【星が溢れる】
小さい頃、プラスチックで出来たカラフルで小さなビーズをたくさん集めていた。
図工の時間、自分の工作に必要な材料を各自で持ち寄り作品を作った。女子の中には自分で集めたであろうたくさんの種類も大きさも違うビーズを材料として持ってきていて、もちろん私も例外ではなかった。
「私のこのビーズとそのビーズ交換しよ!」
「このビーズはデカいから、ビーズ2
つだったらいいよー!」
そんな会話が教室の様々な所で行われていた。
もちろん工作に用いる事はなく、自分のコレクションとして大切に保管された。
いつの間にかクラスのみんなからもらったビーズ達は軽く30を超えていただろう。今思うとたった30個ほどのビーズなど、千円以下ほどで買えてしまう。だが子供の頃の自分にとっては、どんな宝物よりも大切だったのだ。自分で相手に交渉し、相手もまた自分と同じ様に大切にしているものを交換する。そうして集まったかけらは、星屑のようにきらめいて見えた。何に使う訳でもない小さなかけらを手ですくい、自分の手から星が溢れるのを楽しんだ。
そんな幼少期のを思い出を窓から見える夜景で思い出した気がする。
【ずっと隣りで】
あなたは絶対にいなくならない。何故かそうだと思ってた。もし今もあなたが私の隣りで笑いかけてくれていたなら、私はこの先もそれを信じていただろう。
数ヶ月前の事だった
ある日を境に君が俺に対して素っ気なくなった。名前を呼ぶと奇妙なものを見る目で俺を見た。
食事の時間は目を合わせてはくれないし、一緒に寝ることすら拒まれた。
…無視されているのか
原因は何なのか考えてみたけど風呂場の鏡の結露のように考えては白く濁っていった。
そんな君が俺の前で泣き出した。俺に向けられる怒りや憎しみの涙ではない事が手を取るように分かった。
-その涙を隣りで拭ってあげられれば-
…!ふと感じた想いに俺は気づく。
…ああもう君の隣には居ないのか
何故今まで気づかなかったのだろうと、気づかなかった訳ではなく、気づきたくなかったのだろうと、そんな考えが俺をめぐって消えた。
泣いている君の心が泣き止むまで、俺は君の隣りにずっといるよと。届かぬ声を掛けた。
【もっと知りたい】
気づけば目で追っている。
友達と笑い合う声の中で君の声だけが私の心に意識せずとも入ってくる。
君が教室に入ってくるタイミングも、君が私に話しかける時もなんとなく分かる様になった。
授業中目があってちょっと微笑んでから目を逸らした君も、忘れたからとさりげなく私のシャーペンを借りにきた君も全部私だけが知ってる。私だけが知ってる君をもっと、ついでに君が私のこと好きなのか、、いずれ知れたらいいな。
【平穏な日常】
朝、夢と分かりながらその世界に浸っている。
目を開けてしまえば現実を知ってしまうから、
だからもう少しだけと目の前のあなたに呟いたんだ。それと同時に頭の後ろで鋭い音が鳴り響く。それは最初夢の中の音と一体化していた
けどだんだんとそれは夢と現実を引き裂いていく、意識がはっきりしてきてやはりこれは夢だったのかとわかる様になっていく。
パンを齧る。小麦の味が鼻を抜けるコーヒーの香りと混じっていく。まだハッキリしていない頭はさっきの夢をじんわりと思い出している。
歯を磨き、スーツを着て、充電器からスマホを外す、時間を確認してふぅと息を吐き、鏡で身だしなみを整える。玄関で靴を履き、シューズクロークの上の小さくなったあなたに行ってきますと声をかける。ドアを開けると春の暖かな匂いが部屋の中へ吹き込んできた。