やなまか

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12/22/2023, 9:46:15 PM

久しぶりに逢えて、ちょっとたがが外れてしまっている気がする。
薄暗くした浴室で、湯船にどぼんと彼が入ってきた。すぐに大きな手が腰に絡み付いてきてそのまま上がってくる。少し抵抗をしたのに、首筋に冷たいキスが落とされた。
温まっている身体との温度差に自然と硬直する。悲鳴みたいな変な声が出てしまった。
「会いたかった…」
いつもと違って少し反響して聞こえる。
でも低くて優しいいつも通りの声。
首の後ろを支えられたから、「私も」と言う代わりに身体をねじって私からキスをした。終わらない夜が始まる。

12/21/2023, 7:22:56 PM

彼の少しだけ上背を伸ばした背中が命を刻んでいる。
稲穂の海を駆けて私達はまた世界の色を奪うのだ。
氷の粒が含まれているような風が髪を攫う。
耳に当たる風は冷たくて。
ああ。この空の下で生きている。

一人で部屋で待つよりずっといいなと思ったんだ。

12/20/2023, 5:56:33 PM

この丈夫な身体は君を守るためにある。
オレは陽気で低姿勢でいつも笑っているように心がけていた。
怖がらないで欲しいからオレは君に「怒り」を見せない。

「怒り」は誰にも見せたらダメでしょう。
もしオレが牙を剥き出せば、きっと周りをひどく傷付け君を失う。

「我慢せず怒っていい」とか「怒りは自己表現」とか「理由のある怒りは主張や希望なのだから」とか。ほんとにそうなのかな。

好きな人にも見知らぬ人にもできるだけ見せるべきではない「感情」のひとつだと思うんだけどな。


12/19/2023, 7:55:53 PM

溢れるぐらいいっぱいにして欲しい。
満たされない。
たっぷりと尽くされた瞬間を知っているから、かえって愛して欲しいと乞いてしまうのだ。




12/18/2023, 12:56:10 PM

冬季だけは旅に出るのはやめたほうがいい。
魔物のほうが圧倒的に有利な上に、人は簡単に凍えて死ぬからだ。

最近久しぶりに昔の仲間から便りをもらった。
「そちらに寄る」と短く妖精の字で。
2年ぶりか。去年は南の国に居るからと冬に来なかったのだ。
「薄情者め」
そう言いながら口元は緩んでしまう。あいつらは時間の感覚が私達と違うんだよね。

私たちがいる丸太作りの部屋は温かい。暖炉ではシチューがくっつらくっつらと煮え、鉄板では茶葉と豆がゆっくりと煎られていく。干物が壁にならび、根菜類が土間に鎮座し、農家から貰った固まった牛の乳は倉庫で寝かしてあった。ここの生活ももう長い。
あいつらはどんな空の下でこれを書いたのだろう。

早く会いたいな。

我らがリーダーの息子はもう立派に言葉を話すようになっちゃったよ。さっきも魔法の伝書鳩を持ってきたのは彼なのだから。
これから忙しくなるね。まずは薪割りと、粉ものの確保、果実のシロップ漬けや酒が全然足りないかも。


母になった棒術士の独白

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