「……」
「遠い目してどうしたん」
「っ!?」
「すまん、ちょっと気になって」
「あぁ、いや、えっと」
「?」
「……いつまでここにいれるかなって」
「いつまでもやろ」
「え」
「俺はおるよ」
「……」
「だいじょーぶや!」
「……せやな!お前がおるから」
「当たり前やん!頑張ろうな」
「勿論やわ、相棒!」
────ある日の話:10
明日を覆うは煙る灰色
然し光れよ一等青
「……あ」
「……どうした」
「ねれない」
「寝なさい」
「無理やぁ……なんか落ち着かへん」
「しゃあないなぁ。大丈夫やで」
「う……」
「今日も明日も生きとるよ」
「……」
「ゆっくりお休み。また明日」
「さて、たまには労ってやりますか」
────とある記念日:青
ロクマル拍子絶えぬ瞬き
巡り廻れよ命の針
[教授ー?]
〖ああ、どうしたんだい?〗
[◼◼ってなんですか?]
〖それは…〗
[あ、コーヒーもらいまーす]
〖せめて許可を取りなさい?〗
かつての生徒には、会えないと知っている。
それは、一度巡った鏡の向こうの世界の話。
────珈琲の香る記憶:1
「死ぬまでにしたいことぉ?」
「そう。まぁ、なんとなくね」
「はーん……せやなぁ、俺は……
……あかん、思いつかんな、そんなパッとは」
「それはそうでしょう。愚問やったね」
「いや、それはええねんけど。
突然変わったこと聞いてくるやん」
「なんとなく、思いついただけやけど……
ほら、ここの連中みんな死が近いから」
「ああ確かにね。それはそう。
うん、そう思うと色々やりたいことはあるな」
「でしょ?」
「聞いてきたあんたはどうなん?」
「私?そうだなぁ…もう一度生徒に会いたいかな。
変わったやつがおったから」
「へー。どんなんやったん?」
「おちゃらけたような、毎日気楽そうにしとった女学生」
「ふーん」
「特に他意は無いで。ただ、元気にしとるかなって」
「ああそう。なるほどねぇ」
「まあ、気にしてられるほど
のんびり過ごしてはいられへんよね。終わりにしよ」
「せやなぁ」
────ある日の話:9
あるとき、ひとつのくにがありました。
そのくには、とてもなかのよいひとたちがつくり、
おさめており、くにのひとびととも
なかよくしておりました。
それはとおくみえて、とてもちかかったおはなし。
知りたいことは案外、身近にありました。
それはたぶん、知らないふりをしていただけでした。
それはたぶん、いつか途絶えども、永遠にあるものでした。
それは、とある人に憧れた、惨めで馬鹿で、
どこまでも夢を見た“誰か”の話。
────とある夢物語