五月雨

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「今日は、皆さんの大切なものの絵を書いてもらいます。」
6時間目の美術の授業中、先生が生徒に向かってそう言った。
お題に則していればなんでもいいらしい。

大切なもの、なんていきなり言われても何も思いつかない。
ためしに周りの人達に何を描くか聞いてみた。

昔買ってもらった飛行機の模型
部屋に飾ってある家族写真
お気に入りの服
部活で使っているシューズ
夏休みの作品で取った賞状……

どれも特別で、大切なことには変わりないだろうが、
何か違う。

じゃあ、僕にとっての[大切なもの]ってなんだろう。

結局思いつかないまま、チャイムが鳴ってしまった。



今日は部活も委員会もないため、いつもの友達と帰る。
友達と、今日の漢字テスト何点だった?とか、今日の数学の
課題だるいよなぁとか、そんな他愛もない話をしながら。

そんな時に、ふと美術のテーマを思い出した。

[大切なもの]

僕にとっての大切なものは、他の人からするととても些細なものなのかもしれない。

それでも自分の中で納得がいくものを見つけたと思う。


これをどうやって絵にしようか。

なんて考えながら、友達と帰った。



僕にとっての[大切なもの]、

それは、[何気ない日常]なのではないか。

僕はその時、そう思ったんだ。




『大切なもの』

4/3/2024, 3:14:41 PM