針間碧

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4/2/2024, 3:24:28 PM

『大切なもの』

はじめまして。…おや、なんとも珍しいお客さんですね。いえいえ、構いませんよ。この店は、どんな方でも歓迎しておりますから。どうぞ、お席にお座りください。
 この店は、夜しか経営していないカフェなのです。夜、一息つきたい。そんなお客さんの為に、この店は存在しております。そして、この店に決められたメニューはございません。お客さんのリクエストにお応えしてお品物をお出ししております。…といっても、当店の在庫にあります食材でできる範囲内ではございますが。基本的にカフェで食べられそうなものは作れるように取り揃えておりますので、どうぞご安心ください。
 それでは。今日は何をお作りいたしましょうか?勿論お飲み物だけでも構いませんが。…ふむふむ。オムライスとココアですね。かしこまりました。オムライスの上にかけるものは、ケチャップでよろしかったですか?そうなんです。ケチャップ以外にもオムライスの上にかけるものがあるのですよ。ケチャップでいい?それは過ぎたことを申し上げました。ケチャップ以外がかかっているオムライスは、いずれまたお召し上がりください。
 ところで、どうしてこんなところにいらしたのですか?…なるほど、わからない。でも、迷子というわけでもない、と。そうですね。そうおっしゃるのなら、きっと迷子ではないのでしょう。こちらでオムライスとココアをお召し上がりになっている間に、きっと思い出しますよ。
 …おや、卵でご飯を包んでいるところを見たいのですか?勿論よろしいですよ。ただ、危ないので手は出さないでくださいね。…面白そうですか?確かに、ちょっと難しいですが、慣れればそれなりに楽しいですよ。コツは「中火で焼くこと」です。といっても、卵料理全てにおいて言えることではあるんですがね……。
 お話している間に、できましたよ。オムライスとココアです。オムライスには好きにケチャップをかけちゃってください。…いいんですよ。オムライスは描いて楽しむものでしょう。食べ物で遊ぶな、という言葉はありますが、こういった遊び心は忘れたくないものです。
 お味はいかがですか?…懐かしい、ですか。それはなんとも嬉しい言葉ですね。お客さんのお口に合ったのであれば何よりです。おや、どうされたんですか?もしや、目に何かゴミでも……。
……そうですか。思い出されましたか。あなたは、もう死んでいることを。…詳しくは存じ上げませんが、あなたは交通事故で亡くなられたと聞いております。そのままあなたは成仏されるはずだった。しかし、記憶をお忘れになったようで、そのまま現世にとどまり続けてしまっていたのです。そのまま数年は経ち、今私の目の前にいらしているのです。
…このオムライスは、あなたが生前一番好きな料理だったようですね。あなたのお母さんがよく作ってくれた。私はあなたのお母さんのオムライスを完全に再現することはできませんが、限りなく近い味だったようでよかったです。ココアもそう。夜眠れなくなったときに、お父さんにこっそり作ってもらっていたようですね。どちらも、あなたにとっては忘れられない、大事な思い出。
 え?私との思い出も作りたい?……お気持ちは嬉しいですが、私はいいのですよ。あなたが満足されている。その姿を見られただけで充分ですから。ただ、そうですね……。もし、次またお会いできることがあれば、その時は、ケチャップ以外がかかったオムライスをお出ししますよ。是非楽しみにしていてください。
 …そうですか。もう行かれますか。どうもありがとうございました。またのお越しを、お待ちしております。

3/28/2024, 2:19:48 PM

『見つめられると』

私は今、普通の精神状態じゃない。そんなのは私が一番よくわかってる。なんたって、私は先ほど人を殺してきたのだから。
 夕方の六時。それが友人との約束の時間であった。その友人と連絡は定期的にとっていたが、遠方に住んでいるため会うのは久しぶりであった。だから、普段の私なら、いつも通りに会って、何気ない会話をして帰る。それだけになるはずだった。でも、今日は違う。私は、さっき人を殺してきてしまったのだ。
 別に殺したかったわけではない。電車に乗ろうとしていて、目の前の人の様子がおかしいからなんとなく見つめていたのだが、フラフラと前に進んでいて、気が付いてしまった。この人は自殺をしようとしているのだと。私は、止めるべきだった。でも、声も出なかったし、手足は一切動かなかった。何もできなかった。気づけば目の前にいた人は、駅のホームから、消えていた。
 一瞬の沈黙。後の度重なる悲鳴。凄惨な現場を前に、私は動くことができなかった。周りの人の誰かが私にぶつかってきて、はじめて足が動くようになった。私は黙って踵を返して、ホームから離れた。
 目の前で人が死んだわかっていたのに何もできなかった声をかけるべきだったのにどうして何もできなかった私は……。私は、人殺しだ。
 この後は、正直帰りたかった。友人には申し訳ないと詫びて、寝て忘れてしまいたかった。でも、滅多に会えない友人との約束を反故にすることも、私にはできなかった。重い足を引きずりながら、私は約束の場所へと向かった。
「お、久しぶり~!」
「久しぶり……」
 友人は変わらぬ笑顔をこちらに向けてきた。いつもなら私も嬉しくなって笑い返すが、今はとてもそんな気分にはなれない。私は何とか取り繕った笑顔を返した。
「え、大丈夫?なんか顔色悪いけど……」
「大丈夫、昨日夜更かししちゃって……」
「…そっか!じゃあご飯食べに行こう!この辺に行ってみたいバーがあるんだよ」
「本当、相変わらずだねぇ」
 何とか誤魔化せたようだ。そのまま友人についていき、目的のバーに着いた。バーにはカウンター席とテーブル席があり、友人は真っ先にカウンター席へ向かい、席についた。私はその隣に座り、メニュー表を眺める。今は何を飲んでも味がしそうになかったが、よく私が頼んでいるカクテルの名を口にした。
 友人との話は、全く頭に入ってこなかった。なんだかんだアルコールを口にすれば忘れられると思っていたが、そんなこともなく、なんなら先ほどの出来事がフラッシュバックし始めた。私は、人を救えなかった。
「それで……。……本当に大丈夫?」
 友人は流石におかしいと思ったようで、こちらを見つめてくる。こういうときの友人は厄介だ。人の機敏に対して、妙に鋭くなる。私は友人の方を向いていたが、こちらを一心に見つめてくる友人の目に耐えられずとっさに顔をそらしてしまった。
「こっち向いて」
 そらした目を、元に戻す。友人の目は、変わらずこちらを見ていた。
「ねえ、何があったのか、問題なければ教えて」
「…………」
「……はぁ。言いたくないのならいいよ。別に強制はしない」
「…………」
「でも、これだけは言っておくよ。私は、君の味方だから。話ができるようになったら教えて」
「……ありがとう」
 私は、そうとだけ返した。知っている。このお人好しの友人ならそう言ってくれることは、わかっている。だからこそ、私は言いたくなかった。友人なら、絶対に受け入れてくれるから。私の罪も、何もかもすべて一緒に受け入れてくれる。だからこそ、言うつもりはなかった。
 友人は、一切の曇りもなくこちらを見つめ続けている。友人の瞳には、私がうつっていた。お願い、やめて。これ以上私を見つめないで。見つめられると、私の醜さが浮き彫りになってしまう。だから、お願い。私を見つめないで。私を助けて!

3/25/2024, 11:42:41 AM

『好きじゃないのに』

 私の趣味は美術館巡りだ。色々な美術館を巡って、様々な作家によって描かれた絵画たちを眺める。ただ、それだけ。
 このような話をすると、大概の人が「誰の絵が好き?」と聞いてくる。あるいは、「印象派?写実派?」といった絵画の特徴に関する話を持ち掛けてくる。私は、そのどちらの質問に対して、こう答える。「別に」と。そう答えると、周りは少し困ったような顔をして、次に何事もなかったかのように次の話題にうつる。
 悪いとは思っているのだ。相手は私の趣味に対して話題を広げようとしてくれたに過ぎない。それをたった一言で無碍にしているのはほかの誰でもない、私自身なのだから。しかし、恐らく次に同じような質問をされても、きっと私は答えられないだろう。
 私は、別に絵画は好きではない。興味もさほどない。では、なぜ美術館に行くのか。それは偏に私という人間の情緒を育てるためだ。私は齢二十四でありながら、人間の感情に対して鈍すぎる節があるらしい。いや、鈍いどころの騒ぎではない、わかってない、と言われた。例えば、今目の前に大量の星で覆われた星空があったとする。普通なら、「綺麗」やら「明るい」やら、何かしらの感想を得るらしい。それが、私には一切ない。ただ、星空がそこにあるだけ。その星空を見てどう思ったか、と言われても、わからない。星空に感情を求めるのか?私にはわからない。
 だから、人々が感情を得るものを見て、自分の情緒を育てようと思った。その一つが、美術館巡りであった。
 正直なところ、絵画を見るのは、そこまで好きじゃない。見ても何も感じられないから。そこに絵画があるだけ、としか感じられず、私の情緒のなさが浮き彫りになってしまうから。でも、何故か人々は絵画を見て、何かを感じている。必死に絵画にかじりついて、片時も離れまいと言わんばかりに見つめ続けている人だっている。私はそのような人たちの気持ちはわからないが、少し羨ましいなと思う。
 私は、絵画は好きではない。好きではないが、いずれは好きになれると、私が見つめる人々のようになれると信じて、今日も私は美術館を訪れる。

3/24/2024, 1:26:54 PM

『ところにより雨』

「…なあ、いい加減魔法やめてくれよ」
「なんで?」
 馬鹿みたいに大きな本を背負って俺の隣を歩く少女に、俺は苦言を呈した。隣のコイツはただ普段通りに歩いているように見えるが、俺にはわかる。コイツは今魔法を使っている。しかも、恐らくはそれなりにはた迷惑になりかねない魔法を。
「お前のせいだろ、ずっと曇りが続いてんの。この雨雲だと数日は雨が続いてもおかしくないのに、一切雨が降ってこない。いくらなんでもおかしすぎる」
「そーんなわけあるかもね」
「ほらあるんじゃないか!」
 隣の少女はすぐに白状してきた。しかも、全く悪びれていない様子。俺がおかしいのかと頭を悩ませていると、コイツは俺の前にまわってきて、俺を見上げながら首を傾げた。
「でも、それは君のせいだよ?」
「なんでそうなるんだよ」
「だって、連日雨続きで足場の悪い山道を歩くの嫌だってぼやいていたの、君じゃん。だから雨降らないようにしてあげたのに」
「うっ……」
 言った。確かに言った。数日前に出発した町から次の村まで、山道を進まざるを得ない。おおぶりではなかったとはいえ、雨が降り続けられると足も取られるし、滑って大事故になりかねないのでできれば避けたかったのだ。とはいえど、天候を変えるなんてこともしたくなかったので、なんとか我慢していた。しかし、朝起きてまだ雨が降っているのを見て、つい口にしてしまったのだ。「雨、いい加減やんでくんねぇかな」と。まだコイツは寝ていると思っていたからすっかり油断していた。まさか聞かれていたとは。
「わたしは君の願いを叶えてあげただけだよ?まあ、さすがに天候を大きく変えることはできないから、せいぜい雨を降らさないように雲を操っているくらいだけど」
 それがせいぜいで済むことではないことに何故コイツは気が付かない。いや、それはこの際いい。コイツの情操教育は今後いくらでもできる。今は、操っている天候をもとに戻すように言うのが先決だ。
「確かに雨がやんでくれればいいのにとは言った。その方が安全に進めるしな。でも、天候を操るのはよくない。世界の循環を狂わせることになるぞ」
「どうして?」
「お前は今、雨を降らさないように雲を操っているといったな。具体的にはどのように操っているんだ」
「そりゃ勿論、雲の中の水分が落下してこない程度の大きさで固定しているの。できるのはわたしから半径五キロってところだけど、わたしたちが今ここを歩いている分にはそこまで問題ないでしょ?」
「俺たちが歩いている分にはな。お前の範囲外に入った雲はどうなるんだ」
「そりゃ勿論、効果が切れるんだから、雨が降るでしょうね」
「ってことは、俺たちの後ろでは、大雨が降ってんじゃないのか?」
 少女は大きな目を瞬かせた。やっぱりコイツ、気づいていなかったな。
「俺たちが楽をしようとした結果、周りが大きな被害にあっているんだ。それは俺の意に沿わない。だから、頼むからその魔法はやめてくれ」
「……わかった」
 随分不本意そうではあったが、雲をコントロールするのはやめてくれるようだ。もとは俺の呟きが発端であるから、コイツばかり叱るのはお門違いではあるのだが、このまま周りが見えないままは問題がある。これを機に、自分の懐に入れた人間以外も目を向けるようになってくれればいいが。
 考え事をしていると、鼻先に水滴が落ちてきたのがわかった。雨を降らし始めてくれたのだろう。
「…ちなみに」
「なんだ?」
「今頭上にある雲も、間違いなくわたしの魔法がかかっていた雲なわけでして」
「そうだな」
「しかも、半径五キロ分の雨を抱えているわけでして」
「……おい、まさか」
「今から、五キロ分の雨が一気に降ってきまーす!」
 ドドドドドドドドド。まるで滝のような雨が一気に降ってきた。前言撤回だ。コイツはもっと叱るべきだった。ていうか、半径五キロ分でこの雨量だったら、その後ろではもっととんでもない雨が降っているんじゃないのか。
「てめぇ!今度あの町に帰ったら、誠心誠意謝れよ!わかったか!」
「大丈夫だよ。私の効果範囲を離れた雲は少しずつ雨が降るように調整はしたから。まあ、その分長期間の雨にはなるけれど」
「それを!先に!言え!」
「ははっ!魔女のいるところにより雨ってね!」
「雨どころの騒ぎじゃねぇだろうが‼」
 まあ、あとでちゃんと町のことも考えているじゃないかと褒めてやろう。そう思いながら、降りしきる大雨をしのげる場所に向かって走り出した。

3/21/2024, 2:45:01 PM

『二人ぼっち』

「お前の今一番叶えたい願いを一つ叶えてやろう。その代わり、お前の二つ目の願いはおれがもらってやろう」
 今、目の前にいる悪魔から、突然そう告げられた。この世に悪魔がいたという事実にも驚きだが、その悪魔がなんとも頓珍漢なことを言ってきたことにも驚いた。
「…そういう時、普通『願いを叶える代わりに命をもらう』っていうのが定石じゃないんですか?」
「確かに普通はそうなんだがな。流石に何千年も命ばかり食らっていたから、飽きがきてしまったのだ。だから、人間の感情を食らうことにした。するとどうだ。人間の願いのなんと美味なことか!人間側も願いを忘れて何不自由なく生きているようだし、お前たちの言葉で言う『うぃんうぃん』というやつさ」
 悪魔がWin-Winの関係を築いていいのだろうか。人間の欲望に対して、命という他の何物にもかえられないものをいただくのが悪魔というものだと思っていたのだが。最近は悪魔もアップデートするようになったらしい。それがいいことなのかどうかは自分にはわかりもしないが。
「さて、おれがお前の願いを求めているのは十分わかっただろう。早くお前の一番叶えたい願いを言うのだ」
「二番目の願いは言わなくてもいいんですか?」
「二番目の願いは必要ない。一番目の願いを叶えた時点でわかるからな」
「はぁ、そういうもんですか……」
「ほら、早く言え。その願いがおれの糧となるのだから」
 そうは言われてもな。自分は今ビルの屋上で飛び降りようとしていたところで、願いも何も未来すら考えていなかった。そんなところに現れるとは、この悪魔はだいぶ抜けているのかもしれない。いや、もしかするとわかっていて自分の前に現れたのかもしれない。それなら、この悪魔の想定通りに動いてやるのもまた一興だろう。
「じゃあ、自分を死なせてください」
「は?」
「もともと自分は死にたくてここにいるんです。だから、なんの問題もなく自分を死なせてください」
「それが、願いなのか?」
 おや、随分と困惑している。もしかして、本当にただただ偶然自分の前に現れただけだったのか?だとしたらとんだおマヌケな悪魔だ。
「いや、ほら、折角願いを叶えられる機会が目の前にあるのだぞ?もっと生産的な願いを言ってみろ」
「ちゃんと生産的じゃないですか。なんたって死体がうまれるんだから」
「それは生産的とは言わない!」
 なぜ自分は悪魔から正論を言われているのだろう。おかしなものだ。これではどちらが人間なのかわからなくなってきそうだ。少しおかしな気分になってきた。
「どれだけ悪魔さんに言われても、自分の願いは変わりません。自分を死なせてください」
「…本当に、それが願いでいいんだな?」
「ええ、問題ありません。後悔もいたしません」
「…わかった。その願い、叶えてやろう」
 そう言うと、悪魔は自分に覆いかぶさり、あたりは一切の闇となった。自分の意識は、そこで途絶えた。



 なんとも酔狂な人間だった。己の欲望のままに生を楽しむことができる手段を与えてやったというのに、それを無碍にしたのだから。この人間が叶えた願いは、到底一人では叶えられないものではなかったのに。わざわざそんな願いを悪魔たるおれにした。本当に不思議なものだ。
 まあいい。とりあえずこの人間の願いは叶えたのだ。二番目の願いをいただくとしよう。さてさて、コイツの願いは、と……。輪廻転生することなく、世界を見届けたい、だぁ?余計わけわからんぞ、コイツ。まさか、死にたいと思っていたのも、この世界に嫌なことがあったからではなく、この世界を見続けたいと望んだからだとでもいうのか?確実にその願いが叶う可能性だって限りなく低いというのに?
 …いや、この二番目の願いが美味であるのは、人間が無意識に願っていることであるからこそのもの。ということは、この人間は意図して願っていたわけではない。となると、この人間は何故かわからんが死にたいと思い、ちょうど目の前に都合よく殺してくれそうな悪魔が現れたから、願いを叶えてもらったと。そういうことになるのか。いやわからん。
 とりあえず、この願いはありがたくいただくとしよう。……うむ、予想通り、いや予想以上に旨い。命は食い飽きたとはいえ、やはり命を天秤にかけたものは限りなく旨い。ここ数百年で一番の味ではないだろうか。
 さて、願いはいただいたことだし、この残ってしまった魂はどうしたものか。今まで願いを叶えた人間は普通に日常生活に戻していたから、日常生活に戻れないコイツの処遇には困ったものだ。せっかくならこの魂も食らってしまってもいいが、対価を既にいただいている以上これ以上コイツからもらうわけにもいかない。放置でもいいが、そうすれば天使どもに連れていかれることは想像に難くなく、それはおれの意に沿わない。
 そうだ。コイツはおれが飼ってしまおう。どうせ捨てられた魂だ。おれが食らう以外で何しようがコイツに文句を言われる筋合いはない。ちょうど話し相手も欲しかったところだ。なんせ人間の願いを食らうようになってから、他の悪魔どもにも敬遠されていつも一人だったからな。わけもわからず死を望んだコイツと、魂を食わないおれ。外れものの二人でちょうどいいではないか。
おい、喜べ人間。これからお前は、おれのしもべだ。せいぜいおれが他の人間どもの願いを食らうさまを共に見続けているがいい。

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