1000年先も
『何度生まれ変わっても』
俺「やっと着いた!、これが日本、いや、世界最古の桜か」
親友「ホント遠かった、東京から電車とバスを乗り継いで、そして長いこと歩いて、疲れた」
俺「でも、すげー!やっぱスケールが違うな、今まで見た桜の中でダントツでデカい!」
親友「それに、綺麗!」
俺「来たかいがあったな」
親友「まじで、そうだわ」
俺は親友と2人で世界最古の桜を見に来ていた。
2人して桜に見惚れた。
2人共初めて来たはずなのに、前にも2人で来たことがあるような感覚だった。
親友「この桜には伝説があるんだけど知ってるか?」
俺「なんだよ、伝説って?」
親友「この桜の木の下には1000年以上前に魔王を倒した勇者が埋まってるんだよ、でっその勇者を肥やしにしてこの桜はこんなに長生きできてるっていう伝説だ」
俺「なんだよそれ笑、めちゃファンタジーじゃねーか」
親友「でもさ、この桜は1000年以上生きてて、これから先も1000年以上生き続けるかもしれないって思うとそういうファンタジーもあるんじゃないかって思わないか?」
俺「確かに、あるかもな」
俺「もし、1000年先まで生きられるなら何したい?」
親友「え〜、急に言われると迷うな、、、でもやっぱやりたいこと全部やるわな、1000年もあれば大抵のことはできるだろうし」
俺「例えば?」
親友「ん~、友達1000人作るとか?」
俺「笑える、小学生かよ笑」
親友「そう言うお前はどうなんだよ」
俺「俺は1000年先もお前とこうして旅をしてたいな」
親友「お前ホントに旅好きだな、お前の口から『なぁ、旅に出ようぜ』ってセリフ何回聞いたことか、旅行会社のキャッチコピーかよ!」
俺「でもいいじゃん、楽しいし」
親友「まぁ、そうだけど」
俺「だからさ、この旅が終わったらさ、旅に出ようぜ」
親友「またかよ笑」
勿忘草(わすれなぐさ)
『優しい嘘』
トントントン
冬爾「冬爾です、失礼します」
僕は茜先輩がいる病室に来た。
扉を開けるとそんなに広くない1人用の病室のベッドに茜先輩は座っていた。
僕は今日茜先輩に告白をするつもりで来た。
茜「こんにちは、今日も来てくれたんだ、ありがと」
茜先輩は優しく笑いかけてくれた。
冬爾「はい、毎日来ます」
そう言って、僕はベッドの横の椅子に座った。
茜「でも大丈夫なの?もう高校3年生だから受験勉強大変でしょ」
冬爾「大丈夫です!さっきまで勉強してこのあとも勉強する予定です、息抜きで来ているのでむしろありがたいです」
茜「病人なんかと会って息抜きになる?」
冬爾「はい、茜先輩と会えるだけで楽しいので」
茜「そう、、、」
冬爾「早速なんですが今日は言いたいことがあって来ました」
茜「うん、、なに」
どこか不安げがあるようだけどほころんだ笑顔で優しく聞いてくれた
冬爾「あの、僕は茜先輩のことが好きです、今は無理でも茜先輩が退院したらいろんな所にいきましょう、だから僕と付き合ってください」
沈黙
茜「、、、ごめんなさい」
こうなることは予想していた、茜先輩はすごく美人な人だから僕みたいな人よりも良い人を選ぶだろう、もう選んでるのかもしれない。
でも分かっていても実際は辛かった。
冬爾「そっか、そうですよね」
涙をこらえながら言った。
茜「もう、来なくていいよ」
冬爾「えっ」
僕は耳を疑った。
もうこれ以上やめてくれ。
茜「もう、ここには来ないで」
あのいつも優しい茜先輩は優しくない声で言った。
僕は絶望した、もう茜先輩と会うことができないと考えただけで胸が苦しい。
しかし理解した。
僕は茜先輩に嫌われたんだ。
告白なんてするべきじゃなかったんだ。
冬爾「すみませんでした」
喉が締め付けられるような感覚に陥ったが振り絞った声で言った。
茜先輩には聞こえなかったかもしれないほど小さな声だった。
僕は病室を出ていった。
僕は泣いた、ひたすら泣いた。
1ヶ月後
あれから僕は茜先輩と会っていない。
あんなことを言われて茜先輩に会いに行く勇気はなかった。
でも今日久しぶりに行くことにした。
病室の前で僕は立ち止まっていた。
まだ怖い、あとちょとの勇気がほしい。
『昨日よりも今日、今日よりも明日、1ミリでも強い人間になれるようにしたらいいんだよ』
そんな言葉を思い出した。
そうだ僕は前よりも強い人間になれてるはずだ。
トントントン
冬爾「冬爾です、失礼します」
扉を開けるとベッドに茜先輩はいなかった。
冬爾「トイレかな、、」
おかしいことに気づいた。
あまりにもベッドや机などが綺麗になっていた。
冬爾「もしかして、退院したのかな」
看護師「あれ、あなたは、、」
後ろから声が聞こえて振り向いたら看護師さんがいた。
冬爾「あっあの、僕はここの病室に入院してた茜先輩の、、、、知り合いなんですけど茜先輩は無事退院されたんですか」
茜先輩との関係をどう言えばいいか迷ってしまった。
看護師「あなたが冬爾さんなんですか、あなたに伝えないといけないことがあるんですが落ち着いて聞いてくださいね」
冬爾「はい、」
なんのことか全く想像できなかった。
看護師「この病室で入院されてた茜さんは、つい1週間ほど前に亡くなられました」
冬爾「えっ」
意味がわからなかった。
茜先輩はそんなに重い病気じゃないからもうすぐ退院できると言っていた。
冬爾「何言ってるんですか、茜先輩はちょっと熱が長く続いて念の為入院していただけだったんですよね」
看護師「茜さんはずっと前に余命宣告されていた患者さんでした」
冬爾「どうして、、、」
涙が溢れ出てきた。
僕は崩れ落ちてしまった。
泣いた、どれだけの時間泣いていたかわからないけど長い時間泣いた。
看護師さんは何も言わず、ずっと背中をさすってくれていた。
冬爾「すみません、ありがとうございます」
涙をなんとか止めて言った。
まだ信じられないがこれ以上看護師さんに迷惑をかけるわけにもいけない。
看護師「冬爾さん、こちら、茜さんからあなたへの贈り物です」
そう言って看護師さんは病室の机の上にあった花を僕に渡した。
冬爾「これは、」
看護師「これは勿忘草です」
冬爾「なんで、」
看護師「この花の花言葉は真実の愛、それと『私を忘れないで』です」
ブランコ
『私の街』
ギーコギーコ
今日も私はブランコに揺れている。
高い山の上にあるブランコ。
私は昔からこのブランコが好きだ。
なぜって?、それはこのブランコから見える街の景色が最高だから。
通ってる学校、校舎が大きくてよく見える
行きつけの喫茶店、あそこのパフェ美味しんだよな
友達とよく行くカラオケボックス、好きなバンドの曲ばっか歌っちゃう
たまに行く映画館、この前見た映画感動しちゃったな
この街には私の思い出が沢山ある。
それが全部見えるこのブランコが、私は好き。
旅路の果てに
『終わりと始まり』
僕は勇者。
世界を脅かす魔王を退治するために旅をして20年が経った。
今でも覚えている、旅のはじまりを。
大きくてきれいな桜の木の下で「なぁ、旅に出ようぜ」と親友が僕に言ったから始まった旅だ。
最初はそんな親友と2人で始めた旅だがその親友も戦死してしまった。
この20年の旅で沢山仲間が増えて、そして沢山仲間が死んでしまった。
そして今、仲間6人で魔王に挑もうとしていた。
勇者「おいっ!魔王!今日お前は初めて敗北を経験することになるだろう!」
魔王「そうか、そりゃ楽しみだな、わっはははは」
魔王「来るがよい!勇者たちよ!」
戦いは長期戦となった。
しかし長い旅と比べたら短くあっけないものだった。
最後には僕は魔王と刺し違えた。
魔王も僕も死んだ。
世界は平和になった。
勇者「ここは、天国か」
魔王の死を見届け目を閉じて次に目を開けたら真っ白な世界にいた。
しかし、どこか見覚えのある場所。
そうここは旅の始まりの場所、あの桜の木の下だ。
ただ違うのは世界が真っ白なところだけ。
親友「待ちくたびれたぞ」
桜の木の下には親友が待っていた。
勇者「やり遂げた」
久しぶりに聞いた親友の声に涙が出そうになったが、まず言うべきことを言った。
親友「あぁ見てた、みんなで見守ってた」
親友の周りには死んだ仲間たちがいた。
勇者「久しぶりに再開できたし、ゆっくりするか」
親友「いや、旅に出ようぜ」
僕の目からは涙が出ていた。
勇者「あぁ、そうだな」
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優しさ
『親友』
0時58分
撃「俺、寝落ちするわ〜」
透「おいっ!、もう死んだからって寝るなよ!、試合まだ終わってなーぞ、それに寝落ちする奴は寝落ち宣言なんてしねーよ笑」
撃「もうお前ぇしか残ってねぇし、負け確だろ」
透「わかんねぇーだろ、こっから俺1人でワンチャン逆転あんだろ!」
撃「じゃあっおやすみ〜」
透「てめぇ!おい!」
俺の名前は田中撃(たなかげき)、ゲームネームはヒット
友達の衣笠透(きぬがさとおる)、ゲームネームはスケ。
俺達2人は高校1年のときに出会い、同じクラスで隣の席になりよく会話するようになって、互いにゲーム好きとわかってからは毎日家に帰ってから夜中まで通話ソウトで繋いで会話しながらゲームを一緒にするゲーム友達となっていた。
そんな生活をして1年が経って2年生になったときゲーム友達が一人増えた。
キーンコーンカーンコーン
最後の授業が終わり、俺達がいつものようにこのあとドラゴンナイトというゲームをする約束をしていたら
明「あの!、ドラゴンナイトの話だよね、僕も好きなんだ、」
後ろの席に座っていた声すら聞いたこともないぼっち陰キャの野澤明(のざわあきら)が勢いよく席を立ち言った。
しばらく沈黙が流れた。
そして透は言った。
透「ホントに!?、じゃあこのあと一緒にする?」
クラスで浮いてるぼっち陰キャと仲良くなったら自分までクラスで浮いた存在になる。
だから俺は透がこんなぼっち陰キャと仲良くなろうとしているのが理解できなかった。
そして考えた挙げ句1つの答えが出た。
前から知っていたことだった、透は優しい人間なんだ。
でも優しい人間とは他人のために自己犠牲できる人のことだ。
そんな不便な生き方絶対におすすめできない。
学校の帰り道、透と2人になった。
撃「なっ、透って優しいよな」
透「ん?、何?急に褒めてきて、今俺金しか持ってねーぞ」
撃「でも、不便な生き方してないか?大丈夫か?」
透「ふ·べん?、便はちゃんと出てるけど」
撃「そういうことじゃねーよ笑、真剣に聞いてんだから笑かすなよ笑」
透「ごめん、ごめん笑」
撃「あんなぼっち陰キャと仲良くならなくてもいいんじゃないか?」
透「ぼっち陰キャって、明のこと?、お前意外とひどいこと言うな笑」
撃「俺は心配してんだよ、優しいってのはいいことだけど、でもそれで自分自身を縛ってしまったらダメだろ」
透「撃が言ってることはわかるし、心配してくれてありがと、でも俺は別に自分自身を縛ったりなんかしてねぇーぞ、明とは前から仲良くなりたいと思ってたし」
撃「怖くないのか?、クラスで浮いてる奴と仲良くなろうとしてるんだぞ」
透「怖い!、でも精一杯勇気を振り絞った人の思いを無下にする方が怖い!、お前も聞いてたろ、明の声震えてた、もしあそこで無視してたら俺は一生後悔する!、あの震えた声が死ぬまで俺の頭にこびりついてとれなくなる」
撃「自己満足って、ことか」
透「そう!自己満、だから周りからどう思われようと関係ない!」
透らしいと思った、透は優しくてヒーローみたいな奴だ。
撃「ふっ、なら俺もお前のその自己満に付き合うわ」
透「いいのか?、お前もクラスで浮いた存在になるかもしれないんだぞ」
撃「透とならそれでもいいわ」
透「そっか、撃が一緒だと心強いわ、ありがとな」
透「俺のことを心配して言ってくれて、そして俺の自己満に付き合ってくれて、本当に1番優しいのは撃だな」