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7/6/2022, 10:07:03 AM

君は僕の友達だった。

そう、友達。
親友でも、相棒でも好きな人でもない。
友達、僕らの関係を表す言葉としては
この世で1番ぴったりな言葉だ。

「いつもありがとうね」
いつも通り君の家を訪ねると
決まって出迎えてくれる君のお母さん。
少し、やつれたようにも見える。
いつものように挨拶をして家に入った。
1番奥の部屋でいつも君は笑っている。

君のアルバムを見せてもらうと、
確かに面影のある君が写真の中で
あどけなく笑っている。
それを見て少し頬が緩んだ。
楽しそうに君との思い出を語る
君のお母さんもどこかに君の影が残っている。
喋らなくなってしまった君の過去を
覗くことの出来る唯一の手段。
何回も見返しているが、やはり君の過去は面白い。
お母さんの話に相槌を打ちながら
アルバムを閉じた。
このアルバムは「君の思い出」。

「じゃあそろそろ」
と時間を気にして僕は立ち上がる。
いつものようにまた来てね、なんて
言われながら玄関で会釈した。
お母さんともう一度目を合わせてから
玄関の引き戸を閉めると、
その振動で笑顔の君の横の線香の灰が落ちた。

7/5/2022, 12:59:17 PM

最近、僕の人生は息詰まることばかりだ。
仕事のミスから始まり今日まで続く
この負の連鎖は終わる気配もない。
嫌なこともあまり続きすぎると
なんとも思わなくなってくるらしい。
今は、一周まわって楽になっているかもしれない。

今日も深夜に帰宅し、
いつもと同じようにタバコを咥えた。
まだ夏にはなっていない今日の季節だが、
どうやら今日は気温が高めらしい。
家の中にいては暑さから息が詰まってしまう気がして
ベランダに出て一服することにした。

下に広がる夜景ばかりを見つめていたが、
ふと上を見上げると
空に向かっていく煙の奥に壮大な星空が見えた。
よく歌でも歌われているように、
星空を見上げるとどれだけ自分がちっぽけか
思い知らされる。
自分はどれだけ小さくて、情けないのか。
自分が立ち止まっても星空はいつも輝く。
願わずとも動き続ける時に助けられたこともあった。
そんな世界のリズムはやはり
理不尽でありながらも万人に平等だ。
煙を吐ききった口からは小さく情けない音が出た。
何となく呼吸のリズムに従って
深く深く息を吸う。
そうやって肺に入り込んだ空気は
暖かく、冷たく、どこまでも軽い。
もう一度深く息を吐いたら、
そろそろ歩き出さないと。
僕にとって星空は、時の流れを感じさせるものであり
たった一瞬、時を止めてくれるもの。

2/1/2022, 12:04:21 PM

〖ブランコ〗

僕は隣に座ってるだけなのに、
君はブランコを漕ぎ出した。

止まっている僕の横を、
前に、後ろに。
通り過ぎていく君を見る。

話はしていない。
特に良い事があった訳でもないのに。
君は満面の笑み。
こちらに伝染りそうなくらい。

「漕がないの?」
前を向きながら僕に問いかける君。
僕は肯定とも、否定ともとれる笑いを零す。

漕がないよ。
僕が漕いだら君は止まって見えてしまうから。
僕は立ち止まらないと、
前に進み続ける君は、
いなくなってしまうから。

1/31/2022, 12:49:33 PM

〖旅路の果てに...〗


さあ進め。
歩き続けろ。

一度始めた旅を中断はできない。

旅に終わりはない。
終わりは自分で決める。
足が折れて動けなくなったら終わり?
食べ物が尽きて死んだら終わり?
それとも元の場所に帰ってきたら?

旅路の果てにまっているものとはなんなのだろう。



休憩はこのくらいにして。
さあ、そろそろ歩き出そう。

1/30/2022, 10:15:46 AM

〖あなたに届けたい〗

何だか今日はいいことが続く。

とびっきり良い事、という訳では無いけど、
足元に四葉が生えていたり、
空に大きな虹が架かっていたり、
赤ちゃんに手を振ってもらったり。

忙しい毎日に息が詰まっていた
自分でもそんな小さなことが
まだ、嬉しい、と感じれた事も嬉しい。

日も沈みかけた土手で、
オレンジ色が濃くなってきた空を見上げる。

空見て笑顔になれる自分に
少し希望を感じた。

毎日が忙しくて
日常に取り立てた変化は無くても、
小さな嬉しさが小さな幸せを
呼んだらいいな、と思う。

細く息を吐いてから
もう一度空を見上げる。

この笑顔が、喜びが。
そしてこの幸せが。
心地よい風に乗って、君にも届いたらいいな。

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