彼はタブレットを置き
両手で 私の頬を挟む

「かわいい ほんと かわいい」

と 言いながら……
顔をブニッとはさみつぶす

「や~め~て~」

はさまれながら もがいてみる

あぁ 彼はこうやって
私の自己肯定感をあげてくれているんだな
そんなことをボンヤリと思う

「これ いい写真 また撮ろう」
「隠し撮りはやめてください」
「……わかりました では 正々堂々撮ります」

あらためて タブレットを横取りし
自分の横顔の写真を見る

不思議なことに
あまり嫌な気持ちにはならない
彼が撮ってくれたから?
あれ?
なんだか 悪くないな

彼に聞いてみる

「ほんとに かわいい?」

彼は真顔で答えた

「世界一かわいいく撮れた自信あるわ」

自分の顔が 耳が
赤くなっていくのがわかった

「かわいい!カメラ持ってくる!」
「やめてっ!」

私の彼は
私を 世界一幸せに撮ってくれる

世界一大好きな 天才カメラマンだ

5/19/2022, 4:09:36 PM

『追憶』

そういえばさ

こしあん と つぶあん
どっちが 好きだっけ?

すき焼き と しゃぶしゃぶ
どっちが 好きだっけ?

スニーカー と ローファー
どっちが 好きだっけ?

夏 と 秋
どっちが 好きだっけ?

紅茶 と コーヒー
どっちが 好きだっけ?


記憶の中の あなたは
いつも 笑顔だ

「電話するね」

あれから ずっと 携帯の番号も
メールアドレスも 何も変わっていないよ

変えられないまま いたんだ

わかってるんだ
もう
違う あっちの世界にいて
違う人の 人生を生きてるってことは

だから 私も 自分の人生を 生きてるんだよ
頑張って 頑張って
頑張って 頑張って

でもね たまに 思い出しちゃうんだ
どうしても あなたのこと

それがいけないことなのか
どうしたらいいのか
わからないけど

正直に 言うなら
忘れたくないんだ

ねぇ

深夜は ダメだね
深く 昔話を したくなってしまうよ

5/19/2022, 9:43:28 AM

『コインランドリー』

真夜中にコインランドリーに行くのが好きだ
真夜中の空気感がたまらなく好きだ

午前0時を過ぎると
近所のコインランドリーは
ちょっとだけ安くなる

いつもは100円10分だけど
100円12分になる
別に それが目的じゃないけど
まぁ ちょっとは嬉しいなって思う

『草木も眠る丑三つ時』
いつも そのくらいに行く
家から歩いて1分
まさに目と鼻の先

外に出ると 真夜中の空気に包まれる

誰も歩いていない道
車が一台も通らない道
変わりなく 明るい 押しボタン式信号機

誰も居ない……

と 思ったら
コインランドリーには先客がいた

乾燥待ちの椅子に腰掛けて
本を読んでいる

珍しいなぁと思いながら
乾燥機に濡れた服を突っ込む
部屋干し 外干しをしたくないから
乾燥だけをしたい

100円を3枚 36分と表示される

気になるわけじゃないけど
気にするわけじゃないけど

自分も 椅子に座り
スマホを取り出す

家に戻ってもいいけど
このまま 深夜の時間を一人占め……
今日は出来ないか 先客がいる

「……………」
「……………」

話し掛けなきゃ
ただの他人
物語は何も始まらない
そりゃそうだ

その時

ガダガタッ……

一瞬 回りが揺れた

「えっ?」
「あ、地震?」

椅子から立ち上がり
そのまましばらく様子をみる

「……地震ですかね」
「そうですね」

スマホで調べてみると
地震速報が来ていた

「あ、震度2だそうです」
「2ですか?もっと大きく感じましたねー、ちょっとびっくりした」
「そうですね、回りが静かだからかなぁ?」

二人とも イスに座り直す
先客さんが 聞いてきた

「この時間……怖くないんですか?」
「そう……ですね いつもだいたいこの時間です 今のタイミングの乾燥機好きなんです」

先客さんは大きく頷いた

「このくらいの時間 良いですよね 静かだし
最近 このあたりに引っ越してきたんで
ここ24時間やってて いいなぁと思って」

やっぱり 深夜のコインランドリーは
良いですよね
心の中でつぶやいてみる

「お近くですか?」
「すぐ そこです」

ちょっと 笑う
不思議な繋がり
話してみないと 何も始まらない

「地震 怖いですね」
「苦手ですよ 地震」

ピーーー
『乾燥が終了しました』

先客さんの乾燥が終了した

「あ、終わった」

乾燥機から 乾いた洗濯物を取り出している
パチパチっと 静電気の音がする

「なんか……ここの乾燥機 ふわふわ具合がスゴくないですか?私好きなんです」

先客さんが 取り込みながら言う

「そうですね すごくフワフワで気持ちいいですね」

かごに詰め込むと
本を上にポンッと乗せた
そして こっちを向いた

「あの……」
「はい?」
「その……お好きなんですか?」
「え?あ?」
「そのTシャツ……去年のツアーのですよね」
「そう……ですね。良く知ってる」
「実は すごく好きなんです」

好きなバンドのツアーTシャツ
部屋着の代わりに着てたけど
まさかこんなところで……

「まわりに 好きな人がいなくて」
「よく知ってますね!ビックリしました いや 好きな人 初めてあったかもしれません」

真夜中のコインランドリーに響く
ちょっと声が大きかったか

「ライブも結構行ってて……」
「自分も行きますよ」
「うわ なんか 嬉しい」

物語は 変なタイミングで
始まってしまうこともある

真夜中のコインランドリー

ひとりの世界も良いけど
二人の世界も なかなか 少し
楽しいかもしれないって
思ってしまったよ

こうやって 物語は
始まって つづいていく

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