モンブラコン*
番外編~~~~~~~『逃れられない呪縛』
目が覚めたら、小さなオナゴが、体にしがみついていた。
両手、両足、尻尾で、それはそれはガッチリと。
少しでも動かそうものなら、力が入り、体のなかで木の枝でも折れた様な音がした。
重い重い鈍痛。息も…おや?呼吸せんでもええらしい、この身体。
オラの頭は空っぽだった、自分が誰だか解らない。
こんな状況にも、妙に焦りがなくて。
オナゴを振り払う気になれんくて。振り払えば解放されるが、オナゴを傷つけてまう、それだけは絶対に有り得んくて。
このオナゴが異様にかわええ、のもあるんでが、オナゴはずっと怯えて震えてて、なぜかオラと離れることが嫌な様で。
そうだ、オナゴを安心させねば。
「……っ…」
息に、音が、乗らない。
発声の仕方は知っているんに、喉が鳴らない。
これには参った。
何せ、手足を動かせない状態で…尻尾!オラの尻尾……も、動かせん。撫でてやることも出来ん…参った。
安心させてやりたいんに。
微かに動かせる指で、オナゴを僅かに擦る。
何日も…何ヵ月も…おそらく山ん中、岩穴ん中で。
いつしか腕だけ動かせる様になって、オナゴの頭を撫でることが出来た。
その次は両手、オナゴを抱き締めることが出来た。
やっと全身解放された。
オラがどこにも行かないかと、オナゴはジィと見つめているもんで、オナゴを抱き上げてみた。
「ふへへっ」
初めてオナゴの声を聴いた。
それを、ずっと聴きたかった気がすた。
5/24/2023, 8:59:17 AM