アンソニーは森を彷徨っていた
以前この森で見かけた少年を探していた
道なき道をひたすら走っていた
アンソニーは特殊な体質で、森の特性である異形化を起こさない
というより、アンソニーは元から異形の類に入っている
本人は自分がどんな存在かを理解していないようだが…
「…どこまで進んだら会えるのかな。彼がこの近くに居るのは分かるけど…
なんか、良くない気配もする」
奥に人影が2人分あるのが見えた
「誰だろう?でも、片方は彼の気配に似てる。行ってみようかな」
アンソニーは二人の方に向かった
『気ヲつけてください。』
「どうしたの?」
『例の奇妙ナ気配が近づいてきています。』
「ジーニー、それに敵意はありそう?」
『いいえ、近づいテイるだけです』
「なら、大丈夫じゃない?」
『油断はしないように。』
ザッザッザッ
「例の気配の正体って、あれじゃないの?」
『アレですね。』
「人…なのかな?」
『人型の異形だと思います。』
アンソニーはテトラとジーニーの前に現れた
[…君じゃないけど、似てる]
「誰?」
[僕のこと?]
「うん。」
『テトラ、少し離れてください。』
「いや、大丈夫。彼は悪い人じゃなさそうだから。」
[僕はアンソニー。君達は?それと、なんでこんな所にいるの?]
「僕はテトラ。隣の子はジーニーっていうんだ。」
[テトラとジーニー…いい名前だね]
「僕等はこの森で兄さんを探してるんだ」
[兄?]
『彼はこの森に入って、行方不明になった兄を探してるんですよ。私はその手伝いをしています。』
[テトラに似た子を以前見たんだ。僕も彼を探してる。]
「何故君はその子を探してるの?」
[彼ともう一度、話をしたいから。彼に興味があるのと、彼が兄弟に対して何か謝ってたのが少し気になったんだ。]
「…」
[とりあえず、目的は同じってことでいいのかな?]
「…うん。一緒に兄さんを探してくれる?」
[もちろん]
『お二人とも、お話をしている所割り込んですみません。お兄さんと思われる気配が、この道の先から感じられます』
「[ほんと?]」
『ええ。』
「それじゃあ、早く行こう」
ネビルは、テトラとの思い出や森での記憶を思い出していた
二人の両親は物心ついた時にはもういなかった
二人を拾ってくれたおじさんと一緒にA地区の路地裏にある家でひっそりと暮らしていた
裕福ではなかったが、それでもネビルはテトラと共に充実した生活を過ごせていた
暮らし始めてしばらく経ったある日、おじさんが帰ってこなくなった
3日経って、2人のもとにおじさんの訃報が届いた
仕事中、事故に巻き込まれてそのまま…
2人は家のものを売った金で食料を買ったり、売るものがなくなったらゴミをあさって生活していた
必要なら日雇いの仕事や人には言えないような仕事もこなしていた
そんな生活を続けていたある日、ネビルはふと森の近くを通りかかった
普段なら気にならないその森に、ネビルは興味本位で森に入ってしまった
少し見て周るだけのはずが、気がつくと出口が分からなくなっていた
どこまでも同じ風景が続く
やがて、体力尽きて座り込んでしまった
ネビルは身体に異変を感じた
最初は気にもとめていなかったが、違和感は次第に痛みに変わった
見てみると、腕や足にはひび割れのようなものが広がり、そこから黒い液が滴っていた
触ってみるも、ひび割れは欠けることなく広がるだけ
全身に広がり、黒い液が出続ける
目にもヒビが入ったのか、何も見えなくなった
そこからの記憶は朧げだった
誰かに話しかけられたような気もするが、どうでもよかった
だが一つ、ずっと気がかりだったのは、弟の安否だった
朧げな記憶の中で、これだけが鮮明に残っていた
10/12/2025, 11:33:00 AM