やなまか

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冬季だけは旅に出るのはやめたほうがいい。
魔物のほうが圧倒的に有利な上に、人は簡単に凍えて死ぬからだ。

最近久しぶりに昔の仲間から便りをもらった。
「そちらに寄る」と短く妖精の字で。
2年ぶりか。去年は南の国に居るからと冬に来なかったのだ。
「薄情者め」
そう言いながら口元は緩んでしまう。あいつらは時間の感覚が私達と違うんだよね。

私たちがいる丸太作りの部屋は温かい。暖炉ではシチューがくっつらくっつらと煮え、鉄板では茶葉と豆がゆっくりと煎られていく。干物が壁にならび、根菜類が土間に鎮座し、農家から貰った固まった牛の乳は倉庫で寝かしてあった。ここの生活ももう長い。
あいつらはどんな空の下でこれを書いたのだろう。

早く会いたいな。

我らがリーダーの息子はもう立派に言葉を話すようになっちゃったよ。さっきも魔法の伝書鳩を持ってきたのは彼なのだから。
これから忙しくなるね。まずは薪割りと、粉ものの確保、果実のシロップ漬けや酒が全然足りないかも。


母になった棒術士の独白

12/18/2023, 12:56:10 PM