後悔
私は暗闇の中で、4時に差し掛かるこの時間に1人の友人について深く考えている。
彼女は小学生からの仲で16.7年くらいの付き合いになる。
初めて出会った時、彼女は優しさの塊で控えめでとてもいい子だなと感じた。
すぐに仲良くなった。
仲良くなってからは、毎日放課後17時のチャイムが鳴っても2人でずっと笑い合いながら話し続けた。
私はその頃、女の子の中では割とやんちゃで男の子っぽい遊びが大好きで少々破天荒な事をやらかして楽しむタイプだった。
彼女はその真逆で、ほわほわしていて女の子らしいものが好きで先生の言葉をよく聞くいい子だった。
私は彼女のホワホワした優しいところが好きだった。
実はしっかりしていて賢いところも好きだった。
彼女は私のわんぱくな世界を受け入れてくれて、むしろ私よりもわんぱくになっていった。
お互いが自分に足りない刺激をくれるようで、とても楽しかった。
私達は、親友と呼べるほどの関係だった。
中学に上がり、クラスが端と端になった。
今までずっと同じクラスだった彼女と、初めてクラスが離れた。
知らない子たちが多くて、大好きな彼女とクラスが離れてとても不安だったのを覚えている。
帰り道にどんな感じだったか話そうね!と約束してそれぞれクラスへとわかれた。
自分のクラスに入ると、知らない子が仲良くなろうともちかけてくれたり、偶然知っていた友達と再会できて楽しかった。けれど彼女のいないそのクラスは寂しくて、退屈に思えた。
放課後になり、一緒に帰ろうと彼女のところへ一目散に会いにいくと、彼女はクラスの中で新しい友達ととても楽しそうに笑っていた。
帰り道私は、
「これからあんまり楽しめるかわかんないな、不安だなあ。」
そう伝えると彼女は、
「私のクラスは楽しそうでラッキー。これから楽しみだなあ。」
そう言って、新しくできた友達の素敵なところを語り続けた。
私達は学校への行き帰りは一緒に行こうと約束をしていたので、必ず一緒に登下校することになった。
私は、彼女と話すことが大好きだったから登下校が楽しみだった。
けれど彼女が話すことは全てクラスで起きた話で、それは私のクラスで起きることとは正反対で、いつも知らないその楽しい世界の話をされることが苦痛になり始めた。
私は、自分のクラスの人があまり好きではなかった。
静かで冷たくて上辺だけな感じがして、表面上では仲良くしていたが深く仲良くなりたいと思う相手はいなかった。
彼女と過ごしたいと思う気持ちは強まった。
しかし彼女はもう既に、新しい友達に心が埋め尽くされているかのように感じた。
私の話もあまり聞いてくれずに、新しい友達との話ばかりをするようになった。
次第に私は寂しいを通り越して、なんだか不快な気持ちになってきてしまった。
どうして、私の話を聞いてくれないのかな。
もう、私のことは興味がなくなったのかな。
そんなふうに思って、
自分だけがこんなに彼女のことを大事にしているのがバカらしく思えてきた。
だから、私は自分のクラスで本当に仲のいい子を作ろうと思った。
自分が拒否していただけで、クラスの子達は快く受け入れてくれた。
そして一気に仲良くなり、大親友ができた。
私もいつしか彼女のように、大親友の話をするようになった。
どんなところが素敵で、どんな趣味を持っていて、どんな考えを持っていて。
その時はもう、彼女のことを考えることを忘れてしまっていた。
彼女が寂しそうな顔をしているのにも気づかずに。
私は、登下校もたまに新しくできた親友とするようになった。
だんだんと、彼女と会う機会も減っていった。
ある日彼女はそれを寂しいと伝えてきた。
でも私は、それを適当に流してしまった。
その頃彼女はグループの子達と揉めていたらしく、大好きだと言っていた新しい友達たちに省かれてしまっていたらしい。
当時の私はそれを聞いた時、あまり可哀想だと思えなかった。
私を無視して、その子たちのことばかりを追っていたのに今更私のところに来ないで。と思ってしまっていた。
傷ついている彼女に、何もしなかった。
私は彼女を親友だと何度も感じたはずなのに、その彼女を傷だらけのまま放置した。
そして、謝ることもせず私は今も新しくできた友達を最優先して生きている。
彼女とは高校まで同じ学校だったけれど、適当に接して一応友達という感じで仲良くしていた。
そして私は、高校でも新しい友達を優先した。
彼女はなぜか、あまり楽しそうではないように感じた。
いつしか自分から友達を作らなくなった。
ネガティブな言葉を吐くようになった。
私は彼女の気持ちがわからなかったし、わかろうともしなかった。
そばにいたいともあまり思わなくなった。
そうしてるうちに社会人になった。
私は地元から出て、離れたところに住むことになった。
彼女はたまに手紙を送ってくれる。
会いたいとか、頑張ってね、とか応援しているよ。とか。
優しい言葉を送ってきてくれる。
私は、複雑な気持ちでそれを受け取る。
私はあなたを見捨てたし、大切にしなかった。
受け取る権利のない私に今も手紙を送り続けてくれる彼女になんとも言えない気持ちでいる。
会おうと言われても、会える気がしない。
全てを伝えられたらと思った日は何度もあった。
しかしそれをプライドが邪魔してくる。
私の嫉妬心や、寂しさが彼女を傷つけることになったと認めることが嫌だった。
そうして大人になった今も、伝えられずにいる。
どんなに彼女を思っていたか、どんなに寂しかったか。
傷つけてしまったことをどんなに謝りたかったか。
この後悔を、いつか私の中から捨て去る日がくるだろうか。
伝えなければならないことを全て伝えて、早く君と小学生の頃あのベンチでそうしたように、また心から笑いあいたい。
愛を叫ぶ。
そんなことを、人生で経験したことのある人が
世の中には一体どれだけいるのだろう
羞恥心やプライドに目もくれず叫び出してしまう程に、
誰かへ想いを伝えたくなったことがあるだろうか
映画やドラマでよく見るあの恥ずかしい光景
残念ながら、私はまだ無い
ただ、外に出さずとも内で近い感情が
渦巻いたことはあったかもしれない
私はこれまで相手への愛を伝えることよりも、
自分の見栄を優先させてしまっていた
そうすることによって、自分を守っていたつもりだった
しかしそうしている間に
いつしか内で渦巻いていたものは
行方を見失って小さくなり遠くに消えてしまった
内に秘められたその塊は外に出るために
生まれたものだったのかもしれない
いつかまた私の内にそれが生まれてきてくれるのなら
今度は勇気を持って手を繋ぎ外へと導いてみたい
そしてその勇気を受け取ってくれる誰かと
巡り会いたい
何もいらない
もう何もいらない
親友も恋人も、素敵な家族でさえ
もういらない
どんなに大勢で写真を撮ろうと、
いつだってレンズにうつるのはただ1人
人生は孤独
気づかずに生きていられたら
どうしてこんなに早く気づいてしまったのか
もう少し幻想の中を歌いながら駆け回りたかった
神様、どうして私に目を与えたの?
どうして耳を与えたの?
どうして口を与えたの?
私にはどれひとつ必要なかった
何もいらなかった
見たくなかったあの景色
聞きたくなかったあの叫び
言いたくなかったあの言葉たち
全てを無くしてしまえば
きっと傷つかない
きっと、それには遅すぎた
もうこれ以上、
何もいらない
胸が高鳴る
ちょうど今、私の好きなことはなんだろうと考えていたところだ
考えただけでワクワクし、まさに胸が高鳴るようなことってなんだろう
それは、私だけが見つけられる素敵を誰かに届けることかもしれない
それは、好きな文章でもいい、得意な写真でもいい
音楽でもいいし、イラストでもいい
私が、私の感性で作り上げた素敵を形にして伝えたい
そして、同じ感性を持つ人々と巡り会いたい
今までとくにやりたいことは無かったが、
それを考えると確かに胸が高鳴る
いつか見つけたい、そして叶えたい
胸が高鳴る未来を
ずっと隣で
どうしようもないくらいネガティブな気持ちが脳からとめどなく湧き出てきてしまうこの私でも、密かに隠している夢がある。
世の中を常に否定的に、疑いの目を持って見ているこの目にもそれでも見たいと思ってしまう景色がある。
それは、あたたかい家族の未来だ。
優しさ、思いやり、信頼、尊敬、そんな言葉が似合う
家族の未来。
「将来の夢はなに?」
小さい頃からよく聞くこの質問にずっと上手く答えられなかった。
周りの子達が、看護師や教師や、CAやモデルになりたいという中、私はどれもピンとこなかった。
どれになっても私は幸せになれないとわかっていたからだ。
そんなものよりも、欲しい未来があった。
それは、穏やかな家庭を持つことだった。
当時私の家庭は、喧嘩や暴力や差別、虐め、悪口や怒鳴り声、泣き声が毎日を黒く染めていた。
あたりまえの日常だった。
ドラマや映画の中の家族が、笑顔で手を繋いで旅行に行ったりしている風景を見て、私の中のあたりまえが、あたりまえじゃないことにそこで初めて気がついた。
あたたかくてふわふわして優しいその世界を夢見た。
いつかそうなれるんじゃないか、いつか家族全員がみんなを大好きになれたら、と願っていた。
それでも結局、私たち家族が信じあって思いやりを持って互いを尊重し合うことなんて到底不可能だった。
やっぱりおとぎ話なのだろうか、テレビの中に出てくるあの家族は嘘で作り上げられたものなのだろうかと、絶望した。
それでもまだ、一つの光を信じて生きてみたいと思っている自分がいる。
私がこの手で未来を作ることが出来るのならば、全てをかけて、最大の優しさやあたたかさで夢を実現してみたい。
そんな世界も本当にあったんだよ、と当時の私に伝えてあげたい。
そして、一緒に同じ夢へと歩いてくれるパートナーに出会えたなら、支え合い助け合い生きて欲しいと思う。
奇跡を信じるのなら私は1番に願っている。
あたたかくて、優しくて、ずっと隣で支えたいと思える家族に出会えることを。