モンブラコン*
~~~~~~~~~~~~~『恋物語』
…中身が魚の足だから、立ち上がれない。
…喉も魚だから、喋れない。
…心が空っぽだから、意思がない。
…よって失敗作だから、棄てられた。
…腕が動くから、前に進む。意味はない。
…毛むくじゃらの動く物に、足を食べられた。
足はすぐに元に戻った。
…キモチワルイ。
…肌色の動く物に、触られた。
…キモチワルイ。
…無数の小さな動く物に、噛まれた。
…キモチワルイ。
…毛むくじゃらに食べられていたら、
…紫色の目の、肌色の動く物に、
抱き上げられた。景色が速く動いた。
…キモチガイイ。
…体がキレイになった。
…食べられない場所にいる。
…紫の目の、動く物が傍にいる。
…キモチガイイ。
…紫の目の者を噛んでみた。
甘い味がした。
…紫の目の者に、頭を、触られた。
…キモチガイイ。
…紫の目の者には、どこを触られても、
…キモチガイイ。
「姉さん、寝言、怖いんだけど~」
縁側で、膝枕係のテイちゃんが、お昼寝姉さんを撫でながら、微笑んでいる。
モンブラコン*
~~~~~~~『愛があれば何でも出来る?』
「……よくある曖昧過ぎる問いかけを、何とか分かりやすく解説してくれ…という訳だな…」
「心読まれたぁ~♪︎」
クラスメイトの8ピアス助六(あだ名)は、
いわゆる霊能力者である。
「…とゆうか、すでにある“愛”を、あれば、と言っている時点で、人生を苦労されている方の問いかけ…とお見受けする…」
「すでにあんのか…へぇ…」
「なければ世界は全消滅」
「待って、世界規模にしないで、ほら、ラブだよラブ♡感情?的なやつ♪︎」
「感情…原動力として考えるなら…“何でも出来る”は可能…だけど、その“出来る”状態に持っていくには、常識、善悪、固定観念を崩す必要があり、普通の人には不可能。」
「…結局不可能じゃんすか」
「不可能を可能にするのが“愛”じゃんすか?
もし、人生シナリオの中に“愛があったから何でも出来た”という体験が組み込まれていれば、
“愛があれば何でも出来る”が可能である、と認識されるだろうし、逆も有りで。どっちでも良いんだよ。…門君は、何でも出来る方だよね…」
「また読まれたぁ」
「あっ!!!」
「何!?」
「今、門君の家で…お兄さんにお姉さんが…」
「めっちゃエロい事してんでしょ、何で毎回そのシーンを透視するんだよ!!」
モンブラコン*
~~~~~~~~『おうち時間でやりたいこと』
今日はあいにくの雨ってやつである。
根性のある村人が、通販で購入したらしい日傘兼用のお洒落傘片手に散歩をしていたが、思ったより重かったらしく、ウチの前を、渋い顔と駆け足で通りすぎて行った。
「今日~チェレビちゅまんねぇ~」
弟(兄)の太ももに胸を乗せて、テレビ番組雑誌を見ていた姉が、グルンと寝返り、太ももを枕に変えた。メープル濡れ煎餅を食いながら。
「DVD借りたのなかったっけ?」
…ないわ。昨日返却したわ。登校ついでだったから借りて来なかったわ。
オレ達姉弟が住んでいるのは、山奥の超秘境村である。お店のある街まで車でおよそ三時間。
…まぁテイちゃん(兄)と姉なら、ひとっ飛び三秒なんだけど、…あいにくの肌寒い雨である。
♪︎ピ~ロピ~ロピ~…♪︎♪︎
全自動洗濯乾燥が完了した音、姉さんの最愛の膝枕は座布団に退化。
姉さんが無表情になる。
噛み砕かれた煎餅を飲み込む音が響く。
廊下を挟んで隣の広い畳の部屋に、乾きたての洗濯物をひろげるテイちゃん、コチラに背中を向けて、黙々と洗濯物を畳み始めた。
手伝おうと立ち上がったオレの足元で、姉さんが獲物を狙う肉食動物の様に体制を低くした四つん這いで、テイちゃんに近付いて行く…、
「なな何してんっ…姉さん??」
奇行が平常の姉である、そしてそれを理解している兄である。み、見守るか。
飛びかかる姉さん、角度90度で避けたテイちゃん、畳みかけの洗濯物に飛び込む形となった姉さんが、わしゃわしゃと服の山をかき集め、
「ぬ…ぬくてぇー!!!をぃクショボーズっおみゃあも来たれぃっこりはええどっ♡」
温かい洗濯物にテンション急上昇のご様子。
少し躊躇うオレの方に『おいで~』と、手を広げるテイちゃん♡
行きま~す♡で抱き付くと、軽く抱えられ洗濯物に押し倒された♡テイちゃんがオレの上に♡
やば~い♡何コレ♡やば…!ひぃっ!!
姉さんがパンツの股ん所から睨んでいる。そして洗濯物を纏った姉さんが、オレとテイちゃんの間にグリグリと入ってきたぁ。
乾いた洗濯物でじゃれ合う、
モンスター姉弟の休日でした。
モンブラコン*
~~~~~~~~『君と出逢ってから、私は…』
「ただいまぁーっ」
暑い日、帰宅したらまず、カバンを玄関に置き、服を脱ぎながら家の裏に回り、お風呂場の窓(古いので大きい)から、丸めた服を脱衣場の洗濯カゴに投げ入れながら体を湯船へダイブ!
バシャーン…。
「おぎょうげわれぃなぁクショボーズ…」
ビックチョコパイを食いながらトイレから出てきた姉が、文句を言いながら脱衣場の扉を閉めた。トイレで食べる人に言われたくねぇ。
お湯の温度はぬるめで、汗だくのほてった身体に丁度良い。テイちゃん(兄)が、気温と湿度から的確な温度で用意してくれていたのである。
お風呂場の壁には、水を入れるとクルクル回る玩具が貼り付いている、未だに姉さんが遊ぶからあるんだけど、元々は幼かったオレに買ってくれた物だ。
オレは2歳で終わるはずだった。
姉と兄に救われ、
有り得なかった時間を貰った。
それだけじゃない、テイちゃん達は、オレが普通だったら何を経験するかを考え、他の子と同じ様に学校に通わせてくれたり、遊園地や動物園に連れてってくれたり、色んな玩具を買ってくれたり、思い付く限りの事をしてくれた。
「これ入れるん?」
姉さんが、ボール型の入浴剤を持って来た。
オレの手のひらでブクブクと泡を出して溶け、中から…エビフライの玩具が出てきた。
「ちっレアぬチョゴフライでねぇのか…」
捨て台詞とエビフライを残して、姉さんは風呂場から出ていった。レアはチョコの天ぷらか…。
数秒後、今度はテイちゃんが入って来て、つま楊枝にさした一口サイズの林檎を6個、『あーん』の顔♡しながらオレの口に入れ、笑顔で出ていった。楽しい♡
と、まぁ若干過剰な愛情を頂きながらも、ここまで生かして貰ったオレ、
怪物姉弟末っ子である。
もし人間で、今より幸せで良い生活出来たとしても、姉さんとテイちゃんを選ぶよ。
玩具なくても、選ぶよ。
モンブラコン*
~~~~~~~~~~~~~『カラフル』
オレ、モンスター姉弟末っ子。只今読書中。
我が家の二階には一部屋、小さな図書館があって
、何か調べ物をする時はここを頼るのだが、肝心の、何を調べるつもりだったのか、小さい頃に読んだ童話集を見つけたおかげで、忘れた。
「…ぬじえろの♪︎ずえりぃ~~♪︎」
下の階で姉さんの甲高い歌が聴こえる…。
急に、バラバラバラー!!と、
何かビー玉でも落とした音がした。
同時に姉さんの歌が止む。
見に行ってみると、こないだ駄菓子屋で買ったカラフルな飴玉が、廊下に散らばっていた。
変な風に開けたらしい飴の袋が、台所の椅子に置いてあり、暗い顔した姉さんが、下唇を噛みながら、小脇に抱えたボールに、落ちた飴を集めている。
「…テイちゃん(兄)は?」
「テイちゃん(弟)けいらんばん、ジジィんとご」
気の回るテイちゃんがいたら防げた事態だ。
いや、オレが横着な姉さんをサポート出来ていれば…。
食べ物(主に甘い物)に敬意を持っている姉さん、食べ物を落とした、というだけの事で相当しょげている。
いつも賑やかテンションの姉さんがそんな調子だと、オレまで暗くなりそうだ。
「大丈夫だよ、水でサッと洗えば良いんだよ」
と言ったら、姉の顔はみるみる明るくなり、
「お…おぬし!やぱ、あちゃまええのぅ!」
絶賛されました。
数メートルの廊下を並んで飴拾い。
「色とりどりの飴が廊下に反射して綺麗だねぇ」
「んだ♪︎」
さっき、何を調べようとしたんだっけ…でも、
いつもの姉さんの歌が戻ってきたから、
まぁ良いか♪︎