幼い頃、よく”さがしもの絵本”で遊んでいた。 その中でも、とくにお気に入りの”さがしもの絵本”があった。
満月の晩から冒険が始まり、最後は夜明けで冒険は終わる。
幼いわたしにとって、真夜中の冒険はこころが踊るようにキラキラしたものだった。
絵本のページを開く度、わたしも一緒に冒険している気持ちになった。
わたしは空想が得意だった。絵本のなかにわたしがいる空想をすると、さらに、わたしも一緒に冒険している気持ちになった。
片付けをしていたら、この絵本が偶然出てきた。
ページがボロボロになって、ページが千切れかけていた。セロハンテープをペタペタ貼って、なんとか応急処置がしてあった。
ゆっくり絵本のページを開いていくと、これまで何年も触れてなかった記憶が目を覚ました気がした。
記憶が目を覚ましたとき、わたしは気がついた。
わたしがこの絵本のページを初めて開いた日と、同じ”こころ”があることに。
真夜中の冒険に憧れる、そんな”こころ”が。
子どもから大人になって、変わったことはたくさんあるけれど、変わってないものも確かにある。
それは、なんだか、草むらに寝転がってゆっくり流れる雲をみながら眠りに落ちるような、安心で、心地よい、心温まる”こころ”だ。
この”こころ”を持ち続けることで、幼い頃の自分も今の自分も好きになれるような、そんな気がする。
____________________________sweet memories ____。
風は、たくましくて、繊細なエネルギーだ。
風が頬に当たって、すり抜けていく。ときには強く、ときには優しく。
魔法の絨毯もないし、カモメのような翼もないけど、人も風を感じることができる。
春の風の特徴は、たくましくて、繊細なところに加えて、暖かくて、穏やかなところもある。
風は、いつも近くで見守ってくれている。追い風のときはもちろん、向かい風でも、実は背中を押そうとしてくれているんだ。
ただそれが、五感で感じとれないだけで、風のエネルギーは、いつもわたしを、あなたを応援してくれている。
だから、魔法がなくても、鳥じゃなくても、風とともに生きて、日々を紡いでいこう。
_______________________________________風と____。
学習室をほんのりと照らす春の光を浴びると、木漏れ日が差す道を歩いているような気持ちになる。
今日もひとつ、新たな出会いがあった。
作者の溢れ出る想いを、本を通して掬いとる。
図書館の一角の学習室で、なんでもうまくサボるための心構えや実践方法が解説してある本を読む。
サボることは悪いことだって、小さいころから教えられてきた。
真面目にやらないといけない場面も確かにある。
けれど、なんでも真面目にやりすぎたら、身体も心もバランスがとれなくなって、ある日ドミノ倒しみたいに崩れて行ってしまう。
正解も不正解もない、それぞれの人にこだわりたいことや、重要視したいことがあるから、こんなにたくさんの種類の、自分をメンテナンスするための本があるんだろう。
これまでは、サボることは絶対によくないと思っていた。でも、今は、真面目にする場面とサボる場面を分けていけるように、うまくサボるための本を読めるようになってきた。
それが、今わたしが誇れる、わたしの軌跡だ。
_________________________________軌跡__________。
自分のことがずっと嫌いだった。
なにをしても不器用で、人と関わることも苦手。
褒め言葉を言われたときも、本音じゃないんだろうなと思ってしまう。
心から褒めてくれていたかもしれないのに、なんの躊躇もなく受け取ったふりをして、実は素直に受けとめられなかった。
わたしはダメ人間だとレッテルを貼ったことが何度もあった。
でも、ふとした瞬間、わたしは今、目の前にいる人の心の支えになれているのかもしれないと、目の前の笑顔をみて思った時、ダメ人間のレッテルだけじゃないと思い直す。
ダメ人間以外にも、たくさんのレッテルがあって、自分のことを嫌いになったり好きになったりを繰り返して生きていくんだな。
だから、自分を嫌いとか好きとか、はっきり言い切ることはできない。
好きでも嫌いでもない、そんな自分といっしょに、生きていく。
それは、絶望して、悩んで迷って、少しずつ希望が満ちてきて、心から楽しくて仕方ない軌跡だ。
______________好きになれない、嫌いになれない_______________________________________________。
夢をみるのはなぜなんだろう。
夢をみるのは、現実世界で起きた出来事を整理するため、という説がある。
現実世界でやってしまった、ばかな失敗が、夢にも出てきたら、うんざりしてしまう。
わたしってなんでこんなダメ人間なんだろう。夢のなかでも思い知らされる。
誤りが一切なく、万事順調に進んでいったらいいのに。そう思う瞬間もある。
だけど、もしなにもかも順調に進んでいったら、わたしがなにもかも順調にいかなくなってから出会った、大切な人たちにも出会えなかっただろう。
そう思ったら、わたしは”今のわたし”でよかった。
今のわたしは、完璧ではないけれど、だからこそ、この世界のなかで幸せを噛み締めながら生きることができているんだと思う。
悪い夢をみたら、いいことが起こるって誰かから聞いたことがある。
夢の中でも、わたしはダメ人間だと思い知らされたら、わたしはこれから成長していくのびしろがたくさんある人間だと思い直せばいい。
そして、現実世界で、不安と希望が混ざり合った、夢を描く。
その夢は、自在に変形し続けるけれど、信念だけは曲げずに、描き続けていく。
すると、ふとした瞬間に、兆しが光ってみえるときが訪れる。
まだ寒い、しんとした春の日に、昇った朝日が頬をしんわりと温めていくように。優しくて穏やかな兆しだ。
________夜が明けた。___________________________。