10/2/2024, 1:53:37 PM
『奇跡をもう一度』
この世が闇になってもうどのくらいになるだろう。
少し前までは、
微かな光の筋が見えていた気もするのに。
闇は真っ黒じゃなくて、
蒼っぽかったり、
グレー味を帯びていたり、
深い翠色だったりする。
奇跡があるとするならば、
もう一度光がみたい。
目を閉じているわけじゃない。
耳を塞いでいる訳でもない。
それでも届かない。
だから奇跡を祈る。
だから奇跡という名がある。
9/29/2024, 10:53:37 AM
『静寂に包まれた部屋』
ページをめくる音と、
机の軋む音しかしない。
時折、鳥の鳴き声が窓の外から聞こえる。
私の城で、
心地よい言葉の海に沈む。
外の世界は喧騒にまみれているのに、
ここは圧倒的孤独に充ち満ちている。
でも寂しくはない。
脳内では小説の登場人物に対する推察や、
溢れ出る感情で騒がしいのだ。
静寂に包まれた部屋で、私は、
この上ない喜びを味わっている。
9/28/2024, 12:14:48 PM
『別れ際に』
そろそろ訪れる朝に引き継ぐため、
夜は、帰る準備をする。
うすらうすらと足音も立てず、
己の明るさで「もうすぐつくよ」を合図する朝。
夜は季節の移ろいの中で、
来る時間が早まったり、
帰る時間が早まったりするのを楽しみつつ、
拡げていた闇を懐にしまう。
振り返り、優しい光の月に微笑み、
夜は帰る。
また、明日。
9/27/2024, 11:31:23 AM
『通り雨』
ぽつぽつ、と窓に雫が集まり出す。
空はお構いなしに、青い空を貫こうとする。
気のまよい。
あまのじゃく。
反抗期。
さあっ、と音を立てて雨が過ぎていく。
夏に心地よい涼しさを一瞬だけとどけて、
通り雨は舌を出して去っていった。
9/25/2024, 11:37:02 AM
『窓から見える景色』
四角く切り取られた空とビルの群れ。
思い描くのは遥か彼方の遠い記憶?
それとも、絶望に似た希望?
ひこうき雲の端っこが見たくて
背伸びするけど、
やっぱり四角い空にはない。
明るいうちは希望を見出すのに、
闇が深まれば涙で滲む、そんな景色。