紅月 琥珀

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4/9/2025, 11:40:26 AM

 節目節目で思い出す。一番幸せだった日々と、共に過ごした君の事。

 ずっと一緒にいられたら良かったって、苦しい時も悲しい時によく思ってた。
 嬉しい事と楽しい事は1番に君に伝えたくて、辛い時は側にいて欲しい。
 そんな君は遠く、遠くの知らない場所へ。
 嫌だと言う私に困ったように笑う君。子供の私と大人な君。
 正反対の私達。だけど君の隣は心地良くて、その声は安心する。だから離れたくなかったけど、仕方がないと君は言う。
 納得するしか無くてとても長い時間をかけて、何とか自分の心を納得させた。
 それでもやっぱり思い出す。

 いつまでも、いつまでも。
 君といた時間が1番幸せだったんだって、思い知らされる。
 伝えたい事はたくさん。
 聞きたい事もたくさん。
 でも、最初に言うのはきっと―――お元気ですか? だと思う。

 今も大好きで大切な君。
 お元気ですか?
 君は今、幸せでしょうか?
 君の優しい笑顔を思い浮かべながら、私は記憶の中の君に⋯⋯これからも同じ様に問い続けるのでしょう。


4/8/2025, 2:17:08 PM

 深く深く沈んでいく。
 暗くて綺麗なソラの中。
 私は遠いあの日の約束を思い出す。

 風の強い日だった。
 花が咲き乱れる丘の上で、あなたと一緒に聞いたラジオが歌うメロディーを口ずさみながら⋯⋯いつかの夢を見る。
 あのソラの向こう側へ―――大人になったら旅に出ようと。
 同じ曜日にこの丘で。何も言わなくても2人、示し合わせたように会いに行った。
 きっとこれからも続くと思ってた。変わらない幸せな夢。それを見続けられるんだと疑う事すら知らない⋯⋯あの日の私は無垢な子供だったのだろう。

 いつの日か、彼は来なくなった。
 来る日も来る日も彼を待ち、花が枯れ冬が来ても、彼が訪れる事は無かった。
 それでも私の胸の中。2人の約束が燻るから、その灯りが消えないように―――必死に勉学に励み夢を掴んだ。
 そうして訪れた約束のソラ。私達の船が進む中で、彼の痕跡を見つける。
 やっぱり彼も約束を覚えていたんだ!
 私は嬉しくて早く彼に会いたくて、彼の痕跡を辿り必死に捜した。
 けれど、見つけた彼は―――彼等は息絶えていた。
 地上への激突で破壊された船の残骸と沢山の死体。
 衝撃とは思えない変な傷のある船の一部。血まみれの船内。
 何とか中を捜査して見つけた彼の日記と、そこに記された書き殴られた文字。

 この胸に燻ぶっていた約束の灯火は消え、私はもう⋯⋯カエル事はないでしょう。
 あなたと結んだ約束は、このソラで解けてしまったから。
 どうかあなたと共に“2人のソラ”で、新たに旅立つ事を―――許してください。

 深く深く沈んでいく。
 暗くて綺麗なソラの中。
 私は“あなた”と一緒に、今日もソラを漂って(たびして)いく。

4/8/2025, 1:51:29 AM

 咲いて、散って。
 生を謳歌する命はまるで花のようだと、遠い昔あの人が言っていた。
 その日の私は、彼の人の言葉の意味を理解できなかった。

 余年幾許もないこの身になってから、よく昔の事を思い出す。
 遠い昔、まだ私が幼い頃の事だとか。あの人と結婚した時の事だとか。
 子供がひとりだちした時の事を、思い出した時もあった。
 それらは未だ鮮明で、まるで昨日の事の様に思い出せた事に驚きを隠せなかった。
 そうして余生を思い出と共に過ごそうと、そう思って様々な事を思い出している内に⋯⋯あの人が言っていた言葉を思い出したのだ。

 生とは花のようだ、と。

 あの日の私にはよく分からなかったけれど⋯⋯今思えば確かにと納得のいく言葉だった。
 思い出や経験はまるで蕾の様に、ある日ふとした瞬間に花ひらくのだと、この歳になってようやく理解する。
 色とりどりの思い出や経験達。
 歳を重ねれば重ねるほどに美しく咲き誇り⋯⋯そして―――死の瞬間に散華していくのでしょう。

4/6/2025, 12:59:44 PM

 小さな希望と大きな不安を持って出た旅路だった。
 長年の夢が叶う嬉しさと、未開拓の宇宙(そら)へ踏み入る不安を胸に⋯⋯私達は飛び立つ。
 広大な宇宙の旅は母星で習った事なんて殆ど役に立たず、手探りの毎日で⋯⋯辛いこともあったけど、それでも皆で力を合わせて何とかやっている。

 沢山の惑星を見てきた。
 それこそ木星のような重力の強い惑星だとか、地球に似た環境の惑星等。宇宙船から無人機を飛ばして調べて、降りれそうな場所には降り立って直接調査したこともある。
 決して楽しいだけの旅路では無かった。けれど、苦しく辛いだけの道のりでも無い。
 不安は今もこの胸に燻ぶっているけど、それと同じくらい―――これからの旅路に期待もしていた。

 未開拓の銀河。数多の惑星。
 それらを私達の手で記録し、母星に送る。
 まるで地図を作るように、少しずつ⋯⋯でも正確に。どんな些細な事でも、記録していく。

 遠く⋯⋯遠く⋯⋯遥かな宇宙(そら)で、未開の銀河の地図を作る。
 幼い頃の夢の欠片と、現在遂行している大切な仕事。
 楽しいばかりでは無くても、充実した日々に⋯⋯今日も感謝しながら眠りにつくのだった。


4/5/2025, 4:39:38 PM

 好きだと言った 貴方の瞳
 宝石みたいにキラキラしてる
 ティールブルーのトルマリンみたい

 好きだと言った 貴方の瞳
 宝石みたいにキラキラしてた
 光を透過するエメラルドみたい

 好きだよと言いながら
 手を伸ばす その瞳に
 傷付けないように くるり
 取り出したモノ 手のひらに

 暖かで不思議な感触と赤色
 しつこい赤を落として
 ホルマリンで満たしたビンに詰めた

 好き、好き、大好き⋯⋯
 大切な人達の持っていた
 キラキラと輝く宝石達
 なくならないように
 なくさないように
 お気に入りのビンを抱き締めて
 今日もまた“好き”を捜していく


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