木々が葉を落とし始めたこの頃、私は身の丈に合わない格好をして、木の葉の道を歩いていた。
いつもはしないメイクをして、赤いハイヒールなんかも履いちゃって、髪も焦げ茶に染めた。
次大学に行く時、どんな目で見られるんだろ。なんて思いながら、私は目的地である噴水がある広場に向かっていた。
そこには、3年くらい会えなかった親友が、私を待ってくれている。確か、留学でフランスに行くとかなんとかで、しばらくの間会えない時期が続いていたのだ。
でも、今日はそんな彼女が帰ってくる日。
広場に着いて辺りを見渡すと、そこには大きめのバッグと楽器ケースを持った彼女が、ベンチに座っているのが見えた。
そんな彼女は私に気づいたのか、大きく手を振って私に居場所を教えてくれた。
私は彼女に向かって走って、そのまま思い切りハグをした。
雲ひとつない空にただ浮かんでる太陽が、私たちを照らしてくれている。
彼女は、優しく笑ってこういった。
「今日は秋晴れだね、いい一日になりそう」
彼女は確か、好きな物には一直線だった。
だから、何かをめざしている彼女はとても美しかった。
なのに、彼女の努力は報われなくて、俺だけ先に進んでしまって。
だから、彼女はこの世から去ってしまった。
彼女も、俺も分かっていた。俺なんかがこのステージに立つ権利なんて無いことを。
今でも忘れられない。忘れたくても、忘れられないんだ。
彼女の、泣き顔が。
カーテンから漏れるやわらかい光を浴びて、私は思いっきり伸びをした。
今日の一日を想像すると、楽しみと言うより、いつもの日々をすごせるという安心感の方が強かった。
今日も、普通の人なら欠伸が出ちゃうような、そんな日常が始まる。
私は、大人たちの鋭い眼差しが嫌いだった。
私を信じていないように感じるから。
でも、今は違う。
ついさっき、具合が悪いのを隠していたのがバレて、彼女に無理やりベッドに連れていかれてしまった。
鋭い眼差しで、「嘘ついてるでしょ」なんて言われちゃって、何も言えなくなった。
でも、なんだか嬉しかった。
もっと、私も素直にならなきゃ、ね。
綺麗な景色を見るには、高い場所に登るしかない。
高い場所に登るには、努力は付き物。
もっと高く高く登るために、私は努力をした。
でも、この程度だね。
私は、足を滑らせて落ちてしまった。
もう戻れない。そんなことを思っていたら、仲間が私に手を差し伸べてくれた。
そんなの、また頑張るしかないじゃない。
さっきよりも、高く高く、仲間たちと共に登り詰めるんだ。