美しく輝く宝石に酔い痴れるよりも、
少し石が残っているくらいの原石の方が、私は好き。
浪漫ってね、どれだけ綺麗か、なんてものじゃないのよ。
私が思うに、「浪漫」と「美しさ」は……
あら、また時間?……なら、…しょうがないね。
ふふっ、…答えは自分で…見つけてみて♪
世界の起源は何の変哲もない欠片なのかも知れない
若くは、大きな宝石の塊、だったり…?なんてね。
兎に角、俺が言いたいのは!
どんな大きな物も、小さな塵から始まるんだ!
俺らだってまだ、塵にも満たない存在だけど……
咲かない花は無い!きっといつかは、
もっと大きなことが成せるはずだよ。
まぁ、落ちない花もないけどね…
いつか散りゆく花だからこそ…儚くて、ほわほわしてるんだ!
……と、取り敢えず!俺が言いたいのは…
いつか咲き、いつか散る。だからこそ美しい。
そして、万物の原初は塵。何事も塵積山成だ!!
…わかった?!………わかんないか……
……これで何回目の“× × ×”だろ。
でもきっと…この物語の終わりはロマンチックな物だ。
…ロマンチックな物で、あって欲しい…。
永遠は無く、時は刹那の花弁に過ぎない。
それでも、この常世は、“常世”であり続ける。
ただ、花咲く季節を待つ樹木のように、強く、儚く。
此の儘、世界が、須臾を受け入れ、永遠に染まらずに。
美しい世界が、変わりゆく美しさが、在り続けますように。
なんて願いは、少し…矛盾してしまうのでしょうか。
私は家の縁側で、少し遠くにある川を見ていた。
「そうかぁ、柚実ももう二十歳か!」
管に繋がれて、少し苦しそうに咳をしながら、
隣に座るおじいちゃんは私にそう言った。
「そうだよ。おじいちゃんの4分の1!」
「はっはっは!まだまだだな!」
豪快に笑い、冗談らしく私にそう笑いかける。
「うん!だからもっと頑張って、
おじいちゃんみたいに優しい人になるね!」
おじいちゃんは少し寂しそうに笑った。
刹那の沈黙が、川に流れる水と共に時に運ばれていく。
「そうかそうか…柚実ももう20か…」
…少し黙っていると、おじいちゃんが口を開いた。
「まだまだこれからだ、ちゃんとがんばんだぞ!」
「うん!」
私はおじいちゃんの言葉に返事をして、自室に戻った。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ほら、柚実!お友達よ〜!」
「あ、はーい!」
母に呼ばれ、私は玄関へ急ぐ。
ドアを開けると、友達の麻由と梨子が立っていた。
「麻由と梨子ー!ひさしぶり〜!」
今日は私の誕生日だ。
成人祝いとして何人で集まって酒を飲もう!と約束していた。
「そっかぁ、もう2人は成人してるのか!」
「そうそう、末っ子はあんただよ!」
「でも末っ子っぽいのは梨子でしょ?」
「えー!なにそれ!」
そんな他愛のない会話をして、部屋に招く。
「あ、そうそう。これ。」
「お饅頭?」
梨子は餡子が嫌いだから、お饅頭なんて食べないはず。
「梨子、お饅頭なんて食べるっけ?」
「いや、これは柚実のおじいちゃんに!」
「えー!ありがと!きっと喜ぶよ!」
「仏壇、どこだっけ?」
「ああ、案内するよ!」
「あ、柚実!私もみかん持ってきた!」
「ええ、ありがとう!」
私は2人をおじいちゃんの部屋に案内した。
「この部屋本当に綺麗だね〜」
「おばあちゃんが片づけしてるからね。」
「すごいねぇ、…あ、これ、仏壇にそのまま置いていいの?」
「いいよ〜!あ、みかんは遺影の横に置いて欲しいな!」
「はいはーい!」
おじいちゃんはお饅頭とみかんが好きだった。
優しくて、あったかかった。
遺影に映るおじいちゃんは痩せてて、
たくさんの管で繋がれてた。
でも、いつもの…ニコニコした、優しい笑顔だった。
「ほんと、柚実のおじいちゃんってやさしいよね。」
「うん。」
「…………よし、お参り完了!」
「麻由はやい!私まだだよ!」
「じゃ、待っててあげる!」
「1番子供っぽいのは麻由じゃん!」
「ふふっ…」
おじいちゃんへ
私ね、今日20歳になったよ。
おじいちゃんに20歳になったところ見せたかったな
友達もみんな優しくて、とってもいい人なの。
おじいちゃんもそっちで、幸せに。
くるしくない呼吸で、晴々した気分で
どうか、安らかに、健やかに。…
-月がこわれちゃった!-
弟によると、
昨日よりも、「月が弓みたいにぎゅーんって!」
とのことらしい。
なるほど、三日月と月の満ち欠けの話だ。
「月が壊れた」と騒ぐ弟に、私は面白がってこう聞いた。
-壊れた月はどこに行くと思う?-
-うーん…-
少し困った顔をして、弟は黙り込んだ。
やはり、まだ幼い弟には難しかったようだ。
-ふふっ、正解は…-
そこまで言ったところで、弟は慌てて私の話を遮った。
-わ、わかったよ!-
-じゃあ…どうしてだと思う?-
私は弟の回答を楽しみにしながら聞いた。
-えーと、えーと…神様が食べちゃったんだ!-
その子供らしい返答に、私は思わず声が出た。
-ふっ…ふふ、そうだね、…神様が食べちゃったのかもね。-
-僕はそう思う!…ほ、ほんとの答えは?-
この問題の答え、か……
“月の形が変わるのは、月が壊れちゃうわけでも、
月を神様が食べちゃうわけでもない。
月が自分自身の変化を受け入れ、太陽との契りの元、
眩い光を浴びることを、厭わなくなったんだ。。”