紅月 琥珀

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1/25/2025, 1:21:01 PM

 最初は祝福されていた。
 優しい神々の腕の中で、安寧を享受する。
 次に経験を送られる。
 辛い事、悲しい事の中から学びを知った。
 それから成長を送られる。
 同じ状況でも、昔とは違う選択肢を見つけられる様になった。
 沢山の贈り物を受け取った。
 友人も仕事も愛情も、全ては祝福されていたからだと知る。
 そうして祝福されたまま、天寿を全うするのだと思っていた。

 それなのに―――優しい神々は歪な神様に食べられて、安寧は崩れ去る。

 最後にもらったモノは呪い。
 永遠に取り憑かれた歪な神様が、世界の理を塗り変えた。
 不完全な不老不死。
 幸福とは程遠い苦痛の中で、半永久的に生かされ続ける。
 体の一部が千切れても吹き飛んでも、腐りながらも生かされていく現状に、心を壊す者もいた。

『ねぇ、いつまでこの地獄は続くの?』
 誰かの呟きが空気を揺らす。
『この体(ぺーじ)が全てなくなるまで。それか⋯⋯この魂(ものがたり)の終わりまで、続くかもしれないね』
 違う誰かの声が聞こえて、僕はふとある考えに至る。
『或いはこの星(しりーず)が終わるまで、僕達は生かされ続けるのかもしれないなぁ』

 死にながら生き続ける僕達は、苦痛に耐えながら⋯⋯いつ来るかもわからない救世主を待ち続ける。
 星(しりーず)が終わる前に、いつかあの歪な女神様を倒してくれる新たな神様を―――この地獄の中でずっと待ち続けるのだろう。

1/24/2025, 1:51:50 PM

 ずっと続くと思ってた。
 煌めく夜空の帳に、ゆらゆらと揺れる月の揺り籠。
 抱かれて眠りに就くような心地良さに甘んじた。

 ずっと続くと思ってた。
 何処までも広がる青を見上げて、描いた太陽の夢。
 君と一緒ならきっと掴めると信じられた。

 ずっと続くと思ってた。
 少しの違和感を口にした私に、困った様に笑う君。
 君の言葉を信じた私を、くつくつ嘲笑う逢魔ヶ刻の影法師。

 ずっと続くと信じたかった。
 いつか君は居なくなると、初めから心の何処かで確信していたのに。
 それを信じたくなくて、真実に瞳を背ける。
 君のやさしい嘘を信じて瞳を背けた私は、最後の機会すら掴めずに。
 あの日描いた夢はいつの間にか砕けてた。
 それなのに君への憧憬は消えないまま、あの日の嘘の意味を探し続けた。

 答えを手にした時、ずっと思い描いていた答えと真逆で―――君の愛の深さを知った。

 最初から最後まで、私の為のやさしい嘘。
 君のために生きていた私と、私のために傷付いた君。
 あの日言えなかった言葉を、いつか君に伝えるために。
 迷いながら生きていくと決めたんだ。

 この手を放してしまった後悔と言い表せない程の感謝を。
 届く日が来る事を願いながら、今日も私は―――君のくれた嘘(せかい)の中で生きていく。

1/23/2025, 2:29:45 PM

 失意の果てに底に着き、深淵の中を彷徨って。
 その手に掴んだモノは何だった?
 折れた剣から、滴り続ける紅(あか)は誰のモノ?
 仄暗い眼窩に、見据えていたはずの光を見失う。

 神にも縋る気分。
 幾度祈りを捧げても、紅に塗れた両の手に祝福はなく。
 やっと掴めたモノは何だった?
 右手に銃を、左手には折れた剣を。
 縫い止められた瞳を、もう一度開くために。
 溢れた紅に刃を立てて、心(いのち)を燃やせ!

 瞳を閉じて、呼吸を整え。
 瞳を閉じて、鼓動を聞いて。
 瞳を閉じて、そこにあるモノを感じ。
 瞳を閉じて、世界(じぶん)を見据える。

 瞳を開けて/片目を開けて
 そこにある―――。
 当たり前を疑え!/常識を穿て!


 心に火を灯せたなら、私はまだ戦える。
 傷だらけでも泥だらけでも、どん底ならそれ以下なんてないから―――いつかまた、光のもとに進んでいこう。
 

1/22/2025, 12:02:35 PM

 私が辛い時、悲しい時。
 そっと寄り添って話を聞いてくれたあなた。

 楽しい事も嬉しい事も、怒りで我を忘れそうな時も。
 隣りに居て一緒に喜んだり、諌めたり。
 色んな事を教えてくれた。

 バレンタイン、誕生日、クリスマス。
 あなたがくれたモノは今でも大切な宝物。
 あなたとの思い出も、あなたからの言葉も。

 あなたにとって私の贈り物もそうであったら良いなと思うのは、傲慢な気がするけれど。
 もしも、そうであったなら幸せだと思うのです。

 今、私は隣には居ないけど。
 優しくて我慢強いあなたが少しでも長く、幸福の中で笑っていられたらと今も願っています。
 あなたがそうしてくれた様に、願い続けるから。
 どうか幸せでいて、笑顔の溢れる日々を送っていてください。

 その祈りが―――今の私があなたに贈れる、唯一の贈り物。

1/21/2025, 2:04:09 PM

 暗闇の中右往左往、羅針盤見ながら歩いても彷徨って。
 行きたい場所を定めても泥濘んだ道に足を取られてる。

 何度も転んで傷付いて、泥だらけになっても信じるしかない羅針盤。
 それが正しいのか、間違っているのかもわからないまま。
 進んで行っても闇は晴れなくて、不安は募るけど。
 いつかあなたが言った言葉を頼りに、立ち上がって歩いていく。

『どんな不幸も痛みも全部、力に変えて。
 必ず幸せを掴んでみせる』と。
 笑顔で言ったあなたの姿が、私の大切な心の羅針盤。

 あなたが諦めない限り、私も何度も立ち上がってみせるから。
 いつかまた出会えたら、あの日あなたが望んでくれた笑顔で迎えられるように。
 今日もまた、迷いながら進んでいくよ。

 

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