odoro

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2/10/2024, 12:31:38 AM

花束に関して、誰にも話していない「しょん…」とする話がある。10年ほど前に、私の働いていたバイト先の店長が独立してオーナーになるというタイミングがあった。割とロマンチストな店長だったので、私はサプライズで花束を渡そうと思い、家とバイト先の間にある小洒落た花屋に初めて入った。奥には小さなおじいさんがムッとした顔で座っており、私はやや緊張しながら花束にする花を選んでいた。
「全体的にオレンジっぽくなるよう、1000円前後で小さい花束を作っていただけますか…?」
とおずおずと問うと、おじいさんはカウンターから這い出てきて、なれた手付きで花を選び、束ねてくれた。しかしラッピングの段階でおじいさんは深刻な顔になる。

「ラッピングはいつも息子に任せてるのでやったことがない」

えっ!最初に言ってくれれば考慮するのに…!そこにあるアレンジメント済みのやつ買いましたのに!しかし、不要な枝葉や花びらをとってしまったそのお花を戻させるわけにもいかん。
「…一緒にやりましょう…!!」

そして私はおじいさんと力を合わせ、苦心してラッピングを施していく。しかし、私とてなんのスキルも持っていない。できあがったのは花束というには無理のある、こどもが野山でつんできたような物体だった。見様見真似でくるんと巻こうとしたリボンがくちゃくちゃとよじれて、哀愁がただよう。

私は面白おかしく事情を話して店長に花束を渡した。店長は…笑って喜んではいたが、同時に、目に哀れみや寂しさのようなものを湛えていた。

誰が悪いでもないこの出来事を、私は花束を見かけるたびに思い出すのだ。

2/5/2024, 2:26:53 PM

往々にして、気持ちというものは溢れるまで目に見えない。気持ちの入ってる容器は不透明なのだ。年月をかけて訓練すると、溢れさせなくても自分の気持ちの正体を察することができるようになる。ただ歳を取るだけでは「気持ち」に気がつくことはできない。現に、自分でも何が不満がわからないまま感情的に騒ぐ大人も多い。うまく気持ちを溢れさせ、周囲に自分の気持ちを知らしめることばかり得意な者もいる。「気持ち」は物質的には存在しないのに、それが溢れると良くも悪くも周囲にまで影響が及ぶ。すこぶる不思議なものである。

2/4/2024, 2:22:14 PM

kiss、キスですね。私の記憶にはっきり残っている「初キス」の話を書こう。それは幼稚園だか、小学校低学年の頃だかの事だ。周囲ではおたふく風邪が猛威をふるっていた。私はよく体調を崩す方だったが、このおたふく風邪には一向に感染しなかった。母親は「大人になってから初めて感染すると重くなるので、今のうちにかかっておきなさい」と言うが、かからないものは仕方がない。そんな折、私の同級生である大親友が、見事なおたふく風邪をひいた。母親は私を連れてその子の家へ伺い、私に「うつしてもらいなさい」「ちゅーしろ」と言ったのだ!同性の大親友、私達はまだ子ども。とはいえ親の前でキスするなんて恥ずかしい!私達はふたりだけで彼女の部屋へ入り、ちゃんと鍵をかけ…しばしの逡巡ののち…キスをした…。私は見事なおたふく風邪をきっちり頂戴した。時は流れて先日、その大親友は私の知らん男と結婚してしまった。めちゃくちゃ寂しかった。結婚式にお呼ばれしてふたりのキスを見せられる時、「私のほうが先にその子とキスしとるからな」と、何とか溜飲を下す事ができた。当時はなんて恥ずかしいことをさせるんだと腹がたったが、今では内心でマウントをとる良い材料になった。

2/4/2024, 2:28:37 AM

1000年先、って「1000年後」と同じ意味なのに「先と後」で反対語なの、すごいな。先って言う方が、なんかポジティブな印象になる。こう、1000年向こうまでの年表があるとしてさ、「1000年後」だと、主観の人は没してる感じがある。でも「1000年先」だと、「現在」からピッと出た光る矢印が、ギューーーーンと飛んで、1000年向こうの地点に着地するイメージが湧く。このとき主観は、光る矢印の先っちょにある感覚。明るい未来のイメージだ。

2/2/2024, 6:14:01 PM

ワスレナグサ、優しい寂しい印象でよく耳にする名前だ。それが理由であまり好きじゃない。今、このお題に何と書けばいいか(反発心のために!)何も浮かばなかったので、せめてウィキペディアで調べたろ、と思って調べてきた。日本ではまぁいわゆる、園芸品種としての花で、アメリカなんかでは広く愛されているとのこと。和名のワスレナグサは、ドイツ名をそのまんま和訳(こう和訳したこと自体はめちゃかっこいいけどね!)しただけらしく、日本での謂れはないっぽい。しかも悪いことに国内では温暖な地域で野生化してるらしいじゃないか。いよいよ嫌いになってきた。野生での姿を調べたろ、と思って画像検索したら、わらわらと優しい淋しげなイラストが出てくる。重ね重ね、ぃや〜〜〜ね。そうそう、こういう所が嫌いなんだわよ。

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