『新しい地図』
関係者の親族も 三年前、パチンコ屋の事務所を深夜襲って、現金を奪った。
実は翌日の土曜日の午前中に、新しい店舗を作るための土地を購入する売買契約をする情報が分かっていたのだ。
相手がヤバい組織で現金しか応じないため現金で六千万円用意するという話で、まあパチンコ屋の店長の息子が俺達の仲間で、ポロッと親父が漏らした情報を迂闊にも徹也というもう一人の仲間に話したことで、強盗することになった。
俺達三人は仲が良くていつも集まっては遊んでいた。
特に竹本徹也は犯罪を研究していた根っからの悪だった。
小さな犯罪はよく三人でして山分けしてた。そして、もっとデカい仕事がしたいといつも言っていたのだ。
犯罪を知り尽くしていた徹也の指示通り動いたら、完璧な強盗が出来た。しかもお金はパチンコ屋のオーナーの裏金らしく、売買の土地も違法性があり警察にも知らせない犯行になり、完全犯罪が成立したのだ。
しかし、相手の暴力団が犯人探しに血なまこになっていて、パチンコ屋の親族も疑っていたので徹也の指示でお金は隠すことになった。三年後に山分けすることにしたのだ。
そして三年。
現金は、俺名義で銀行の貸金庫を借りてそこに隠している。俺が取りにゆかないと貸金庫は開けられない。
パチンコ屋の店長の息子は必ずマークされていると思い、徹也はその息子と同じ大学で父親とも面識があり、やはり疑われる可能性があった。飲み屋で知り合った俺は二人と仲がいいことを知っている人は少なく、俺がお金を管理する事になったのはそんな理由からだった。
そして、竹本徹也が貸金庫のカギを預かることになった。
印鑑は店長の息子が預かることになった。
貸金庫のある銀行にはパチンコ屋の店長の息子のお姉さんが勤めていて、俺が貸金庫のカギを失くしたと銀行に届ければすぐに店長の息子にお姉さんから連絡がゆくことになっていた。印鑑を失くして変更したいと言っても同じことだ。
お姉さんは事情は知らないけれど、どうも徹也と付き合っているという噂は聞いていた。しかし、三人が揃わないと貸金庫は開けられない。
そんな感じで、誰かが抜け駆けしてお金を独り占めすることは困難な状況だった。
三年間、ほとんど会わずに生活していた。
今日、六千万円を二千万円ずつ分ける。
久しぶりの二人は思いのほか老けていた。まだ二十代なのに無精髭のせいか五十代と言われても信じられそうだった。
そして、二人は私の付き添いとして貸金庫の中に入る。
竹本徹也がカギを開ける。
「えっ?」
そうなのだ、六千万円の現金が消えていた。
三人とも驚愕して、慌てふためいた。
誰かに盗まれたことは確かだが、犯人が分からない。
店長の息子がお姉さんにお願いして、貸金庫の中身を強奪したのか。
竹本徹也はカギを持っていたし、そのお姉さんと恋仲の噂があったから、貸金庫の中身を強奪するならより可能性がある。
要するにお姉さんがカギだが、すべてが秘密の為、聞くことさえ躊躇する。
それに、そのお姉さんだけど、二ヶ月前に他の支店に異動になっていた。
このあと、散々揉めたが、三人はお金を諦めた。
私は自分の独り暮らしのアパートに戻り、がっくりと万年床に座り込んだ。
そして、帰りにコンビニに寄って買った缶ビールを三年ぶりにのんだ。
「ふぅ~、終わった」
そして本棚から、一週間前に買った新しい地図を取り出した。
その新しい地図には、赤いペンで丸く囲っている場所があった。
「六千万円は、三年後に取りにゆこう」
そう言って、残りの缶ビールを一気に飲みほした。
そう、お金を盗んだのは俺だ。
三年前に貸金庫を借りた時にすぐに俺は合鍵を作っておいた。
ただ、店長の息子のお姉さんが邪魔だった。
そこで一年前からそのお姉さんの対応の悪さを銀行の顧客の名前をいろいろ勝手に使って苦情として投書していた。
その成果がギリギリ、2週間前に現れたのだ。
ほとんど諦めていたからラッキーだった。
それから印鑑だけど、それも三年前に違う印鑑をわたしていた。印鑑の違いにそう簡単に気づくわけがない。店長の息子お姉さんに頼めば別だけど、そもそも本物の印鑑を知らなければ比べられないからわからない。
そして今日は俺の貸金庫だから、貸金庫の部屋に入る申請は俺がする。だから銀行に入ったら俺が印鑑をすぐに預かった。カギは部屋に入っから開けるので徹也がそのまま持っていたが、印鑑は俺が預かった時点で本物にすり替えた。
お金を貸金庫から盗んだのは三日前。
通りすがりの、少し暴力団っぽい風貌の男にアルバイトを頼んだ。
貸金庫の部屋に入る申請を代行するだけで三万あげると言ったら喜んでやってくれた。
俺は付き添うとしてマスクと帽子で顔を隠して中に入った。
しかし、あの二人は貸金庫の利用の履歴の調べもせず、監視カメラのチェックもあれだけ苦労したのに考えもしていなかった。徹也は頭は良いが、犯罪を考えるは得意だが、見破るのはどうも好きじゃないらしい。助かった。
たぶん、俺もそうだが、暴力団に疑われて暮らす苦労が俺達を変えていたのかもしない。
お金がなくなって、二人は最初、悔しがってはいたけど、どこかホッとしていた。
だから、お金を追うことを考えなかったのかもしれない。
二人とも、犯人は暴力団であって欲しいと思っていたのかもしれない。
とにかく、お金はある場所に埋めた。
新しい地図に描いておいた。
中身のないバッグの埋まった場所。
これで、また何かあっても奪われたと言い訳できる。
それで、六千万円のありか?
教えるわけ、ないだろ!
『好きだよ』
そんなに仲の良くない友達の誕生日会に出席した。
仲のいい友達に誘われたから。
と、言うのは口実で、片思いの女子が参加するからに決まってるだろ。
そこで配られたショートケーキ。
小皿に、銀紙と透明のシートで巻かれて、上に大きな真っ赤なイチゴが1つ乗っかった、高級店っぽいゴージャスな佇まいのケーキ。横に添えられたフォーク。
さすがに金持ちと噂の子のパーティー。
目の前の料理もご馳走だらけ。
仲の良い友達と目配せ、場違いを感じながら俺はそこにいた。
ちゃんと好きな女子の隣をゲット、そこまでは良かったけれど、急にショートケーキを食べることが怖くなった。
そうさ、この人、下品な人って、その女子に思われたくなかった。
でも、いざ、ケーキをフォークで食べようとすると、食べ方が分からなくなった。
俺って、いつもどうやって食べていただろう、そう思ったのだ。
まわりのみんなをキョロキョロ見回した。
早くも豪快に手づかみで頬張る男子もいた。スゲェー、あの勇気が俺にはない。
とにかくシートを丁寧に外した。
そして銀紙を広げて、フォークをつかんだ。
ふっと横の好きな女子を見るとイチゴをつまんでパクリと食べた。
驚いた。
この子は好きな物から食べるタイプなんだと思った。俺は最後に食べたいタイプ。それで少し相性が悪い気がして落ち込んだけど、いや違う、違うタイプだから好きになったんだと思い直して、恋の継続を密かに心で決めた。
そして、俺はフォークの刃を下にして、ケーキの細い三角形の先に突き刺した。そしてすくうように切り離して持ち上げた。
パクり。うまい。なんだかスポンジも生クリームも俺がいつも食べるスーパーで売ってるケーキとは別物だった。
俺は感動していた。
そして横を見ると、その女子は、フォークを横にして、ナイフで切るようにケーキの三角形の先にフォークを下ろしていた。それじゃケーキの高さから考えてどうやって食べるんだろうとずっと見てしまった。
答えは華麗だった。
切ったあと、今度はケーキの半分の高さにフォークを横に差し入れると綺麗に一口サイズのケーキがフォークの上に載っていた。
そんな感じで、次々食べてゆく。
これって、ケーキって、そんな感じで食べるものなの?
不思議なものを見たようで、俺も真似てやってみた。
意外と難しくなく、一口サイズで食べやすい。
それだけで、その女子を好きだけでなく、尊敬していた。
もっと、好きになった。
そして、ケーキを食べ終えて、最後のご褒美のイチゴだけになった。
そしたら、隣の大好きな片思いの女子から話しかけられた。
「イチゴ、嫌いなの?」
⋯⋯⋯⋯⋯話しかけられて嬉しく俺は舞い上がった。頭の中が一瞬、空白になった。しかも、大好きな女子に、好きだ‼️って偶然だけど、違う意味だとしても言えるチャンスがきたのだ。俺は意を決して、その女子に答えた。
「好きだよ」
「えっ?」
「☓☓だよ」
「えっ?」
恥ずかしさが勝つて、どうしても声が出なくて小声になった。
すると、
「嫌いなら、ちょーだい‼️」
ヒョイと二本の指でつまんで、俺の返事も待たずに、イチゴをパクり。
「おいしかったー、ありがとう」
満面の笑みをされたら、許すしかない。
帰り道で独り言。
嫌いなわけないじゃん。
好きだよ、イチゴも、君も。
その夜の星空は、めっちゃ多かった。
当然だけど、その恋は、告白も出来ずに終わる運命でした。
【終わり】
『桜』
空を埋め尽くすように舞い落ちる、桜の花びらを見上げてた。
純情そうな純白のフリをして、ほんのり桃色に頬を染める恋をしていた。
「だいっきらい!」
「うそつき!」
おでこを指先でツンって押されて、思わずへへへって舌を出した。
世界中が敵に見えた。
いじめと受験と親の不仲の中で、可愛がってたベットも死んじゃった。
そんな時にあなたがくれた神社の合格祈願の御守り。
「お前と同じ学校に行きたい」
「私と?」
「だから、がんばれ」
「⋯う、うん」
戸惑う私に、背の高いあなたが屈んで私の目線に合わせて、見つめて、言ったんだ。
「お前が、好きだから」
いち、に、さん、三秒ほど真顔をキープして、そして急に咳をして、耳まで真っ赤になりながら、昭和のコントのように慌てふためき、少年に戻って、
「そう言うことで、よろしくな」
二枚目ぶって、何度も躓きながら帰って行ったよね。
めちゃくちゃカッコ悪くて笑えて、大好きだと思った。
それから半年?
今日は入学式の帰り道。
桜は満開は過ぎたけどまだいっぱい咲いていた。
いつ、手を握ろうか?
いつ、キスまでするんだろう。
そういえば私はまだ好きだと伝えていない。
言った方がいい?
えっ、いつ、言う、いま、いやいやいやいや⋯無理っしょ。
頭の中はエロと純情で大紛糾。
「これから何回、桜を見られるんだろう」
ふいに、あなたが呟いた。
「何回、桜を見たって、今日の桜が一番だ」
「どうして?」
「お前が俺に、恋を告白する日だから」
そう言いながら笑って、どうぞのゼスチャーをするあなた。
えええええええええええええええ、えーーーーーーーーーーーーーー‼️
「好きです、付き合って、くださ、い?」
本当に乗せられて、言っちゃったぁー。
「しょーがないなぁー」
たぶん、ずっと私からの告白って言い続けられそうだ。
負けたな。
あなたと、私の恋に。
『そっと伝えたい』
そっと伝えたい
君がどんなにブスなのか
作る料理が不味いのか
口の悪さは天下人
嘆く、遥かにバカなのか
そっと伝えたい
君は醜い性格で
夢はすべてに嫌われて
何の才能無いことや
恋も続かず孤独だ⋯と
だけど伝えたい
君は変わらず生きてくれ
今の自分を信じろと
いつか出会える人のこと
めぐる運命、夢の果て
だけど伝えたい
君をそのまま愛してる
すべてくるめて魅力だと
いつか思いを伝えたい
そっと寄り添う、ネコのように
『ココロ』
コわしたいの 固い扉
コっぱみじん 爆薬しかける?
ロマンティック ネコにあげて⋯
コ宵、きっと 落としたげる
コとばなんせ まやかしだわ
ニヒルなんて 時代劇よ
アつい思い? それは執着
ラくにしてて はじめたげる
ズさんな未来も ちょっと変えれば
ホしくずのように 夜空を彩る
ン?んってとぼけて 逃げてみたって
キみはすでに 恋してる
ウイルスもあくびも 伝染するの
ココロに着火 僕に着火
何にもしないよ 見てればいいの
ホンキのココロを 見せ合おう