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12/18/2025, 9:43:08 AM

雪の静寂

「うぅ、寒っ」
目が覚めると、布団の中にいるというのに寒かった。
「何でこんなに寒いんだ?」
仕事を休むわけにはいかないし、布団の中にいても寒い。しぶしぶ布団から出てリビングに行くと
「あ、おはよう」
朝食の準備をしているキミが振り向く。
「おはよ。今日は寒いね」
キミが入れてくれたコーヒーを飲もうと、テーブルに向かい、コップを手にしたところで
「寒いよね。でも仕方ないよ、雪が降ってるし」
「え?雪?」
キミの言葉に、手が止まる。
「雪が降ってるの?」
「うん、外を見て」
パタパタと窓に向かい外を見ると
「…雪だ」
しとしとと雪が降っている。
「だから寒いのか。仕事行くのイヤだな」
思わずため息を吐くと
「そうだね。でも私、雪の静寂が好きなんだよね」
「雪の静寂?」
「うん。耳を澄ませてみて」
言われた通り耳を澄ますと、静けさに包まれる。
「…静かだね。心が穏やかになるよ」
「でしょ。だから好きなんだけど、今はゆっくりしてる場合じゃないか」
苦笑するキミの手を取り
「朝ご飯食べようか」
テーブルへ戻るのだった。

12/17/2025, 9:46:25 AM

スノー 遠い鐘の音 星になる 明日への光 君が見た夢 です

スノー

「すごーい。これがパウダースノーなんだね」
何回目かのキミとのスキー旅行。
いつも同じ場所に行っていたけれど、付き合って2年目の記念日と旅行が重なったこともあり、少し特別感を出したくて、パウダースノーで有名な場所に来た。
滑る前にゲレンデの雪を触わり
「すごい、サラサラしてる」
「すごい、ふわふわしてる」
「すごい、柔らかい」
と、とにかく「すごい」を繰り返す。
そんなキミの様子を微笑ましく思いながら、ここに来れて良かったな。と、しみじみ思うのだった。


遠い鐘の音

海辺を散歩していると、聞こえてきた遠い鐘の音。
「何の音だろう?」
と耳を澄ますと
「あ、終わりか」
鳴った回数は3回で。
「3回…3回…?」
鐘が3回…と考えていると
「結婚式してるんだね」
「天気に恵まれたね」
すれ違う人たちの会話が聞こえる。
「そっか、結婚式か」
不意に聞こえてきた遠い鐘の音。
その音が結婚式の鐘の音と知り、幸せのお裾分けをもらったような気分になったのでした。


星になる

「なあ」
キミと会った瞬間俺にはわかった。
キミの様子がいつもと違うことに。
笑ってはいるけれど、ムリして笑っていることに。
「なんかあったろ?」
「え?」
俺の言葉に、言葉を詰まらせるキミ。それだけで、何かあったのは明白で。
「ムリに聞き出すことはしない。けど、話したくなったら、いくらでも聞くよ」
キミの頭をそっと撫でながら微笑むと
「ありがとう」
キミは俺に抱きつく。
俺は、キミを抱き返すと
「俺は、キミだけの星になる」
と心に誓ったのだった。


明日への光

「はぁ」
会社の屋上にある、ベンチに座っていると
「大丈夫ですか?」
缶コーヒーを差し出される。
「え?あ、ありがとう」
差し出した人を見ると、心配そうな顔をした、隣の席の子だった。
「大変でしたね」
彼女は俺の隣に座ると、労いの言葉をくれる。
「ありがとう。何とかなって良かったよ」
自分が担当している案件。その案件に急な仕様変更が出て、対応に追われたのだ。
「けど、さすがに疲れたから、コーヒーが体に沁みるよ」
何故だかこんな事態が続いており、心身ともに疲れていた。
「…1人で頑張らないでください」
「え?」
「自分の担当だから。と、1人で抱え込まないで、周りを頼ってください」
自分の担当案件は自分で。と思っている俺には、彼女の言葉が意外なように聞こえて。
「…いいのかな。誰かに頼っても」
「もちろんです。私で良ければお手伝いします」
微笑む彼女に、霧が晴れたように気持ちが軽くなる。
「ありがとう。これからは頼らせてもらうね」
「はい」
彼女がくれた明日への光。その光は、俺の疲れた心を上向きにしてくれたのでした。


君が見た夢

「おはよう。ねえ、どうしたの?」
リビングでコーヒーを入れていると、起きてきた君の様子がいつもと違うことが気になる。
眠そう。とか、体調が悪そう。ではなく、泣き出しそうな感じがしたから。
「…怖い夢を見たの」
こちらにゆっくりと歩きながら、君は弱々しく答える。
「そっか。もう大丈夫だよ」
君に近寄り、安心させるようにギュッと抱きしめると、安心したのか、君は僕に抱きつき泣き始める。
「あなたとケンカして、別れた夢だったの」
と、涙を流す君が愛しくて
「大丈夫だよ。君が見た夢は現実にはならないから」
君を抱きしめる腕に力を込めたのだった。

12/12/2025, 9:24:28 AM

夜空を越えて

「はぁ。今日も残業か」
街中がイルミネーションで彩られ、星の輝きが儚く見える12月。
そんな12月の中でも、特に心が躍る、今日はクリスマス・イブ。なのに
「残業か」
定時で帰る人がいる中、今日も俺は残業だった。
「定時で帰れたら、彼女の家に行ったのに」
彼女の家は、ここから1時間。残業が早く終われば行けるかもしれないけど、いつ終わるかわからないのに、待っていて。とは言えない。
「あーあ」
ため息を吐きながら手を動かしていると、スマホの通知音が鳴る。
「なんだ?」
スマホを開くと、通知は彼女からで。
「遅くなってもいいから、会いに来て」
というメッセージと、ホールケーキを手に微笑む彼女。
「…やるか」
彼女からやる気をもらい、夜空を越えて、1分1秒でも早く彼女に会いに行くぞ。と気合を入れたのだった。

12/11/2025, 9:53:06 AM

ぬくもりの記憶

「大丈夫だよ」
俺を抱きしめ、情けなく涙を流す俺を、優しく受け止めてくれたキミ。
「私には、あなたの痛みはわかってあげられない。けど、寄り添うことはできるから、苦しい心を解放してあげて」
「…ありが、とう」
辛いとき、そばにいてくれたキミ。
これからは俺が支えたい。
その想いがキミに通じ、今も一緒にいる。
あれから俺が泣くことは、まだないけれど、あのとき抱きしめてくれた、ぬくもりの記憶は、今でも鮮明に心に刻まれているのだった。

12/10/2025, 9:33:04 AM

雪原の先へ 凍える指先 です

雪原の先へ

見渡す限り、真っ白な雪で埋め尽くされた雪原をキミと歩く。
「ん」
何も言わず手を出すと
「何?」
キミは首を傾げる。
「転んだら危ないだろ」
そっけなく言うと
「ありがと」
ふふっと笑って、キミは手を取る。
「これなら、あったかいね」
僕たちが向かっているのは雪原の先。
その雪原の先へ辿り着いたとき、僕たちが目にするのは夜空いっぱいに広がる煌めく星空。
そして、流星群が降り注ぐ天体ショー。
「早くしないと始まっちゃうかな」
「大丈夫だよ、ゆっくり行こ」
慣れない雪で転ばないように、つないだ手に力を込め、目的地へ向かうのだった。


凍える指先

「はー、冷たい」
部署で残業中、キーボードを叩く指の冷たさに、指先に息を吹きかけていると
「指、冷えるよね」
隣の席のキミに声をかけられる。
「そうだね。暖房がついてるから寒くはないけど、指先はね」
息を吹きかけ続けていると
「これならどうかな」
息を吹きかけていた手が、キミの両手に包まれる。
「…あったかい」
「そう?良かった」
微笑むキミの笑顔に、凍える指先も、僕の心も温まったのでした。

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