〖I love...〗
分かラない。
僕ハ今まで何が好きダッたんだろう。
別にきオクが飛んだ訳では無い。
まさかイカれちまったわケでもないだろウ。
言葉とは裏ハラニ、
全く過去をサカノぼる気のない頭の中で思考する。
確か、服もさケも女も。
全てにオイて極度の偏食だッタ気はするが。
嫌いなものは思イツくのに、
スキナ物は浮かンデこない。
原因は分カッテいる。ちゃんと。
憶測デしか無かった考えは
とウトウ現実味を帯びてきた。
もう気ヅカないふりをして生キていくには遅い。
でも認めたくハなかった。
へんしョクだった僕が
一途に愛した君が。
愛し合ってイタと思っていた君が。
僕に別れをツゲたから。
僕をきライと言ったから。
好きなものがワカラなくなったんだろう。
自分の好きナモノに、
好キナことを否てイサレて。
「I love...」
言トバに出しテミテも
そのアトノ音がどうしテモ出てコない。
対象をつムグことの無かった口は、
愛の言葉がくウキに溶けるまで開いタまま。
「I love me」
偏ショク家ノ僕には、
こうかンガエることしか出来なカッた。
君との待ち合わせ。
柄にもなく、小綺麗に髪をセットして
君に褒めてもらえる未来を
思い浮かべて口角が上がる。
そんな自分に呆れながらも
誰もいない部屋に挨拶をして部屋を出る。
ドアの鍵を閉めて、車の鍵を開ける。
君を載せることになるであろう
助手席を少し手で叩いて払う。
そんな自分の行動にまで
嬉しさを感じながらエンジンをかけ
君と約束のコーヒーショップまで。
案の定、君はまだ居なくて
ドライブスルーでいつものコーヒーを買って飲む。
いつも同じ場所で待ち合わせして、
いつも同じ時間に着いて、
いつも同じコーヒーを飲んで、
いつも同じ時間まで君を待つ。
気付かぬうちにルーティーンと化した
自分の一連の行動を振り返る。
いつも君が飲むカフェオレを
助手席側のスタンドに入れる。
そうしたらほら。
いつものように君が来て。
窓を叩く。
「お待たせ」
そう口を動かす君に小さく微笑んでから
僕はゆっくりとドアの鍵を開けた。
優しさ、に善悪はないが
それが必ずしも正しいものとは限らない。
その優しい行為の先に見えているのが
感謝する相手の笑顔なのか
相手の瞳に映る優しい自分なのか。