ただ無意味に、過ぎ去った日々。
起きて、学校に休む連絡を入れて、また寝て、起きて、ご飯食べて、また寝て、朝が来る。
こんな日々を送っていたからか、どのくらい時間が過ぎていたのかも分からない。
今思い出しても、記憶がぼんやりとしていて、何をしていたのかも分からない。
でもきっと、あの日々がなかったら、今ここに私はいなかったかもしれない。
それなら、あの過ぎ去った日々も、少しは愛せたりして。
お金より大事なものって、沢山あるよね。
「お金より、かぁ。確かに沢山あるけどねー……」
友情、愛、時間、平和……なんて、貴方は指を折り曲げながらぽつりぽつりと大事なものを思い浮かべていた。
「でも、なんとなく、全部違う気がするんだよね」
「今思い浮かべたものが?」
「うん。お金より大事なものって……考えても思い浮かばないくらい、当たり前のことなんだと思う」
もちろん、友情とか平和とかも大事なものだけどね!と貴方はニカッと笑ってレモンサワーを1口飲んだ。
今日もきっと、あなたと居るから、大事な時間になっていくのかな。
大好きな君に『大好き』と言えない。
「ねぇ、今日のテストどうだった?」
「うーん、まぁまぁかな。貴方は?」
「それがさ、ギリギリまで覚えた単語、思い出せなくてさ。あんまりよくないかも」
「そっか。災難だね」
いつも通り、二人で家に帰りながら、今日あったことを話す。
ついでに、あの言葉がポロッと私の口から出てこないかな。
「じゃ、私こっちだから」
「あ……うん。またね」
分かれ道。ここが、1番嫌い。
また貴方に言えなかった。大好きって。
欲望があるから、色んなことを知りたくなる。
欲望があると、自分に期待しすぎてしまう。
あれが欲しい、これも欲しい、私にはないからそれも欲しい、これは自分にはあるけどもっと極めたい。
いつか、自分の本当にやりたかったことが、分からなくなる。
欲望には、逆らえないけれどね。
「貴方には、妹がいたのよ」
産まれたと同時に亡くなった妹。
存在を知ったのは、高校2年生の頃だった。
「その……初めまして」
初めて、妹のお墓参りに行った。
妹は私と2歳差で、ということは生きていれば妹は中学三年生だ。
「高校受験か。貴方は受けるのかな?私は勉強できないけど、貴方なら出来たのかな」
顔も知らないし、声も仕草も何もかも知らないけれど、なんとなく寂しい気持ちになった。
「……ごめん、もう行くね。貴方に、かっこ悪いところ見せたくないや」
下を向くと、ポタッポタッと何かが落ちているのを見た。
私の大切な小さな命の誕生日、貴方の好きそうな花を一生懸命選びました。
どうか、受け取って。