詩『究極の二択』
(裏テーマ・神様へ)
あれは17年前の夏でした
激しい通り雨が降ったりやんだり
蒸し暑い残暑でした
有名なテーマパークでした
私の母はそこで意識をなくした
救急車で運ばれた
人生どんでん返しの瞬間でした
楽しい家族旅行が爆発しました
脳出血で危篤です
そこで究極の二択を急かされる
医者から母を、生かすか殺すか…聞かれる
長くて短い1時間でした
母は脳幹を圧迫されていました
言葉を話したり理解する脳も壊れてました
助かっても要介護5です
「たぶんあなたの人生が壊れます」
「地獄のような日々を耐えられない人が多い」
「死なせるのも孝行です」
そして究極の二択を決めました
会話もできず暴れても生きて欲しかった
母のためより私のわがまま
私は神様とも約束をした
助けてくれるなら私はすべてを捨てると
母の介護だけに生きると
まさに17年間は地獄でした
おまけで父の認知症の介護まで増えてた
去年、母が亡くなるまで
私は神様へ話しかけた
あなたとの約束は最後まで守りました
有り難うございました
血の涙が出るような日々も
まるで砂金の山のようにキラキラしてた
幸せな延長時間でした
詩『私は草である』
(裏テーマ・快晴)
私は草である
名前は、知らない
踏まれて枯れたって
死なないわけじゃない
昨日は犬のやつ
オシッコ掛けてった
でもね実はバッタ
追いはらえ助かった
私は草である
太陽が、好きである
曇りも雨の日も
淋しくてしおれてる
今朝は快晴だ
ミドリが、強くなる
だけれど実らない
片想い…そうとも言う
詩『離島殴打事件』
(裏テーマ・遠くの空へ)
俺は、遠くの空へ、叫んだ。
「犯人は絶対にー、捕まえてみせるからなー!」
恋人はドクターヘリに乗せられ病院に運ばれた。
頭の傷は深く出血も多いことから生命の危険があることは俺にもわかっていた。しかし、刑事である俺は犯人を捕まえることを優先した。
離島だが最近は人気で観光客も増えていた島だった。
そこに恋人は、女友達が怪我して行けなくなったから代わりに俺と二人で行かないかと相談されたのだ。すべてのチケットは購入済みでタダでくれると言うことだった。
その日は俺たちは久しぶりのデートの約束を前からしていた。俺には珍しく二日も休みがあったのだった。
事件は、島に向かうフェリーで起こった。
二人で座っていたが俺がトイレに行って戻ったら恋人は床にうつ伏せで倒れていた。
俺たち以外は、船長と乗客が三人。
恋人らしき男女と一人旅の男だ。
この四人の誰かが犯人か?
事件は同僚の捜査で一気にすすむ。
恋人にはストーカーがいて、お金に困っていた女友達にそのストーカーは近づいて、俺たちを島に呼び寄せたのだ。
俺の眼の前で犯行を見せつけ、俺に勝ちたかったようだ。
実は犯人はトイレに隠れていて俺が行くのを待っていた。
俺がトイレに行き、そこで交代して入れ替わった男がストーカーだった。犯行後は海に飛び込み泳いで島まで辿り着いたようだ。
他の乗客たちも他人に興味はなく犯人の存在に気づかなかったようだ。俺以外は。
そう、刑事の俺を馬鹿にしちゃいけない。
チラッとすれ違っただけでも顔を覚えられるんだ。
その顔が船にいないので、必ず島にいると確信して俺はドクターヘリに乗らずに、すぐに島中を探したのだった。
翌日には俺は病院に駆けつけた。
絶対安静の状態だったけど恋人がニコって笑ったから、俺は涙が止まらなくなる。
そして看護師さんの目を盗んでキスをした。
ちょっと気晴らしに病院の屋上に上がる。
離島のある、遠くの空へ、叫んだ。
「ざまぁーみろー!くそったれー!ばかやろー!」
そして、
「◯◯◯、大好きだー!」
みんなが振り向いて見ているので、俺はダッシュで逃げだした。
詩『家族』
(裏テーマ・言葉にできない)
「どこが好き?」
「目?かな、声も」
「それだけ?」
「顔も、性格も、ぜんぶ!」
彼女は、口を開けば人の悪口ばかりで親友の悪口も僕にするのでいつも対応に苦慮している。だって肯定もできないけど否定したら嫌われそうで。
本音をさらしてくれるのは嬉しい。
「あの子、どう思う?」
「優しくて、親切で、いい子だよね」
「わかってないなー」
「えっ?」
「あれは全部計算。男は馬鹿だよねー」
あの子とは彼女の1番の親友だ。
たまに質問攻めにあい、コテンパンにやられる。
それでも僕は彼女を尊敬してる。口は悪いけれど言ってることは間違っていない。
たぶん、親友には僕の悪口をたくさん言ってるだろう。できれば楽しそうに話してほしいな。
彼女の家は複雑だ。
だから、僕からはいつもその話題はさけている。
母親は病気で詳しくは知らないが重いらしい。父親はそんな状況でも留守がちで彼女は浮気を確信してる。姉は逃げるように都会で一人暮らし。弟は反抗期。
彼女の口の悪さは家族の話が1番ひどい。
初めはうっかりアドバイスをしてしまったが、すぐに気づいた。これは家族への愛情を僕にぶつけているだけなんだと。
そう、言葉にできない、愛なのです。
彼女は今日も絶好調。
悪口ざんまい、パチンコのフィーバー状態?って知らんけど、質問攻めも機関銃撃ちまくり。
それが幸せそうで、僕も幸せになる。
いつか彼女と、家族を作りたい。
詩『病院の桜』
(裏テーマ・春爛漫)
あなたがいない初めての春です
去年は病院の駐車場で桜を見ました
押す車椅子さえ
長く座れなくなっていたけれど
私がどうしても見せたくて
連れて行った
あなたはにっこりと笑って
「きれーじゃね!」って言うと
疲れたように目をつむって眠った
私は残された時間に焦っていて
あの頃はいろいろ無理をさせていた
奇跡が続いて
死なないんじゃないかって
本気で考えてた
スマホに
その時の写真があります
頭をななめ前に傾け
眠そうな目をしています
後ろには桜が写っています
あなたはピンク色の服が好きでした
他の写真もみんなピンクばかりです
実は、亡くなって
写真を見ることができませんでした
やっと見ました
どの写真も笑顔とピンク色です
まるで「春爛漫」です
今年は私の検査で病院へ来ました
駐車場の桜は満開でした
なんとなく選んだ今日の服装は
ピンク色のトレーナーです
私はもう少し長く生きたいのです
服を握りしめ
桜に願掛けをしていました
ごめんと呟きながら