五月雨

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6/4/2024, 10:49:52 PM

僕は狭い部屋の中にいる。
部屋には僕以外誰もいない。
たったひとりのへや。

その部屋は不思議な部屋だった。
時間になると食事が来る。
食べ終わると食事はいつの間にか片付けられており、
机の上に勉強道具と教材が置いてある。
そして時間になるとゲームや漫画などの娯楽が与えられる。

ここでの生活は、とても楽だ。
時間通りに決められたことをやる。
自分自身で考える必要もなければ、
選択を迫られることも無い。
何も考えずに目の前に出されたものをこなすだけ。

そんなある日、僕は気付いた。
本当にこれで良いのだろうか?
人の敷いたレールの上を歩く人生は
選択をすることもなければ考えることもない。
とても楽なのである。
しかし、だからといってこのまま
このレールの上を走り続けるのはどうなのだろうか?

考えに考えた。
自分自身の頭で。

そしてついに僕は自分の意思で外に出た。
他人の敷いたレールからようやく外れたのだ。


外の世界は広かった。






『狭い部屋』

5/25/2024, 10:50:46 PM

「暗くなってきたからそろそろお開きにしようか」

カフェの窓から外を見ながら、不意に彼女はそう言った。

彼女は会社の同期であり、俺が想っている相手でもある。
今日は一日中2人で出かけていたが、とても楽しかったためか
空が暗くなっていくのに気が付かなかったらしい。

2人でカフェを出ると、雨が降っていた。

「すごい雨降ってるねぇ。これは止むのを待つよりコンビニに走った方が早いね。」

なんて言いながら走り出そうとする彼女をみて、気づいたら体が動いていた。


「あのっ、 雨が降り止みませんね…!」






『降り止まない雨』

5/2/2024, 8:33:33 AM

あの人は夕焼けのような紅色

あの人は明け方の空のような桃が入った紫色

あの人は夏の木の葉ような緑色


「あ」という文字は澄んだ空のような空色

「か」という文字はとても綺麗な茜色

「わ」という文字は水彩画のような薄い水色

「ん」という文字は灰色に少し青を混ぜたような不思議な色


どうやらこの色たちが見えるのは共感覚というもので

これがある人は珍しいし

人によっても見え方はちがうから

この世界は僕にしか見えないらしい


それならあなたにはこの世界が

どう見えているのだろう?

僕の世界は君からしたら

カラフルすぎって思うかな


僕の世界の話をしたら

君は信じてくれるかな

もし君が信じてくれるのなら

僕の世界の話をしてみたい



太陽のように

光り輝く黄色の君に






『カラフル』

4/23/2024, 10:31:23 PM

天気予報です

今日の心模様は曇りのち晴れるでしょう

最高体温は37.4度

最低体温は35.5度

降水確率は100%の予報です

今日は高校生活最後の大会があるため、
日中の体温はとても高くなる予報となっています

熱中症に注意しましょう

また、朝から昼にかけては緊張と不安のため、
天気が安定しないようです

特に、大会が終わる昼過ぎから局地的に雨が降る予報
となっています

ですが、雨がやむと雲ひとつない青空が見れそうです




それでは今日も頑張りましょう



いってらっしゃい







『今日の心模様』

4/3/2024, 3:14:41 PM

「今日は、皆さんの大切なものの絵を書いてもらいます。」
6時間目の美術の授業中、先生が生徒に向かってそう言った。
お題に則していればなんでもいいらしい。

大切なもの、なんていきなり言われても何も思いつかない。
ためしに周りの人達に何を描くか聞いてみた。

昔買ってもらった飛行機の模型
部屋に飾ってある家族写真
お気に入りの服
部活で使っているシューズ
夏休みの作品で取った賞状……

どれも特別で、大切なことには変わりないだろうが、
何か違う。

じゃあ、僕にとっての[大切なもの]ってなんだろう。

結局思いつかないまま、チャイムが鳴ってしまった。



今日は部活も委員会もないため、いつもの友達と帰る。
友達と、今日の漢字テスト何点だった?とか、今日の数学の
課題だるいよなぁとか、そんな他愛もない話をしながら。

そんな時に、ふと美術のテーマを思い出した。

[大切なもの]

僕にとっての大切なものは、他の人からするととても些細なものなのかもしれない。

それでも自分の中で納得がいくものを見つけたと思う。


これをどうやって絵にしようか。

なんて考えながら、友達と帰った。



僕にとっての[大切なもの]、

それは、[何気ない日常]なのではないか。

僕はその時、そう思ったんだ。




『大切なもの』

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