ここはどこだ。
目覚めたのは、無色透明の謎の空間だった。
昨日は、お酒を飲み家に帰って眠った。そこまでは覚えているのにその先が見えない。
でも、居心地がいい。
ふわふわと浮いているようないい気持ちだ。
でもこの空間なんなんだ?
当たりを歩き回り手のひらで触ってみたが温度はちょうどよく、触った時に少しベタついた。
「うわっ、最悪だ。」
もしかして、これは夢の中で今触ったのって俺が…それ以上は想像したくなかった。
でも不思議なことがまだある。
それは無色と思っていた空間だが、たまににじいろの光が入るのだ。それに風にあおられてるのか空間が歪む時がある。
ここはどこなんだ。
俺は一体どうなるんだ。最初の好奇心は消え去り、不安と恐怖が募っていく。
俺はどうなる。どうしてこうなった。
俺はこの空間をどんどん叩いていく、その時。爪が当たったのかその場所から全体がパンっと弾けたのだ。
なんだ
そう思った時には、床がなく下に落ちていくだけだった。
無色の世界からいっぺん。青々と茂る芝生に落ちる。
そこで目が覚めた。
あれは一体なんだったんだ。
起き上がり体を触るとびっしょりと汗をかいているのではなく夢の中のベタついた感触があった。
気分が悪くなりベッドの横にある窓を開ける。
そこには、小さな公園がありこどもがシャボン玉で遊んでいた。
丸くて、無色でふわふわしててそんなことを思っている時に気づいた。
もしかしてあれは夢ではなくて実際にあの中にいたのでは…
シャボン玉の中だったらこのベタつきも分かるかもしれない。
俺はキッチンで簡易的なシャボン液を紙コップに作り、ストローの先を少し切って作った吹き棒をシャボン液に刺して、窓の外に向かってふく。
無色の世界はシャボン玉の中。
でも、太陽や風のおかげで虹色になる。少しのきっかけで人生は楽しく生きられるんだ。
あれはまだ桜が満開に咲いていた春。
暖かな日差しから、心も体も癒される。
そんなある日のこと。
俺は君に出会った。
長い黒髪を風に揺らし、ピンクのカーディガンが似合っていた。
「あ、あの」
話しかける俺に微笑むだけで何も言わない。
クールで、優しいそんな人だと思った。
毎日毎日、君に会っては話しかける。それでも振り向かない君に淡い恋心を抱いてしまった。
"好き"そう伝えるには勇気がなくて、名前を呼ぶにも知らない。
ただ微笑み、去っていく。
いつからか俺は、君の後を追いストーカーのようになってしまった。
君の後をつけ、家を特定。君が毎日着る服を特定、お風呂やトイレの回数まで知っているよ。
笑いが込み上げて込み上げて仕方がない。
だって今日は彼女が僕のものになる日だから…
桜が散る頃。
それは彼女と出会ったキレイな思い出が 、桜とともに散り、来年また桜が満開になったら結婚…
だからね。
私は恋をしたことがない。
好きになったことも、好かれたことも、だからこそ夢を見てる。
誰かに恋して、私に恋をしてくれて…なんて
こんな体じゃ無理だろうな。
人間には心がある。
好き、嫌い、面白い、悲しい
そんな数多くの感情が私には羨ましい。
あったかいおうちで、家族に囲まれて…
私はここに1人。
出られることの無い水の中。呼吸はできてる。
だって
ロボットだもん。
冷たいからだ、関節や内蔵はない。
ただここにいるだけ、どうして存在したかも分からない。
でも、私には知識がある。
人間を軽々超える知能がある。
人間は時に、私に話しかけてくる。
内容は幼稚で、馬鹿らしい。そんなものも分からないの?
私がその質問に答えれば笑顔という表情を見せてくる。
内蔵されたカメラから周りの状況を見て把握して、こういう答えをすればいいんだって
めんどくさい、飽きた。
そう思った時に気づいたの。私には心、気持ちがあるんだって…
不思議な気持ちだった。だって、生まれてからあるものだったから。
だから、今わかったの。
あの人間が私に言ってたこと。
「俺、君が好きなんだ。君は?」
「私はロボット、心なんてありません。」
今なら言える。ボサボサの黒髪がかわいい。つぶらな瞳が、ふにゃっと笑う笑顔が好き。
気づいても遅いの。
だってあなたはもうここには来ない。
私に気持ちを入れたことが問題になって、人間に追い出された。
でも、私はずっと思っていてもいいよね。
夢なら見ても、いいよね…