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20歳の日、私は裸一貫で旅に出た。
地元から東京行きの切符を買い、1人で暮らすのだ。
もう、しみったれた地元とはおさらばで都会人になるのだ。
ここまま、ここにいるよりも、都会で暮らして、就職先を見つけ、その日暮らしだがやって行くのだ。
このまま、永久就職先のような地元で、棺に入ったような生活を送るよりも、日雇いの仕事を見つけて、毎日を面白おかしく暮らすのだ。御局様の愚痴や、頭の悪い同僚や、機嫌の悪いおじさん連中なんかみんな、捨て去ってしまえ!
そう決心して、夜、飛行機に乗った。
格安航空会社の7000円の席だった。
この乗り心地の悪さが、私のこれからの人生を物語っているとは、思いたくもなかったし、これからの人生が、全て上手くいくなんて、思ってもいなかったのだ。
この旅の終わりは人生の始まりだ。
この旅の終わりは、また旅の始まりだ。
心配なんかいらない。
そう言って一歩、足を踏み出した。

1/11/2024, 7:38:19 AM