春だと言うのに、肌寒くなってきたこの頃。
それなのに、私は薄着でベランダに出て、夜空に散りばめられた星を眺めていた。
適当に、目立った星たちを目でなぞってみた。
すると、隣から聞きなれた声が聞こえてきた。
「あれは、しし座っていう星座なんだよ」
星柄のパジャマを来ている、茶髪の女の子、私の妹が無邪気にそう言った。
「へぇ、そうなんだ」
そう言って、君の顔を見た。
でも、君の目を見つめると、なぜだか途端に涙が流れた。
どうして、どうして君が、ここにいるの?
君は、5年前、病気で死んだのに。
君の目を見つめたら、思い出しちゃった。
夜空に散りばめられた、沢山の星。
眺めていたら、君が隣にそっと座った。
悩んでいる僕を、気遣ってくれたらしい。
君はただ、そばに居るだけだった。
星空の下で、悩む僕と優しい君が、ただぽつんと世界の真ん中に座っていた。
それでいいの。
貴方は、私の物になればいいの。
私だけの物になれば。
「もう、君とは一緒にいれない」
それでいいの?
自分の大切なものってなに?
「うーん、ぱっとでてこないなぁ」
「友達、お金、趣味、家族……いっぱいあるよね」
「いや、そういう事じゃなくてさ」
「え、なに?」
酔いが回っているのか、貴方の頬はほんのり赤い。いつものおっとりとした目も、酒のせいで溶けている。
貴方は、言葉に迷いながら、たどたどしく言葉を紡いだ。
「その……なんていうか、大切なものって、あるんだけどさ。ここでは……言えないって言うか」
「えー?なんで?」
「う、うるさい!とにかく言えないのー!」
そう叫ぶ貴方を見ると、幼い頃の貴方を彷彿とさせられた。
小さい頃から変わらない。
私の大切なものも、小さい頃から変わってないよ。
「私、来週引っ越すんだ」
貴方は、真剣な顔でそう言ってきた。
4月1日。今日はエイプリルフール。親友で、何をするにも、行くにも、食べるのも、全部一緒だった貴方の口から、信じられないような言葉だった。
私は、ビックリして5秒くらい固まった。
「ごめん、言う日間違ってるかもしれないけど……今しかないかなって」
「……嘘じゃ、ないの?」
「うん」
貴方が言うには、県外に行くとかそういうのではなくて、海外に引っ越すらしい。頭が追いつかない。でも、私は情けない顔を貴方に見せたくなくて、
「海外着いたらさ、連絡してね。写真とかも待ってるからさ」
「はは、旅行に行くわけじゃないんだよー?」
「だって、海外だなんて、とても凄いよ!」
語彙力の無い言葉を並べて、悲しさを紛らわす。
「あ、私も言いたいことがあるんだった!」
「ん?なに?」
「貴方のこと、ずっと大好きだよ!親友として!」
「……ありがとう。また、きっと、会いに行くから」
貴方は、泣き崩れた。
私は貴方に、嘘をついた。だって、エイプリルフールだもん。
親友としてじゃなくて、恋愛対象として。