紅月 琥珀

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 深く深く沈んでいく。
 暗くて綺麗なソラの中。
 私は遠いあの日の約束を思い出す。

 風の強い日だった。
 花が咲き乱れる丘の上で、あなたと一緒に聞いたラジオが歌うメロディーを口ずさみながら⋯⋯いつかの夢を見る。
 あのソラの向こう側へ―――大人になったら旅に出ようと。
 同じ曜日にこの丘で。何も言わなくても2人、示し合わせたように会いに行った。
 きっとこれからも続くと思ってた。変わらない幸せな夢。それを見続けられるんだと疑う事すら知らない⋯⋯あの日の私は無垢な子供だったのだろう。

 いつの日か、彼は来なくなった。
 来る日も来る日も彼を待ち、花が枯れ冬が来ても、彼が訪れる事は無かった。
 それでも私の胸の中。2人の約束が燻るから、その灯りが消えないように―――必死に勉学に励み夢を掴んだ。
 そうして訪れた約束のソラ。私達の船が進む中で、彼の痕跡を見つける。
 やっぱり彼も約束を覚えていたんだ!
 私は嬉しくて早く彼に会いたくて、彼の痕跡を辿り必死に捜した。
 けれど、見つけた彼は―――彼等は息絶えていた。
 地上への激突で破壊された船の残骸と沢山の死体。
 衝撃とは思えない変な傷のある船の一部。血まみれの船内。
 何とか中を捜査して見つけた彼の日記と、そこに記された書き殴られた文字。

 この胸に燻ぶっていた約束の灯火は消え、私はもう⋯⋯カエル事はないでしょう。
 あなたと結んだ約束は、このソラで解けてしまったから。
 どうかあなたと共に“2人のソラ”で、新たに旅立つ事を―――許してください。

 深く深く沈んでいく。
 暗くて綺麗なソラの中。
 私は“あなた”と一緒に、今日もソラを漂って(たびして)いく。

4/8/2025, 2:17:08 PM