君がいるのが当たり前だった
なにを言っても聞いてくれるのが当たり前だった
君はいつもニコニコと笑ってるのが当たり前だった
多分心のどこかでダメだと分かっていた
でも全て許してくれて、それが当たり前になった
わがままを言っても
大きい声を出しても
暴言を吐いても
手をあげるようになっても
君は困ったように笑いながら許してくれた
でも私が今は亡き義母さんの指輪を無くしたのが
どうしても許せなかったんだよね
本当にごめんなさい
こんなこと言える立場じゃないのは分かってるけど
許されたいと思うことすらおこがましいけど
君がいないのが
君に声が届かないのが
君の笑顔が見れないのが
辛くて辛くて仕方ない
でもこれからは私だけで生きなきゃいけない
再婚なんて考えず 君にしたことを悔み続けるよ
それがいつか 私の当たり前 になるから
【私の当たり前】
僕の家は金持ちだ
母はとある病院の院長の一人娘 父は腕が立つ外科医
両親は政略結婚だった、らしい
僕も医者になるため昔から勉強漬けの日々だった
学校 課題 テスト 家庭教師 毎日勉強に明け暮れた
それが当たり前だった 他の道なんか知らなかった
その日は早く目が覚めて、どうしても眠れなかった
気分転換に近くの公園まで散歩することにした
近くまで行くと公園の方からなにか聞こえた
気になって少し早歩きで公園まで進んだ
そこに居たのは僕と同じぐらいの年の少女だった
ベンチに腰掛けて、心底 楽しそうに歌っていた
僕は音楽に詳しくなかったけど 聞き入ってしまった
歌い終わった彼女に声をかけた
「その歌 素敵だね、なんて曲なの?」
僕に気づいておらずびっくりしつつも答えてくれた
『え この曲?名前 まだつけてないんだ〜』
「もしかして、自分で作った歌なの?」
彼女はちょっと照れたようにこくりと頷いた
『歌が好きなんだ 歌うのも作るのも』
『また聞きに来てよ、晴れの日は練習してるから』
この日から僕は早起きが習慣となった
彼女が引っ越す日まで、ずっと歌を聞き続けた
これは僕の大切な友達の思い出
【友だちの思い出】
君と最後に会った日
小学校の卒業式の日
君は小さなオルゴールをくれた
「言ってなくてごめん、私 引っ越すんだ」
今にも泣きそうな顔で言う君から貰ったオルゴール
僕の好きな黄色の箱に君の好きな白色のデザイン
小さな白い花がたくさん描かれていて可愛らしい
「これがあれば私のこと忘れないよね」
忘れるはずない、確かこんなことを言った気がする
君の言葉は全部覚えているのにね
「ありがとう、私も絶対忘れないから」
泣き笑いのような顔が今でも脳裏に焼き付いてる
「大きくなったら絶対、絶対に会おうね」
手を振って去っていく君を前に
僕は涙を堪えることしか出来なかった
【君と最後に会った日】
とある庭に雪のような真っ白の花が咲いている
花は気分屋で世話をするお嬢さんを困らせてた
光が眩しい、風が強い、喉が渇いた、周りが煩い
と言いお嬢さんは
眩しくないよう屋根を作った
風が当たらないよう壁を作った
喉が渇かないよう毎日 何回も水をやった
周りに生えてる花を別の場所に移した
そうすると
暗すぎ、無風はやだ、水が多い、話し相手がいない
と我儘を言った
お嬢さんはそれでも花の世話を続けた
ある日お嬢さんは倒れてしまった
花は独りになった
花はいつも通り我儘を言い続けた
その言葉に応えるものは誰もいない
花は次第に何も話さなくなった
しばらくしてポツリと最後の我儘を言った
もう一度 会いたい
【繊細な花】
あなたのことが好きです。
1年間だけ私と付き合ってください
…やっぱり1年って気になりますよね
ちゃんと説明します
まず あなたを好きになったのは入学式の時です。
校舎内で迷子になり先輩方の階まで行っちゃった時
素っ気ないけど教えてくれましたね
周りが見て見ぬふりでもあなたは助けてくれました
そんな優しいあなたが以前からずっと好きでした。
そして 1年間の理由は、病気です。
私 今はまだ元気ですが あと1年しか生きれません。
どうしても治らないなら後悔したくないです。
こんな罪悪感につけ込む形でごめんなさい
でも 諦めたくない。1年後泣くのはイヤなんです。
お願いします。私と付き合ってください。
…やっぱり あなたは優しいですね
では、1年後のその時までよろしくお願いします!
【1年後】