私は家の縁側で、少し遠くにある川を見ていた。
「そうかぁ、柚実ももう二十歳か!」
管に繋がれて、少し苦しそうに咳をしながら、
隣に座るおじいちゃんは私にそう言った。
「そうだよ。おじいちゃんの4分の1!」
「はっはっは!まだまだだな!」
豪快に笑い、冗談らしく私にそう笑いかける。
「うん!だからもっと頑張って、
おじいちゃんみたいに優しい人になるね!」
おじいちゃんは少し寂しそうに笑った。
刹那の沈黙が、川に流れる水と共に時に運ばれていく。
「そうかそうか…柚実ももう20か…」
…少し黙っていると、おじいちゃんが口を開いた。
「まだまだこれからだ、ちゃんとがんばんだぞ!」
「うん!」
私はおじいちゃんの言葉に返事をして、自室に戻った。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ほら、柚実!お友達よ〜!」
「あ、はーい!」
母に呼ばれ、私は玄関へ急ぐ。
ドアを開けると、友達の麻由と梨子が立っていた。
「麻由と梨子ー!ひさしぶり〜!」
今日は私の誕生日だ。
成人祝いとして何人で集まって酒を飲もう!と約束していた。
「そっかぁ、もう2人は成人してるのか!」
「そうそう、末っ子はあんただよ!」
「でも末っ子っぽいのは梨子でしょ?」
「えー!なにそれ!」
そんな他愛のない会話をして、部屋に招く。
「あ、そうそう。これ。」
「お饅頭?」
梨子は餡子が嫌いだから、お饅頭なんて食べないはず。
「梨子、お饅頭なんて食べるっけ?」
「いや、これは柚実のおじいちゃんに!」
「えー!ありがと!きっと喜ぶよ!」
「仏壇、どこだっけ?」
「ああ、案内するよ!」
「あ、柚実!私もみかん持ってきた!」
「ええ、ありがとう!」
私は2人をおじいちゃんの部屋に案内した。
「この部屋本当に綺麗だね〜」
「おばあちゃんが片づけしてるからね。」
「すごいねぇ、…あ、これ、仏壇にそのまま置いていいの?」
「いいよ〜!あ、みかんは遺影の横に置いて欲しいな!」
「はいはーい!」
おじいちゃんはお饅頭とみかんが好きだった。
優しくて、あったかかった。
遺影に映るおじいちゃんは痩せてて、
たくさんの管で繋がれてた。
でも、いつもの…ニコニコした、優しい笑顔だった。
「ほんと、柚実のおじいちゃんってやさしいよね。」
「うん。」
「…………よし、お参り完了!」
「麻由はやい!私まだだよ!」
「じゃ、待っててあげる!」
「1番子供っぽいのは麻由じゃん!」
「ふふっ…」
おじいちゃんへ
私ね、今日20歳になったよ。
おじいちゃんに20歳になったところ見せたかったな
友達もみんな優しくて、とってもいい人なの。
おじいちゃんもそっちで、幸せに。
くるしくない呼吸で、晴々した気分で
どうか、安らかに、健やかに。…
1/10/2026, 12:34:52 PM