sparrowHAZET

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11/5/2023, 1:35:56 PM

今こうしてあなたに向けて筆をとること、不思議な気持ちです。

あの頃
夢中になっていたDisneyにはもう何年も行っておらず、
あなたの好きだったポニーテールに髪を結うことはもうなく
苦痛にさえ感じた読書が今は趣味になっています。
あの頃はまだ口にできなかったお酒もタバコも経験しました。
運転免許を取り、古い車に乗っています。
ハイヒールも履きます。お化粧もします。
あの頃出会ってなかった人と結婚し子供を二人産みました。
犬との生活にも夢中です。
ウニを美味しく食べられます。
毎日家事をして、仕事にも出掛けます。
自分が何を好きなのか何を望むのかがわかります。
したくないことを仕方なく受け入れることはあっても、当たり前だと受け入れることはありません。


相変わらず
サザンを聞いていますか。
音楽に触れていますか。
空手はしていますか。
ブロッコリーは食べられませんか。
しっかりとアイロンされたシャツをきていますか。
勉強してますか。
縦長の美しい文字を書いていますか。
階段が焼き豆腐に見えますか。
歩いていて左右どちらの足を出すのかわからなくなりますか。
色の認知が皆同じではないと一緒に疑いますか。
相変わらず笑顔を振りまき鼻唄を歌ってヒョコヒョコ歩いてますか。
心配して泣きそうになったりしていますか。
そっと優しく手を繋いでいますか。
相変わらず誰かをひたむきに愛していますか。


あなたのあの頃しか知らないけれど、
あなたを今も想います。

あなたはあの頃の私を覚えてはいないでしょうし、今の私を想うことなどないでしょう。
けれど今もどこかで懸命に日々を過ごしていて、私の知らない時間を私と同じだけ過ごしてきたのだと思います。


25年後に文字だけ再会しましたね。
なんとなく、また25年後に再会する気がします。待ち遠しいとは言い難い、虚しさを伴う酷な予感です。
その虚しさを埋めるために私は手紙を書き綴ります。
投函も送信もしない手紙というものが私には必要なのです。そうして日々を過ごしています。
私の人生は、酷な予感を塗りつぶすように、そうして歳を重ねているのです。



#一筋の光

7/6/2023, 2:49:57 PM

子供から大人になる日々を共に過ごした。
私の基礎は貴方との記憶をお互いに練り込んで作られ、その半分という感覚は上と下でもなく右と左でもなく、緑色で紫色でオレンジ色。

貴方は私を残して旅立ち、私の基礎が半分抜け出した。
ぽっかりと穴が開くよくいうが、
混ざりあって出来上がったそれは、埋めることの出来ない消滅という崩壊が始まりそうだ。
静かに溶け出すかのように蒸発するかのように無になろうとしている。

私は今、それに抗わなければならない。
私を置いて逝かなければならなかった貴方のためにも私は独り、もがきあがく。


#友だちの思い出

6/29/2023, 12:57:58 PM


放課後、文化祭に向け実行委員が集まる。
向かい合わせに席に着いた私達は、目を合わすことさえもできず、しかし誰よりもお互いを意識しながら作業を進めることになった。

蒸し暑い教室に夏の風が吹き込み、開かれた窓に視線を移すと、窓ガラス全面にモクモクとした入道雲が映り、その窓ガラスを背に座る彼と目が合った。私達はすっかり恋に落ちた。


ビールグラスの中にモワモワと泡が立つ。
入道雲を抱えたグラスに私だけが映っている。

#入道雲

6/28/2023, 11:03:31 AM

うだるような暑さに、おぼろ気な記憶がよみがえる。

あの日、日に照らされた広場の縁のベンチは、松の木陰で少しばかりだが暑さをしのげた。
彼は何と言ったのだろうか。そして私は何と返したのだろうか。
暑さと共に過ぎた時間は、ジリジリと私の視界を狭め、心も狭めていき、彼と私の気持ちの距離だけを広げていった。

今日の暑さは私から何を遠ざけていくのか。


#夏

6/28/2023, 6:36:08 AM

この月をどこかで眺めているだろうと思うと、この月明かりに照らされているのだろうと思うと、それはただの月なのだけれども、私の世界で何物にも代えがたいただの月となる。

月と私の間を飛行機が横切って行く。
名古屋発羽田行。
飛行機を追いかけるエンジン音が私の耳に降りかかる。
あの飛行機は彼を運んではいないだろうか。

ただの飛行機がまた、何物にも代えがたい、ただの飛行機となる。

ここではないどこかは、いつまでも私の中にある。

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