浮き上がるようでその逆だった。
掻き抱かれて苦しい海に沈められる。
「怖い」
狂おしい波が私を浚って行ってしまう。
彼の肩にしがみついて爪を立ててしまった。苦しくて苦しくて息が上がってしまい涙が溢れる。
涙を拭う唇があった。
「辛いか」
窒息しそうなほどの水の泡が身体を変えていく。うち震えて声が出た。彼も耐えている。
全てを変えてしまいそうな海に二人して落ちるのだ。
「発達障害の長男と暮らす5」
主人はいちばんうえの子を特に溺愛している。
長男が発達障害と初めは聞き入れなかった。
母親のお前の気にしすぎだと。
そりゃぁそうだろう。我が子も「普通」で「一般的」であるのが当たり前に思ったのだろう。
主人は長男がキレないように、私や下の子供達を叱り、
キレたらほらみろとガンを飛ばし舌打ちをするのだ。
その割に爪が甘く、抜けが多く、手筈を踏まない。
だから長男はキレるのだ。主人よ君のミスだろうに。
そして矛先が母親のこちらに向く。
味噌汁に卵が入ってないだけで。赤味噌を入れないから。鍋に肉なんかを入れたばかりに。骨のある魚を入れたばかりに。
だから彼のスプーンは緑だと言ったでしょう。
ティッシュ箱は15㎝、タオルは30㎝、箸は机の端から5cm、お気に入りの皿はここ。椅子は机こぶし一つあけて。かぼちゃ以外は1cm以下に切って。温度は60度以下。おわかり?
貴方が守るべきは「家族」なんじゃないの。
休みがあまりにあるのも困りもの。疲れてしまうんだもの。
だからどうか 健康には気をつけて。
「発達障害の長男と暮らす4」
朝起きたとき。おなかが空いているとき。
ご飯中。遊んでいるとき。
眠いとき。お風呂のとき。
突然その癇癪は母にだけ向けて発動する。
「起きなくちゃ、遅刻しちゃうぞ」
この遅刻しちゃうぞが引き金だった。ものを投げて泣いて怒って、味噌汁をぶちまける。
前の日に好きだと言ったおかずを渡したらいらないと、明日にすると。その翌日も同じことを言われて腐って捨てた。
幼児の時。
真っ暗になった5時に電車に乗りたいと発言。
困るなぁという顔をした瞬間に頭のいい長男は悟り発狂する。
論理的に諭しても暴れるので30分後に出発。下の子をベビーカーに乗せて一駅だけのって帰る。「一駅だけ」と約束をしないと、反対路線の◯◯も行く(一時間掛かる)と言い出しかねない。
帰ったら当然おなかはすいている。もう7時。
夕食の支度に10分掛かるだけでも暴れる。漏らす。こぼす。投げる。片付けている間にまたおなかが減りキレる。
気に入らない日替わり食材があり吐き出しコップを投げる。
「なんでこんなのが入ってるんだよ!!!」
前食べたやん…。
食べさせるだけで9時。片付け、風呂、…風呂のあとにTVを見る時間がないとキレる。寝たくない!見たい!眠いけど寝たくない!!
全てが終わる(彼が寝る)のは23時過ぎ。キッチンは皿で溢れ床までめちゃくちゃ。
毎日これ。
理不尽だったセリフ
長男「今日雨?」
私「今日は晴れみたいだよ」
長男「なんで雨じゃないんだよ!!」
1時間キレ散らかす
たぶん雨だといってもキレるし雪だといってもキレるのだ。もう母がなにを言っても怒り狂うのだ。目が合うだけで手がつけられなくなるのだ。どう接したらいいのか分からない。
旦那には可愛い顔しか見せていないから、旦那には分からない。
そう
「三つ子のほうが大変なんだから、一人目でキツイとかいってたらww」
と爆笑したのはうちの夫です。
地獄の記憶→悲しんではいけませんか。の続き
※ ※ ※
「発達障害の長男と暮らす3」
「男の子って皆そういうものだよ」
分かったようなこと言わないで。
何度うちの子がおかしいと相談しても、まともに取り合ってくれない。皆例のセリフで一蹴するのだ。
「男の子はそういうものだから気にしすぎ(笑)
皆が同じ思いをしているんだから
あなたも育てられて当たり前(笑)」
その度に狂いそうな毎日を否定される。
味覚や感覚が過敏なせいで
ある日突然飲み食いをやめた赤ん坊の息子。
丸一日何も飲んでない食べてない。死に物狂いであれこれ試して、それでも食べないし飲まないのだ。
市に電話したけど「担当のものがいません」で終わる。
そういうもの?本当に?
どうして母の勘を軽視するのだろう。
今もこんなに
苦しんでいる。
母にだけ当たりがキツイ。
これは昔から変わらない。
味噌汁ひとつとっても、メーカー、味噌の濃さ、割合、具材、温度、量、その全てが引き金となる。
「昨日と味が違う」
「味噌が違う」
「大根が入ってない」
「熱い!!!!量が多い!!!!」
投げられるお椀。ぶちまけられる味噌汁。
恐怖で泣きはじめる下の子。
私も怒りより悲しさが溢れてくる。
早く遠くに行って欲しいな…。
下の子と暮らしたい。傷つけられた自分と重なるのだ。
※ ※ ※
本日のお題「宝物」ですが、続きを書き殴りさせていただきました。申し訳ありません。
ふわっとぼんやり薄いのが浮かんだので温度差がすごいのですが…(爆) 載せさせてください。
「宝物」
世界を敵に回しても手に入れたいかというと
そうでもない。
世界そのものが彼女を作り上げているからだ。
歯が浮くようなセリフも言えない。
分かってくれるといい、なんて幻想か。
じゃれて組み敷いた彼女は照れて笑う。
「誰にも見せたくないけど、見せびらかしたいってこういう感じか」
何の話と問われるけど、いたずらを始めた手で誤魔化す。
肩に回る細腕に誘われて唇を重ねた。
昼間なのに燻り始めた熱をどうしてくれる。
「発達障害の長男と暮らす2」
「お前より私の方が大変だったからお前も苦しめ」
「私の時の方が大変だった」
こんな呪いがありますか。
ここで注意していただきたいのは「昔」ではなく、「私の方が」とくるのだ。
お前の苦しみなど私に比べたら大したことではない。だから我慢しろと。恵まれているのだと。
弱音を吐いてはいけませんか。
悲しんではいけませんか。
助けを求めてはいけませんか。
一番不幸でなければ泣いてはいけないのですか。
これは
「三つ子の方が大変なんだから、一人目で大変だというお前はおかしい」
という奴と似ていますね。子供の一人目は楽で当たり前で「大変だ」と言うことすらおこがましいとでも言うのでしょうか。
※ ※ ※
本日キャンドルのお題でしたが、前日の「地獄の思い出」の続きにさせていただきました…申し訳ない