やなまか

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11/13/2023, 9:38:17 PM

昨日、ちょっとしたことで彼女と喧嘩をした。

目覚めると背を向けて眠る彼女がいる。手を伸ばそうとして何度も何度も思いとどまった。
「…一緒に暮らす?」
言ってすぐ気恥ずかしくなった頃だった。


「うん…」
彼女は起きていた。黒髪がさらさらと落ちて振り向いたと思ったら、がばっと抱きつかれる。
「お、お、起き…」
「起きてました!」
毎朝君が居てくれる。手分けして家のことをして、仕事から帰ったら一緒に食事をとりたい。
柔らかい身体がぎゅーっと絡みついてくる。

一緒に暮らしてみよう。まずはそこから。
いっぱい喧嘩したらいいんだと先人たちも言っていたではないか。

11/12/2023, 3:17:24 PM

彼は意外にも大胆だった。

文化祭の演劇の合間に、私達は暗幕に隠れてキスをする。
物陰に隠れる為に腰をぐっと寄せられて大人みたいなキス。
「ダメだってば」
「誰も見てないよ」
小さな声でダメと言いながら、真っ黒いマントに包まれているみたいでドキドキした。
世界からふたりだけ切り離されている。今度は私からキスをした。
幕開けのブザーが鳴るけど、きっと誰も見ていない。

11/12/2023, 2:02:28 AM

「兄ちゃんは鳥さんなの?」
妹のミナが聞いてきた。
「なんで?」
どうしてその質問をするに至ったのか、彼女の靴紐を結びながら聞いてみる。
「お母ちゃんが、兄ちゃんはミナが泣いたらすっ飛んでくるね、て言ってたから」
「そっか。鳥さん…ね」
妹は、舌っ足らずなまま、母の口調そっくりに表現してくるから笑いを禁じ得ない。
「よし。公園いこか」
「いく!飛んでく?」
「飛んでくよ~」

背中にあったかい妹を乗せて走ると彼女は「ぶーん!」と笑った。それって車…だろ。
面白いなぁ。
小さな君が呼んでくれるなら、兄ちゃんはどこへでもすっ飛んでいくよ。

11/10/2023, 12:40:21 PM

虫の鳴き声がぴたりと止んだ。
薄蒼い空ははるか高く風の音を運ぶ。

「お帰りなさい!」
腰辺りまで伸びた金の海を掻いて、黒髪の娘が旅の一団に駆け寄っていく。
そのまま特別背の高い男に飛びつくと、周囲は喝采を浴びせ掛けた。
「後でな」
「いやです。もっとお顔を見せて」
そのままぐっと顔を寄せると、娘は今度は首にしがみつく。
「家でやれ」
年嵩の男が虫を払うように言い捨てると周りも苦笑する。男も周りに合わせてへらりと笑おうとした。

娘が頬にキスをしたのでぴたりと固まる。
涙を零したのは男のほうが先だった。

11/9/2023, 7:05:44 PM

安易ではあるけど…。
落ち込んだ彼女が笑顔になるにはどうしたらいいか必死に考えて、今まで見向きもしなかったものが綺麗に見えてきた。
我ながら単純だけどな。

















ぼかしたR↓



小さな身体を抱いて、失われていた身体が戻ってきたかのように満たされた。こんなに落ち着くものなのかと。
強すぎる力で裂かぬように少しずつ進む。
女の香りが強まって、オレの手が甘い声を出させているのかと思ったら一気に欲しくなった。
辛そうだったけど、火照った狂おしげな顔を見るともっと捧げたくなる。ほんと単純だよなぁ。

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