〖 〗

Open App

君は僕の友達だった。

そう、友達。
親友でも、相棒でも好きな人でもない。
友達、僕らの関係を表す言葉としては
この世で1番ぴったりな言葉だ。

「いつもありがとうね」
いつも通り君の家を訪ねると
決まって出迎えてくれる君のお母さん。
少し、やつれたようにも見える。
いつものように挨拶をして家に入った。
1番奥の部屋でいつも君は笑っている。

君のアルバムを見せてもらうと、
確かに面影のある君が写真の中で
あどけなく笑っている。
それを見て少し頬が緩んだ。
楽しそうに君との思い出を語る
君のお母さんもどこかに君の影が残っている。
喋らなくなってしまった君の過去を
覗くことの出来る唯一の手段。
何回も見返しているが、やはり君の過去は面白い。
お母さんの話に相槌を打ちながら
アルバムを閉じた。
このアルバムは「君の思い出」。

「じゃあそろそろ」
と時間を気にして僕は立ち上がる。
いつものようにまた来てね、なんて
言われながら玄関で会釈した。
お母さんともう一度目を合わせてから
玄関の引き戸を閉めると、
その振動で笑顔の君の横の線香の灰が落ちた。

7/6/2022, 10:07:03 AM