今日の分は少なめです
今週もいよいよ折り返しですね
休める時に休んで、残りも頑張りましょう
愛から恋を引いたら何が残るのでしょう
人を好きというものが恋として存在するのなら、それを引いてしまったら何も残らないし、愛にも様々な形があるので、確実にこうなるという答えはありません
「…にしても、まさかあんなことに巻き込まれるとは思わなかったなぁ。
でもおかげで面白い体験ができたし、他の子と触れ合うことができたのは良かったのかもね〜」
「こっちに戻ってから異形化が起きたのはちょっと大変だったけど、3人分の異形化の性質を持って帰ったんだから当然こうなるよね〜。」
アンソニーの背中からは一対の黒い翼が生えており、その翼と頭には大量の目がついていた
身体はひび割れと縫い目が蔓延っていた
胸には一回り大きな目がついていた
「あ、でも人前に出ることは滅多にないだろうから、別に異形化しても問題ないんだった。
それに、異世界に干渉できる能力がついたみたい。」
アンソニーはどこからともなく梨を取り出し、頬張った
「これ、結構美味しいな〜」
『こちらです。2人ともついて来てください。』
ジーニーについて行った先には全身ひび割れで、黒い液を流して俯いている少年…?が居た
テトラは見覚えのあるその少年…?に問いかける
「もしかして…兄さん?」
〈…?〉
彼は顔を上げる
黒い液が顔中を覆っていた
[姿はそっくりだけど、僕が以前見かけた時はこんな姿じゃなかった]
「でも、この人は兄さんだよ。僕、そんな気がるんだ。」
少年はテトラに近付く
〈…テトら゙ぁ、其処ニィ…居るノ?〉
「兄さん!僕だよ、テトラだよ!こコに居るヨ!」
[ちょ、ちょっと…
ジーニーだったよね?テトラもなんか変になってきてるよ]
『ここに長く居ると、こうやって異形の姿に変わるんですよ。かくいう私も、その異形なんですけどね。今はまともに話せていますが、しばらくすればネビルのような話し方に戻りますし、姿も変わってしまいます。貴方は異形化の影響を受けていないようですがね』
[僕もこのままだと彼等みたいになるってこと?]
『いいえ、貴方はそもそも異形化しない体質のようですね。心当たりがあるのでは?』
[…無いって言ったら嘘になっちゃうね。]
〈……やっト落ち着いてきたカも〉
流れ出ていた黒い液がおさまり、顔についてた液も落ちた
「やっパり、ネビル兄さんだったヨ」
〈あれ?テトラ、どうしテこんな所に居るの?ソレに、話し方もチョッと僕に近いかも〉
「兄さんを探すのに、コンな所まで来たんだよ。」
〈そっか…迷惑掛けてゴメンネ〉
「あ、そうだ。紹介したい子がいるンだよね。アンソニーとジーニーだよ。ソウぃえばアンソニーは兄さんと話がしたいッテ言ってたっけ?」
[…そのことなんだけど、やっぱりいいかな。もうここにいれる時間が無さそうだから。後は3人で話してね。それと、僕のことは忘れて。]
アンソニーはその場を去っていった
〈…紹介したい人って、彼のことなのかな?〉
『どうも、ジーニーです。』
〈2人だけでわざわざこんな所まで来たんだね。〉
「え、2人?何言ってるの、3人だよ。」
『いえ、2人でしたよ。テトラ、長旅で疲れているのでは?』
「確かに3人でネビル兄さんを探してたのに…」
〈じゃあ、その人の名前は?〉
「あれ…?思い出せない。ほんとに2人だけだったのかな?というか、ここ何処?」
『〈え?〉』
周りを見渡すと、3人は森の外に居た
ジーニーとネビルの姿は人間の姿になっていた
「…なんでこんな所にいるんだっけ?」
〈分からない…〉
『私もです。』
「帰ろっか。
そういえば、ジーニーは行く宛あるの?」
『元の家がどこか覚えていないので、帰ろうにも帰れませんね。』
〈多分、僕らの家も長いこと空き家になってるだろうから、もうとっくになくなってると思うよ〉
「…とりあえず、どうしよう」
〈どうするって、ホームレス生活するしかないよ。またゴミ漁りとかしないと生きていけないだろうし、仕事見つけるのも大変だろうね。〉
『とりあえず、これから一緒に頑張りましょうね』
アンソニーは元の世界に戻っていた
そして、起こることはないと言われていた異形化が始まっていた
[これ、結構キツイかも。言語障害は起きなさそうだから彼らに比べたらマシなんだろうけど
もう会うことはないし、僕に関する記憶も多分無くなってるだろうけど、彼らにとってはこれが一番良かったのかもね
あ〜あ、またひとりぼっちになっちゃった。]
アンソニーは森を彷徨っていた
以前この森で見かけた少年を探していた
道なき道をひたすら走っていた
アンソニーは特殊な体質で、森の特性である異形化を起こさない
というより、アンソニーは元から異形の類に入っている
本人は自分がどんな存在かを理解していないようだが…
「…どこまで進んだら会えるのかな。彼がこの近くに居るのは分かるけど…
なんか、良くない気配もする」
奥に人影が2人分あるのが見えた
「誰だろう?でも、片方は彼の気配に似てる。行ってみようかな」
アンソニーは二人の方に向かった
『気ヲつけてください。』
「どうしたの?」
『例の奇妙ナ気配が近づいてきています。』
「ジーニー、それに敵意はありそう?」
『いいえ、近づいテイるだけです』
「なら、大丈夫じゃない?」
『油断はしないように。』
ザッザッザッ
「例の気配の正体って、あれじゃないの?」
『アレですね。』
「人…なのかな?」
『人型の異形だと思います。』
アンソニーはテトラとジーニーの前に現れた
[…君じゃないけど、似てる]
「誰?」
[僕のこと?]
「うん。」
『テトラ、少し離れてください。』
「いや、大丈夫。彼は悪い人じゃなさそうだから。」
[僕はアンソニー。君達は?それと、なんでこんな所にいるの?]
「僕はテトラ。隣の子はジーニーっていうんだ。」
[テトラとジーニー…いい名前だね]
「僕等はこの森で兄さんを探してるんだ」
[兄?]
『彼はこの森に入って、行方不明になった兄を探してるんですよ。私はその手伝いをしています。』
[テトラに似た子を以前見たんだ。僕も彼を探してる。]
「何故君はその子を探してるの?」
[彼ともう一度、話をしたいから。彼に興味があるのと、彼が兄弟に対して何か謝ってたのが少し気になったんだ。]
「…」
[とりあえず、目的は同じってことでいいのかな?]
「…うん。一緒に兄さんを探してくれる?」
[もちろん]
『お二人とも、お話をしている所割り込んですみません。お兄さんと思われる気配が、この道の先から感じられます』
「[ほんと?]」
『ええ。』
「それじゃあ、早く行こう」
ネビルは、テトラとの思い出や森での記憶を思い出していた
二人の両親は物心ついた時にはもういなかった
二人を拾ってくれたおじさんと一緒にA地区の路地裏にある家でひっそりと暮らしていた
裕福ではなかったが、それでもネビルはテトラと共に充実した生活を過ごせていた
暮らし始めてしばらく経ったある日、おじさんが帰ってこなくなった
3日経って、2人のもとにおじさんの訃報が届いた
仕事中、事故に巻き込まれてそのまま…
2人は家のものを売った金で食料を買ったり、売るものがなくなったらゴミをあさって生活していた
必要なら日雇いの仕事や人には言えないような仕事もこなしていた
そんな生活を続けていたある日、ネビルはふと森の近くを通りかかった
普段なら気にならないその森に、ネビルは興味本位で森に入ってしまった
少し見て周るだけのはずが、気がつくと出口が分からなくなっていた
どこまでも同じ風景が続く
やがて、体力尽きて座り込んでしまった
ネビルは身体に異変を感じた
最初は気にもとめていなかったが、違和感は次第に痛みに変わった
見てみると、腕や足にはひび割れのようなものが広がり、そこから黒い液が滴っていた
触ってみるも、ひび割れは欠けることなく広がるだけ
全身に広がり、黒い液が出続ける
目にもヒビが入ったのか、何も見えなくなった
そこからの記憶は朧げだった
誰かに話しかけられたような気もするが、どうでもよかった
だが一つ、ずっと気がかりだったのは、弟の安否だった
朧げな記憶の中で、これだけが鮮明に残っていた
在りし日の思い出
「見て、兄さん」
『どうしたの?』
「そこにコスモスが咲いてるよ。それに、あのイチョウの葉も黄色くなってる」
『ほんとだね。ていうことはもう秋になってるってことか』
「秋が来てるってことは、これから冬に向けた準備をしないといけないってことだよね?」
『そうだね。でも、準備はもうちょっと後から始めても大丈夫そうだから、今は秋を楽しんでいようか』
「珍しいね。いつもならもう、色々準備を始めてるのに」
『こういうのも、たまにはいいと思うよ』
「それもそうだね」