『天国と地獄』
天国というものを、考えたことがあるだろうか。
地獄というものを、考えたことがあるだろうか。
私はふとした時に、あることを思ってしまう。
天国と地獄、どちらがいいのだろうと。
君はもし、死んだとして、どっちに行きたいのかな。
「なぁ、天国と地獄、行くならどっちがいい?」
私はあの子にそう聞かれた。
何度も、何度も……。
私は即答でいつも、「天国」と言った。
だって、地獄って犯罪者とか、悪い人達が行く場所だと思うから。
そう思っていたからこそ、あの子の意見に驚いた。
「そうなのか? 俺はどっちでもいいけどな!」
ニカッと笑うあの子に、驚いた。
けれど、同時に思った。
君には無理だろうな、と。
「だって、天国っていいことしか言ってないし、 地獄は悪いことしか言ってないじゃん?」
というあの子は、さらにこう付け足した。
「もしかしたら地獄の方がいい、なんてことがあるかもしれない!」
そうキラキラした目で笑うあの子は、私からするととても眩しかった。
ああ、でも……そう考えると、私には無理だな。
天国ではきっとこんな輝かしい笑顔が沢山あるんだろう?
それが一年中となると、私からしたら、地獄のようなものだ。
必ずあの子は天国に行くだろう。
そして、必ず私は地獄に落ちる。
なんたって、私に天国は似合わない。
なんたって、あの子に地獄はありえない。
私たちはそうだ、昔から反対で、でも……いや、だからこそずっと一緒にいたんだ。
私とあの子は何もかも違う。
けど、それでいい。
ひねくれた私には本当に地獄がお似合いだ。
真っ直ぐなあの子には、天国以外ありえないんだ。
まさか、こんなことに気付かされるなんて。
「あはは! 急に反応なくなってどうしたんだよ、腹でも痛めたか?」
「なんでもない」
そう、なーんでもないんだ。
あの子が気にすることは何もない。
でも……。
「君がいない世の中じゃつまらないよ」
墓のところで1人、呟いた。
昔いたあそこはきっと、私にとっての天国で__
__今いるここは間違いなく、私にとっての地獄。
5/27/2023, 11:26:35 AM