レア

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5/28/2023, 10:45:39 AM

『半袖』

夏は来る。
冬が来る前に、夏が来る。
でもそれって当たり前。
夏が暑くて冬は寒い。
でもそれって当たり前?
日本がそうなだけで、きっと外国だと夏でも寒かったり、逆に冬で暑かったりするかも。
けど、外国と日本同じものがある。
それは……暑い時に薄い服を着て、寒い時に厚い服を着るんだ。
暑い時って半袖。
寒い時って長袖。
だって暑いのに長袖なんて無理だし、寒いのに半袖なんて無理だ。
ある日、あの子に私、こう聞かれたんだ。

「お前、長袖しか着ねーよな、暑くねーの?」

暑いけど、まぁ別に耐えれるし、日焼けだなんて私したくない。
それに、君には言われたくないかな。

「君も半袖しか着ないでしょ、寒くないの?」

するとあの子は、

「え? 別そんなでもなくない?」

……人間でも、やはり感覚は違うらしい。
私は冬、めちゃくちゃ寒いのに。
あの子にとって冬は余裕らしい。
まぁでも、逆も然り。
私にとって夏はめちゃくちゃ余裕だし。
あの子は夏、めちゃくちゃ暑いだろう。

そうして、いつも世間話を話してたんだ。
夏に強く冬に弱い長袖の私。
冬に強く夏に弱い半袖のあの子。

「なぁ、たまには着るもの交換してみようぜ!」

そうやってあの子が言うから、まぁ仕方ないなと思っていつか着るよと言ってしまった。
あの子は冬に、ちゃんと長袖を着るようになった。
本人曰く、人間らしさ的にはこっちだろ、らしい。
まぁ私は半袖なんて着ないけど。

そう思って、意地で着なくて。
時間は過ぎていって。


ああ、本当、私バカだな。
あの子がいる時しっかり来てあげればよかった。

墓の前に立って言う。

「ねえ、私、半袖着たよ」

あんなに着ないとしょうもなく意地張っていた私が、今ちゃんと来てるんだよ。
ねぇ、私ね。

__君と一緒に長袖を着た冬のように

君と一緒に半袖を着て夏を過ごしたかったな__

5/27/2023, 11:26:35 AM

『天国と地獄』

天国というものを、考えたことがあるだろうか。
地獄というものを、考えたことがあるだろうか。
私はふとした時に、あることを思ってしまう。
天国と地獄、どちらがいいのだろうと。
君はもし、死んだとして、どっちに行きたいのかな。

「なぁ、天国と地獄、行くならどっちがいい?」

私はあの子にそう聞かれた。
何度も、何度も……。
私は即答でいつも、「天国」と言った。
だって、地獄って犯罪者とか、悪い人達が行く場所だと思うから。
そう思っていたからこそ、あの子の意見に驚いた。

「そうなのか? 俺はどっちでもいいけどな!」

ニカッと笑うあの子に、驚いた。
けれど、同時に思った。
君には無理だろうな、と。

「だって、天国っていいことしか言ってないし、 地獄は悪いことしか言ってないじゃん?」

というあの子は、さらにこう付け足した。

「もしかしたら地獄の方がいい、なんてことがあるかもしれない!」

そうキラキラした目で笑うあの子は、私からするととても眩しかった。
ああ、でも……そう考えると、私には無理だな。
天国ではきっとこんな輝かしい笑顔が沢山あるんだろう?
それが一年中となると、私からしたら、地獄のようなものだ。

必ずあの子は天国に行くだろう。
そして、必ず私は地獄に落ちる。
なんたって、私に天国は似合わない。
なんたって、あの子に地獄はありえない。

私たちはそうだ、昔から反対で、でも……いや、だからこそずっと一緒にいたんだ。

私とあの子は何もかも違う。
けど、それでいい。
ひねくれた私には本当に地獄がお似合いだ。
真っ直ぐなあの子には、天国以外ありえないんだ。
まさか、こんなことに気付かされるなんて。

「あはは! 急に反応なくなってどうしたんだよ、腹でも痛めたか?」

「なんでもない」

そう、なーんでもないんだ。
あの子が気にすることは何もない。


でも……。

「君がいない世の中じゃつまらないよ」

墓のところで1人、呟いた。

昔いたあそこはきっと、私にとっての天国で__

__今いるここは間違いなく、私にとっての地獄。

5/26/2023, 11:15:51 AM

『月に願いを』

月に、願いを。
月に願いを告げ始めて、どれくらい経っただろう。
1秒だろうか、1分だろうか、1時間だろうか、1日だろうか、それとも……1年か。
どれだけ願いを込めたかわからない。
けれど、私は月に願う。
意味はあるの?
わからない。
それで答えが見つかるの?
わからない。
君が本当に願うことは無いの?
……わからない。
全て、わからないことだらけ。
でも、それでいいの。
私は、それで。
だって、願いを込めるのは、あの子の代わりだから。

「ん? ああ、これな、オレの願いか叶うよう月に願ってるんだ、お前もやってみないか?」

あの子の、太陽のようなあの子の代わりなんだ。
月に願って、本当に叶うと信じているあの子の。
だから、私の願いなんてない。
願っちゃいけない。
私は、月に願って叶うと思うことなんてできないから。

ああ、でも、そうだね。
もしも私がひとつ、月に願うのなら___

「月が綺麗だな!」

あの太陽みたいに光り輝いたあの子の笑顔を、また見たいな。