モンブラコン*
ミニ~~~~~~~~~~~『、、逃げる、、、』
「まちゃ~がれぇぇぇいクショボーズぅぅぅ」
姉さんに追われています現在。
はい、モンスター姉弟末っ子です。
只今テイちゃん(兄)に抱えられ、山から山へと、ビュンビュンと、すっ飛び逃げております。
ああ、先程ですね私、二階の書斎で小さな椅子に乗って本棚の上の方の本を取ろうとしましたら、バランス崩しまして、そしたら外で水やりしてたテイちゃんが、書斎の隣の部屋の開いてる窓から入って助けてくれまして♡その時ですね、ほんの少し、ほんのすこぅし、私とテイちゃんの唇が当たりましてですね♡はい。
で、もうニヤけ止まんなくなっちゃいまして、下の階でホイップクリームしゃぶってた姉さんが、いつもは微塵も空気読まない姉さんが、感付いたらしくって、キレました(笑)。
姉さんのキレ方がいつもと違い、私の足では速攻追い付かれる、と判断したテイちゃんが私を抱えて逃げることになりました☆。
はぁ♡幸せホルモン出まくり♡はぁ♡
「オラぬテイちゃんぬくつぶるをぉぅぉお!」
「めぇにしゃ~あ~、しゅいじょっ館にしゃ~あ~行た時ぬ買た、ウメウシゅのぉ…」
衣替え完了後の“冬物お休み”作業中の我が家。
がさばる物は圧縮袋に入れて、タンス内の防虫剤は新しい物に取り替えて、ってやってるオレとテイちゃん(兄であり、弟)の横で、姉さんが、ある半袖を探している。
「おしょろでしゃんめい買たやん」
水族館に行った時に買った、ウミウシTシャツ…姉弟三人お揃いで買った三枚のウミウシTシャツが見当たらないと、タンスを漁っている姉さん。
散らかす姉さんと、それを嫌な顔一つせず、探しやすい様に畳に並べ、整えていくテイちゃん。
「あ、その長袖着ないじゃん、捨てたら?」
「いちゅか着るび」
「一年着ない物は一生着ないよ~…」
「着るわ」
捨てられないタイプである。しかも長命なモンスター。しっかり者のテイちゃんがいなけりゃ、我が家はモンスターゴミ屋敷と化すでしょう。
一人占領五段タンスの衣服が全て畳に並べられ、首を傾げる姉さんと、綺麗に空になったタンスに防虫シートを敷くテイちゃん。
「見つからないね、ウミウシTシャツ」
「オラ、たすかぬこごさ、すまったど…?」
悩む姉さんは置いといて、こっちも整頓しないとな……って、ん?
オレのタンスの奥に、キラキラの袋に入った、
「ウミウシTシャツ…」
「あるやん♡でかすた☆クショボーズ!」
入れた記憶は無い、ということはテイちゃん?
イタズラな笑みを浮かべたテイちゃんは、一休みのオヤツの準備を始めた。
モンブラコン*
~~~~~~~~~~~~~『月に願いを』
「クショボーズば、早よ寝ろぉ」
そう言って、夜の山へと出勤した姉と兄。
モンスターである彼らは夜勤です。
まぁ、オレも一応その末っ子なんだけど、学生なもんで、学業優先なもんで。
仕事内容は野生動物から畑を守る事。と、ゾンビ熊討伐…だけど、コレを出すとこの物語の主軸である“田舎の怪物のスローライフ”が屈折しかねないので、コレは伏せよう。目指せ牧場○語。
満月の夜ってゾンビも動物も狂暴になるって、姉さん言ってた様な…。
…眠れない。
薄暗い居間で、テレビをつける。深夜アニメがやってる、子供には観て欲しくない系の、汚い言葉と派手なバトル。実は苦手だ。
人のキズつけ方を見せられてる様で。
オレ達姉弟には、人間の倍の再生能力があって、痛覚も鈍いけど、だからといって無謀な行動をしようとは考えたことは無い。
でも、姉さん達はどうだろう。強いのは解ってるけど、かすり傷だってイヤだよ。
磨りガラスに、ぼんやり浮かぶ月に願う…。
「わしゅれもんっわしゅれもんっっ」
その磨りガラス窓を盛大に開けて、姉が上半身を乗り出し、引き出しから卵形の玩具を掴み、
「ちゃまごっつがな、もうしゅぐすんかするで」
…と言って、月明かりに照らされながら、山に跳んでった。
「……またオヤジっちだろ」
モンブラコン*
番外編~~~~~~~『逃れられない呪縛』
目が覚めたら、小さなオナゴが、体にしがみついていた。
両手、両足、尻尾で、それはそれはガッチリと。
少しでも動かそうものなら、力が入り、体のなかで木の枝でも折れた様な音がした。
重い重い鈍痛。息も…おや?呼吸せんでもええらしい、この身体。
オラの頭は空っぽだった、自分が誰だか解らない。
こんな状況にも、妙に焦りがなくて。
オナゴを振り払う気になれんくて。振り払えば解放されるが、オナゴを傷つけてまう、それだけは絶対に有り得んくて。
このオナゴが異様にかわええ、のもあるんでが、オナゴはずっと怯えて震えてて、なぜかオラと離れることが嫌な様で。
そうだ、オナゴを安心させねば。
「……っ…」
息に、音が、乗らない。
発声の仕方は知っているんに、喉が鳴らない。
これには参った。
何せ、手足を動かせない状態で…尻尾!オラの尻尾……も、動かせん。撫でてやることも出来ん…参った。
安心させてやりたいんに。
微かに動かせる指で、オナゴを僅かに擦る。
何日も…何ヵ月も…おそらく山ん中、岩穴ん中で。
いつしか腕だけ動かせる様になって、オナゴの頭を撫でることが出来た。
その次は両手、オナゴを抱き締めることが出来た。
やっと全身解放された。
オラがどこにも行かないかと、オナゴはジィと見つめているもんで、オナゴを抱き上げてみた。
「ふへへっ」
初めてオナゴの声を聴いた。
それを、ずっと聴きたかった気がすた。
モンブラコン*
~~~~~~~~~~~~『理想のあなた』
「ほら姉さん、テイちゃんがフルトッピングのチョコチュロス全種類買ってくれたよ~、機嫌直してよ~」
オレ達怪物3姉弟、本日は遊園地に来ているというのに、一人ヘソを曲げた姉は、メリーゴーランドで、馬にも乗らず、回転床で仁王立ちになり、明るい音楽と共にクルクル回っている。
事の発端は15分前、お化け屋敷にて、100%妖怪人間の姉さん達が、自称お化け☆100%人間への反応に困惑する中、5%人間のオレがマジで怖がり、テイちゃん(兄)に抱きついた為、姉さんが“女子の反応”先越された!…と、ワケわからん理由でキレて、今に至る。
「う~わ…シャクレてる…長引くぞ、アレ」
せっかく遊園地に来たのにね、と、ため息混じりで隣のテイちゃんを見ると、姉さんに向けてチュロスを振りながら、笑いを堪えていた。
『あの顔、面白くない?』
「怒られるよ、テイちゃん…」
テイちゃんは姉さんの激しい気性に全く動じない、数百年の付き合いだからか、余裕である。
「姉さんて、昔から、ああだったの?」
テイちゃんはゆっくり首を振ってから、
『姉弟になった時、姉さんは、笑えなかった、怒れなかった、全てが恐怖でしかなかった、心がボロボロで、かわいそうだったよ』
姉さんとテイちゃんは、前世で恋人同士だったんだけど、正確にいうと、生まれ変わったのはテイちゃんだけで、姉さんは再生しただけ、つまり姉さんは覚えてたんだよね、小さな身体では到底耐えられない記憶を。
『だからね、今の姉さん見てると幸せなんだ』
生まれ変わって記憶のないテイちゃんが、発狂状態の姉さんを治療して、村の復興までやり遂げた。
『姉さんに、人並みの生活をさせるのが理想だったんだ』と、ジェスチャーで語るテイちゃん。
オレはまた、ため息が出た。
「こにょこにょテイちゃんこにょ~♡」
いつの間にか姉さんが、テイちゃんの腰に抱き付き、オデコでくすぐっていた。
「アイスも食べますか?お姉様?」
「うむ♡チョロチョロにちょかすてぇ♪︎チュロスとテイちゃんにぬるぬるすでぇ~ペロペロしゅるっ♡」
「……くっ!!!」