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1/11/2024, 7:38:19 AM

20歳の日、私は裸一貫で旅に出た。
地元から東京行きの切符を買い、1人で暮らすのだ。
もう、しみったれた地元とはおさらばで都会人になるのだ。
ここまま、ここにいるよりも、都会で暮らして、就職先を見つけ、その日暮らしだがやって行くのだ。
このまま、永久就職先のような地元で、棺に入ったような生活を送るよりも、日雇いの仕事を見つけて、毎日を面白おかしく暮らすのだ。御局様の愚痴や、頭の悪い同僚や、機嫌の悪いおじさん連中なんかみんな、捨て去ってしまえ!
そう決心して、夜、飛行機に乗った。
格安航空会社の7000円の席だった。
この乗り心地の悪さが、私のこれからの人生を物語っているとは、思いたくもなかったし、これからの人生が、全て上手くいくなんて、思ってもいなかったのだ。
この旅の終わりは人生の始まりだ。
この旅の終わりは、また旅の始まりだ。
心配なんかいらない。
そう言って一歩、足を踏み出した。

12/31/2023, 10:29:38 AM

良いお年を。
今年の冬は、多分家族と過ごす。
それでも、私は一人。
泣きながら、言葉を探す。
私って何?
自由って何?
書きたいものって何?
来年、書き始めて七年になりました。
答えは見つかりそうですか? 私。

12/29/2023, 10:15:09 AM

みかんの缶詰。
お歳暮に貰った、緑色の缶詰。
缶切りで開けると、金色の缶詰の中にシロップ漬けのみかんが、たくさんはいっている。
水子みたいだと思う。
泣いては大河にこだまする、水子の霊のようだと思う。
お腹を腫らして泣きわめく母親たち。
三途の川の、カラカラと風車の回る頃。
酷く酩酊した調子で、鬼たちが叫ぶ。
嗚呼、娑婆はもうすぐ年の暮れ。
祇園精舎の鐘の声。暮れも年越す除夜の鐘。
死んだ童子の初盆の、暮れても泣いても暇はなく、乳子あやしたこの手は萎えて、栄枯盛衰暇もなし。
亡くなった子らの、生え揃った乳歯が乳を噛む。
滲んだ血の色が、乳に溶けて、みかんのようなオレンジ色をしていた。

12/28/2023, 10:10:14 AM

冬休みを友達と過ごそうと思った。
十二月二十八日から、一月の三日まで、友人と過ごすことになった。
除夜の鐘と紅白を見た。
餅はつかないが、餅を食った。
雑煮は作ったが、不味かった。
初詣は、近くの神社で済ませた。
それで、気づいたことが一つ。
彼女、なんで俺のところにいるんだろ。
充実した休みを、彼女のためにさいた。
ただ、思いにふけるのは、俺たち結婚しないってことなんだよなぁ。
愛のありやなしやは、この際置いておくとして、彼女俺の事どう思ってるんだろ。

12/22/2023, 10:13:40 AM

冬至だ。
柚子風呂に入って、ゆずの香りを楽しむ。
憩いのひととき。
柚子湯にぶくぶくと、沈んでいく体。
とぷん。
ああ、いい湯だな。
ばばんばばんばんばん。あー、びばのんの。
身体は跳ねる。
湯の中で、まるで大蛇のようにうねる。
白い皮膚は、白露(バスロマン)を艶やかに弾いて光る。
つーっと沈んでいく身体。
ぶくぶくぶく。
鼻をつまんで息を止めれば、私の身体は、柚のように、ゆったりと回転していく。
ゆずの香りに包まれて、2023年も終わります。
ゆく年くる年、叫ぶ年。
来年は土用の鰻を食べられれば本望です。

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